(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)運動部活動改善事業廃止の真相

実は外部人材活用に異論は出ず

各省庁の予算の無駄を検証するために、中央省庁が外部の有識者を交えて検証する「行政事業レビュー」が、6月3日から28日まで行われた。文科省関連の事業については、6月21日に実施された。全体では、17機関69事業のうち、3事業が「廃止」と判定された。農林水産、環境両省の各1事業と、もう1つが、子どもの体力向上を目的としたスポーツ庁による「運動部活動指導の工夫・改善支援事業」だ(本紙6月27日付既報、電子版6月21日付)。行政事業レビューの結果は、来年度予算案の概算要求などに反映される。運動部活動をめぐる支援事業は今後、どうなるのだろうか。

■「ばらまき」で廃止判定

スポーツ庁の「運動部活動指導の工夫・改善支援事業」は、運動部に対する外部指導者の活用や運動不足が課題になっている女子が参加しやすい運動部活動の新設、少子化による部員減少対策として、複数校による合同部活動などを行うモデル事業である。平成26年度から32年度まで実施が予定されていた。

今年度は中学校987校、高校611校がモデル校となり、約2億2千万円が計上されている。

ところが、予算のほとんどが、実際には外部講師の謝金に充てられている実態が、有識者らによる行政事業レビューで問題となった。

有識者からは、「単なる(予算の)ばらまきに見える」「政策的な目標が不透明だ」「課題を解決するための事業内容になっていない」などの手厳しい意見が相次いだ。判定の結果、「廃止」が4票、「事業全体の抜本的な改善」が2票で、同事業は廃止と決した。

■謝金は「ばらまき」か?

運動部を含む部活指導では、当該種目の競技経験がないのに顧問にさせられたなど、学校現場でも批判の声が少なくない。さらに、放課後だけでなく、平日の朝、土・日曜日などの休日も、部活指導や大会などの引率で、顧問となっている教員に過重の負担がかかっていることが大きな問題となっている。最近では、部活指導を「ブラック労働」と呼ぶ声もあるほどだ。

このような状況に対して、独自に外部指導員を運動部活動に充てる事業を実施している地方自治体も出てきている。また中教審は昨年末の「チーム学校」答申の中で、専門スタッフの1人として「部活指導員(仮称)」を配置するほか、その身分を法令上明確化し、教諭に代わって大会などの引率も行えるよう提言した。

さらに、省内のタスクフォースは今年6月、教員の業務改善の一環として、部活指導の適正化と同時に、部活指導員の配置推進などを打ち出している。

これに対して行政事業レビューは、外部指導員の配置というモデル事業を「人件費のばらまき」と批判して、廃止を提言したかのようにも見える。いわば、部活指導員の配置推進という方針が早くもつまずいた形となったわけだ。

■部活指導員への一歩を

しかし、そう受け止めるのはいささか早計だろう。というのも、行政事業レビューの議事録をよく読むと、有識者は、運動部活動のために謝礼を出しての外部指導員を、必ずしも否定していないのが分かるからだ。委員の1人は、教員のオーバーワークを改善するのは急務であり、部活指導に「外部人材がいらないと思っているつもりは全くない」と言い切っている。

つまり、同事業の廃止判定は、あくまでスポーツ振興や子どもの体力向上という政策目標に対して、外部指導者の謝金がほとんどを占めるような事業が行われている実態に対して「廃止」を判定したのだ。やはり委員の1人は、部活指導で「何が現場の課題なのか、この社会の課題なのかというところを、もう一度捉え直す努力をしていただきたい」と指摘している。

もちろん部活指導員の役割は運動部に限定されたものではないが、やはり主体は運動部の指導だろう。そして部活指導員の配置には、財政上の問題から財務省の反発なども予想される。

「災い転じ福となす」。部活動での外部指導者の利用は、スポーツ振興や子どもの体力向上などさまざまな目標をつけるのではなく、教員の負担を軽減するための「チーム学校」の実現という目標に絞った形にして、部活指導員の配置の実現を進めるべきだろう。

何がどう問題視され、どんな点が「廃止」と断じられたのか、冷静なまなざしを持たなければならない。
その意味で行政事業レビューでの同事業の廃止判定は、つまずきではなく、部活指導員の配置に向けた新たな一歩ともいえるのではないか。

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