(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)中教審が「審議のまとめ(案)」

次期指導要領の課題は何か

次期学習指導要領の改訂を審議している中教審の教育課程企画特別部会が、「審議のまとめ(案)」を公表した。新学習指導要領によって、学校はどのように変わるのだろうか。また新学習指導要領の課題とは何だろうか。

■「21世紀対応型」指導要領

次期学習指導要領を一言でいえば、初の本格的な「21世紀対応型」の学習指導要領ということになろう。21世紀になってから、学習指導要領は新たに2回実施されたが、その内容は20世紀の価値観を引きずったものだったといえる。

これに対して、次期学習指導要領の骨格を示した「審議のまとめ(案)」を見ると、先行きが不透明で混沌とした21世紀を生き抜く子どもたちを育成する学習指導要領を目指していることがうかがえる。

そのキーワードは「カリキュラム・マネジメント」「アクティブ・ラーニング」「社会に開かれた教育課程」の3つだろう。

まず、次期学習指導要領は、子どもたちに身に付けさせるべき資質・能力を明確化した上で、それらの資質・能力を各教科などで総合的に育成するという構図になっている。これまでの学習指導要領でも、身に付けるべき資質・能力は示していたものの、実際には各教科の内容の集積にすぎなかった。その意味で、次期学習指導要領は、これまでの学習指導要領とは基本的に異なるものであり、育成すべき資質・能力を示した「総則」と、それに基づく「カリキュラム・マネジメント」がより重要な役割を負うことになる。

■学校現場は対応できるか

さらに次期学習指導要領では、「何を学ぶか」と同時に、「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」というコンピテンシーベースの学びを重視している。

ここで必要になるのが、子どもたちが主体的な学びを、協働を通して深めていく「アクティブ・ラーニング」だ。

また学習指導要領の理念や内容を学校だけでなく、社会全体で共有していく「社会に開かれた教育課程」を目指す。ここでは中教審が昨年末に答申した「地域とともにある学校」との関連が注目される。

このように次期学習指導要領は、本格的に21世紀対応型となるわけだが、不安がなくはない。というのも、「知識重視か思考力重視かという二項対立的な議論に終止符」を打つとして、学習内容の削減は行わないと明記しているからだ。例えば、英語の教科化と「外国語活動」の前倒しで、小学校高学年と中学年は授業時間数が年間35時間(週1コマ)増える。ところが「審議のまとめ(案)」は、15分の短縮学習、60分授業、長期休業期間中の学習活動、土曜日の活用などを例示するだけで、対応を学校現場に丸投げしてしまっている。

現在の教育内容を教えるだけでも、小学校の多くは手一杯なのに、それに加えて週1コマ分の授業時間数を工面し、さらにアクティブ・ラーニングによる指導をするとなると、学校現場は本当に対応できるのか。

■実施体制の整備が不可欠

小学校や高校に比べると、中学校では教科などの再編はないが、それでも4技能を重視した英語教育の改革、主権者教育、プログラミング教育など新たに課せられる教育内容は少なくない。加えて部活動では、休養日の設定、活動時間の適切化などを打ち出しているものの、「スポーツや文化、科学等それぞれの分野に関する科学的知見や、指導者や仲間との言語活動を重視した指導者教育が重要」としており、教員の負担がより重くならないか懸念される。

一方、高校では「地理総合(仮称)」や「歴史総合(仮称)」の必履修化など、全面的な教科・科目の再編が行われる予定だ。また「総合的な学習の時間」は、高校では「総合的な探究の時間」に名称変更されるほか、新教科「理数科」が設けられ、選択科目として「理数探究(仮称)」、「理数探究基礎(仮称)」が新設される予定だ。

しかし、ここでも大学入試改革との関連で、どこまで高校現場が対応するのか不透明な部分が少なくない。

次期学習指導要領は、本格的な21世紀対応型の学習指導要領として、大いに期待される。

だが、それには教員の意識改革なども必要だが、新たに加わった教育内容を着実に実施できるようにするほか、「アクティブ・ラーニング」にも十分に対応できるような学校現場の体制づくりが不可欠だろう。

抜本的な教職員定数の改善や学級定員の見直しが必要だ。それなくして、次期学習指導要領の本当の意味での定着は難しいのでいないだろうか。

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