(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)道徳科は次期教育課程の先取り

「議論し考える」をしっかりと

文科省の「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」は7月22日、「特別の教科 道徳」(道徳科)についての指導方法と評価に関する報告書をまとめた(本紙7月28日付既報/電子版は当日の7月22日に)。道徳科の評価の在り方などを示したものだ。

これに対して、小・中学校の教育現場では、どのような点に留意すべきなのだろうか。

■評価の在り方で報告書

政府の教育再生実行会議の第一次提言、それを受けた中教審答申などを基に、文科省は平成27年3月に学習指導要領の一部改正を行い、小・中学校において従来の「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」(道徳科)に変更した。

本格的な実施は、小学校が平成30年度から、中学校が平成31年度からとなるが、現在でも移行措置として、道徳科の一部または全部を実施できることになっている。

ところで、なぜ「特別の教科」なのか。

通常の教科には、検定教科書、中学校ならばその教科の教員免許、数値による成績評価などが必要となる。しかし、道徳科では、数値による成績評価も専門の教員免許もなじまないとされ、検定教科書だけが導入されることになった。そのため、「特別の教科」と位置づけられた。

同専門家会議の報告書によると、道徳科の評価については、▽子どもを励ます視点からの記述式による評価を用いて、数値による評価はしない▽観点別評価など目標準拠の評価はせず、個人内評価を導入する▽指導項目ごとの評価はせず、長い期間での見取りを行う▽道徳科の評価は、高校入試などの調査書には記載しない——などとされている。

具体的には、小・中学校の指導要録の中に道徳科のための「学習状況及び道徳性に係る成長の様子」という、独立した項目欄が追加されることになる予定だ。

■道徳教育の質的転換

道徳科の評価に関する専門家会議の報告書は、内容的に見ても常識的で妥当なものだろう。学校現場でも評価方法を実施に移すことは、そんなに難しくないかもしれない。

しかし、これは裏を返せば、一部で形骸化が指摘されていた従来の「道徳の時間」と同じような授業を繰り返して、お茶を濁すことも可能だということになりかねない。

ここで改めて注目したいのが、専門家会議の報告書が道徳教育の質的転換を強調していることだ。

報告書は、予測困難な時代には、自ら人生や社会における答えが定まっていない問いを受け止め、多様な考えや文化的・社会的・宗教的な背景のある他者と議論を重ねて「納得解」を得るための資質・能力が求められるという。

そのためには、資質・能力の3本柱のうちの「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」が道徳では重要になるとしている。

また質の高い多様な指導方法を求めて、「問題解決型な学習」と「道徳的行為に関する体験的な学習」などの実施を求めている。

これは「考える、議論する道徳」ということに重なるのはいうまでもない。

■「読み物道徳の心情理解」から「考える道徳」へ

専門家会議の報告書は、道徳科の指導や評価に当たり、さまざまな提言をしている。しかしポイントだけを単純に押さえれば、記述式の評価で、高校入試などの調査書には使用しないというように理解することもできる。

つまり、これまでとほとんど変わらないということだ。

恐らく、学校現場の一部ではこのように単純化した理解や解釈が行われるケースも出てくるかもしれない。これまでも、新たに導入された「○○教育」で、それはあった。

だが、「議論し、考える道徳」への転換を目指して、「能動的な学習」、すなわちアクティブ・ラーニングの実施を求める道徳科は、次期学習指導要領の先取りという意味があることを、きちんと理解しておく必要があるだろう。

手軽に済ますつもりならば、それこそ簡単に道徳科の授業を実施することはできる。

その一方で、「議論し、考える道徳」を目指すならば、やらなければならないことはたくさんある。

これまでの「読み物道徳」による「心情理解」から脱却して、道徳科をどう実施するかは、次期学習指導要領に向けた「試金石」でもあるのを忘れてはならない。

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