(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)来年度文教概算要求の焦点

どうなる教職員定数の改善

文科省は8月30日、平成29年度概算要求を公表した(本紙9月1日付既報。電子版では本紙が独自に入手して8月26日付で既報)。この中で最も注目されるのは、公立小・中学校などの教職員定数の見直しだろう。概算要求のポイントを探ってみよう。

■加配の一部を基礎定数へ

公立小・中学校などの教職員定数の改善では、平成29年度に3060人の定数増を要求している。

内訳は、発達障害児などへの通級指導の充実(890人)、日本語指導が必要な外国人児童生徒の教育の充実(190人)、いじめ・不登校などの未然防止・早期対応の強化(400人)、貧困に起因する学力課題の解消(400人)など、「多様な子供たち一人一人の状況に応じた教育」で2030人増、アクティブ・ラーニングの充実(250人)、小学校専科指導(外国語・理科・体育など)の充実(330人)など「学習指導要領改訂による『社会に開かれた教育課程』の実現」で580人増、「チーム学校」に向けた指導体制整備(300人)など「『次世代の学校・地域』創生ブランの推進」で450人増となっている。

この教職員定数の改善に当たっての大きなポイントは、通級指導と外国人児童生徒の教育の充実のための教職員定数を、単年度ごとに決める「加配定数」から、子どもの人数などによって算定される「基礎定数」に変更することだ。

これによって、需要の増加が見込まれる通級指導などの定数増を安定的に確保する一方、いじめ・貧困対策など新たな課題で加配定数を活用できるようにすることを、文科省はねらっている。

■中期計画策定が不可欠

ただし、これには、文科省が予定している教職員定数改善の「中期計画」(平成29~38年度)の策定が不可欠となる。中期計画なしで通級指導などの定数を基礎定数に組み込めば、少子化による児童生徒減を理由に、財務省から歯止めのない定数削減を迫られることになりかねないからだ。

その意味で、通級指導などの基礎定数への変更を柱とした教職員定数の改善は、大きな賭けともいえる。

しかし、厳しい財政事情の中で、財務省に中期計画の策定を認めさせるのは簡単ではない。今後、年末の予算折衝に向けて定数改善の中期計画の策定を財務省に認めさせることができるかどうかが、最大の焦点になりそうだ。

それによって、これからの加配定数の在り方も大きく変わってくるだろう。

一方、公立学校施設整備費について概算要求では、1077億8千万円増の1786億6600万円を要求している。これまで文科省は、築25年以上の老朽化した校舎などについて、地方自治体の財政事情なども考慮して「長寿命化」による改修を基本に掲げていた。ところが、熊本地震で校舎などが避難所として使えなくなる学校が相次いだことなどから、安全確保や防災の面から、本格的な老朽化対策を実施する方向へと方針を転換したのがうかがえる。

築25年以上で改修が必要な施設の面積は、公立小・中学校全体の約7割に上っている。老朽化対策は、今後の大きな課題となりそうだ。

■無利子奨学金拡大が焦点

また初等中等教育関係では、「教育課程の充実」として13億7千万円増の43億2千万円を要求。アクティブ・ラーニングの視点から授業改善、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入に向けたプレテストの実施などが目玉といえる。

「いじめ・不登校対応等の推進」では、19億9700万円増の77億1300万円を要求しており、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充を行う予定だ。

高等教育関係では、返済不要の給付型奨学金の創設を、要求額を明示しない事項要求として求めている点が注目される。しかし、給付型奨学金の創設は実現したとしても、極めて限定的なものにとどまるとみられる。

実際には、資格要件を満たしていても、予算不足のため選考から漏れた残存適格者が2万人以上もいるといわれる無利子奨学金の拡充の方が、大きなポイントになりそうだ。

現在、奨学金の主流は有利子奨学金となっているが、文科省は「有利子から無利子へ」という方針を掲げ、所得と成績などの資格要件を満たした希望者全員に無利子奨学金を貸与するのを目指している。

これも、年末の予算折衝での大きな課題の1つとなりそうである。

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