(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)スクールロイヤーで予算要求

紛争解決に期待と懸念がある

文科省は、平成29年度予算概算要求の中に、新規事業として「いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究」を盛り込んだ(本紙9月8日付既報、電子版での発信は9月2日付)。日本でもスクールロイヤー(学校弁護士)が活躍する時代が、来るのだろうか。

■保護者対応なども対象に
〈ある日の校長室の光景〉

保護者「それじゃ、こちらの要求は、聞けないというわけだな。後でひどい目に遭っても知らないぞ」

校長「その件は、すでにスクールロイヤーに一任してあります。こちらからお話しすることは、もうありません。どうぞお帰りください」

おそらく、管理職をはじめとする学校関係者ならば、内心では一度は言ってみたいせりふではないだろうか。学校からすれば無理難題、理不尽な要求をしてくる保護者の詰め寄りは、いつ果てるとも知れない。そんなとき、「お帰りください」と言えたなら、さぞかし気持ちがよいだろう。

それが本当になるかもしれない。

文科省は、来年度概算要求の中の「いじめ対策・不登校対応等の推進」に、スクールロイヤー活用に関する調査研究を盛り込んだ。とはいえ、これから調査研究を始めるという話で、しかもわずか3自治体に研究を委託するだけだ。そもそも概算要求なので、年末の予算折衝で項目が残るかどうかも分からない。しかし文科省が、スクールロイヤー活用の研究に着手する意思を見せた意味は、決して小さくない。

要求資料を見ると、「法的側面からのいじめの抑止、法令に基づく対応の徹底、保護者と学校等のトラブルの解決など」がスクールロイヤーの役割とされている。あくまで、いじめや不登校などへの法律的助言が中心だが、保護者トラブルも対象になっている点が注目される。

■期待されるトラブル防止

学校で起こる問題に、弁護士を積極的に活用しようというスクールロイヤーの取り組みは、大阪府教委などが既に実施している。いじめ問題をはじめとする学校の事案に、弁護士が法的側面から助言を与え、助かっている学校現場が少なくないという。おそらく、暴力行為などがエスカレートするいじめ、保護者などからの理不尽な要求や苦情などに対して、スクールロイヤーには、大きな効果があるに違いない。

これは、裏を返せば、現在の学校が法的トラブルに対して、あまりに無防備だということにもなろう。その意味でスクールロイヤーの登場は、時代の流れといえるかもしれない。

だが、スクールロイヤーの活用には、課題も少なくない。一つは、弁護士の資質の問題だ。学校をめぐる紛争には、法律では割り切れない部分が少なからずある。教育問題や少年事件の経験が豊富な弁護士ならよいが、物事の本質よりも法的争いの勝ち負けを重視する者もいる。そのような場合、逆に紛争が深刻化する可能性もある。

もう一つの課題は、学校や教員に、本当に弁護士を活用できるだけの意識と態勢が整っているかどうかだ。例えば、面倒な保護者対応をすべてスクールロイヤーに丸投げすれば、表面上は収まるかもしれないが、根本的な部分で子供たちや保護者からの信頼を失うことになるかもしれない。

また子供たちの問題行動の裏側に潜む問題、保護者や地域住民が抱える悩みなどを学校が知る機会を失うかもしれない。そもそも学校における教育活動は、法律で白黒がつけられるようなものではないのだ。

■学校の意識が問われる

これからも、学校や教員を取り巻く法的リスクは高まるだろう。学校にとってスクールロイヤーが必要な時代になってくる可能性は高い。

しかし、常勤化が求められるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと違い、スクールロイヤーはあくまで外部の第三者にすきない。それを活用するのは学校現場であり、管理職をはじめとする教員たちである。

スクールロイヤーは、学校現場が疎い法理的側面から、いじめ問題、保護者や地域住民とのトラブルなどを解決するための適切なアドバイスを学校などに提供する。しかし、問題解決の当事者は、あくまで学校だという点を忘れてはならないし、間違っても面倒なトラブルのすべてを丸投げしようとしてはならないだろう。

スクールロイヤー活用の調査研究事業が始まれば、真っ先に問われるのは、学校現場の意識だと思われる。

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