(新しい潮流にチャレンジ)カリキュラム・マネジメントは充実するか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

学校の実態にみる困難さ
〇カリキュラム・マネジメントの実態

次期学習指導要領の『論点整理』がカリキュラム・マネジメント(CurM)を提示した結果、学校や教師の関心が高くなっている。

ただ、これまでもCurMについてはかなり実施されていて、授業研究では単元全体の展開過程を示す中で1単位時間の授業時間を考察するのが普通になっている。CurMは、現在でも実施すべき日常の教育行為である。

ただし、『論点整理』には新たなCurMの提示がみられる。3つの側面である。

(1)各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。

(2)教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。

(3)教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源を含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
この3つの側面の中で、特に(1)について私が疑問を持つことを以前この欄で書いた(7月25日付)。教科横断的な視点で教育内容を組織的に配列することの難しさであるが、学校自体がそうした計画化が可能かどうか極めて疑問だったからである。

実際、最近の調査でその実態が浮かび上がっている。教育調査研究所(新井郁男理事長)の『小・中学校における「カリキュラム・マネジメント」の現状と今後の課題』(今年7月)に示されているデータである。

それによると、3つの側面について「十分取り組んでいる+概ね取り組んでいる」であるが、(1)は小学校47.3%、中学校48.3%である。(2)は小71.2%、中69.3%、(3)は小76.6%、中48.4%である。半数前後の数字であるから現在でもかなり良好な印象を受けるが、次はどうであろうか。

〇カリキュラム・マネジメントの問題点

CurMについての課題についてであるが、「教育課程の編成について、学年間や教科等間で系統性や関連性を図ったり、教科横断的に組織したりなどが考慮されていない」は小51.3%、中54.2%である。ほぼ半数である。「教育課程編成の際に、内容を教科書に沿って並べるだけになっている」は小が21.9%、中が10.2%である。

教科書カリキュラムに沿った教育課程編成は、多かれ少なかれ行われているのが実態であろうが、学年間や教科間の系統性や関連性、教科横断的な組織化は学校にとってかなり難しいという印象がある。

そこで思い出すのは、現行の学習指導要領が完全実施された平成23年の新しい教科書登場の風景である。4月に教員に渡されたのは3割増ページの分厚い教科書で、教育課程編成に混乱が生じていた。実際、その後の指導では教科書内容をこなすのに精一杯という感じで若手教員を中心に進度の遅れが続出した。

今は分厚い教科書にも馴れたであろうが、依然として教育課程編成は困難な状況にあるようにみえる。その背景には次のことがある。先のデータの続きである。

「教師が多忙で日々の指導に追われマネジメントする余裕がない」小50.6%、中49.2%。「教師の経験が未熟で、教育課程の意識やマネジメント力が不足している」小62.6%、中37.3%。「カリキュラム・マネジメントの研修が不足している」は小50.2%、中61.0%。

つまり、CurMを行う教員の条件整備が十分に整っていないという問題が大きいのである。特に「研修不足」をあげているのが半数を超えている。しかも中学校に多い。このことはCurMの重要性についての教員の意識が高いことを示しているであろう。学校の実態に即したCurMのあり方を究明する必要がある。

〇カリキュラム・マネジメントの充実策

現在、中教審では次期学習指導要領に向けて各教科等のワーキング・グループが活動しているが、『審議のまとめ』等をみると、学力の3要素や学年の発達における学習内容についての検討が主なようである。教科横断等の検討はその後に行われると予測される。

しかし、ここで考えたいのは最初に述べたように、CurMは現在でも実施すべき日常の教育行為である。極めて重要である。そのことの認識がないと、CurMの論議はほとんど意味をなさない。

ところが先の調査では、「中教審が『論点整理』で示した新たな『カリキュラム・マネジメント』の重要性についての教師の意識や理解は現在のところどのような状況ですか」という問いに、「校長のみにとどまっている」が小22.7%、中19.4%である。「校長・教頭・副校長・主幹等リーダーが意識し理解している」が小60.3%、中61.3%である。逆に「全ての教員が意識し理解している」は小2.9%、中3.2%でしかない。

つまり、校内でのCurMの共通認識や共通実践が今のところ極めて不徹底である。考え方として新学習指導要領への移行期間から徐々にという考えもあるであろうが、CurM力を高めるには決して今からでも早過ぎない。

それは教師力として、例えば単元構成におけるCurMは個々の実践に任されることが多くなるからである。また、現在の実践においても、日常的にCurMは必要な課題である。教師個々のCurM力の向上こそ重要である。そこで『審議のまとめ』を契機に新しいCurMの基本についての共通認識を高めながら、日常の教育実践につながる教師力の向上に努める必要がある。

多忙化や研修時間の制約という厳しい条件はあるが、「教員による学習集団」化する学校づくりが今から必要とされる。その重要なカギとなるのが教師個々のCurM力の向上であることは確かである。

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