(注目の教育時事を読む)第30回 図表でみる教育2016年版

あらためて教育への投資を
その重要性への理解強く願う
◇データを詳細に見る必要がある◆

本紙9月22日付は「日本は33カ国中で32位 教育機関への公的支出」の見出しの下、OECDが今月発表した調査報告書「図表でみる教育2016年版」について報じている(電子版では9月16日付)。「図表で見る教育」は、教育機関への支出額や上級学校への進学率等のデータをもとに各国の状況について比較し、考察しているものだ。

公的支出が「日本は32位」との見出しからは、日本の公的支出の低さと家計負担の重さがうかがわれる。だが、このデータは就学前教育から高等教育までを総合したものであることに注意が必要だ。詳しくデータを見る必要がある。

まず、日本において公的支出が低く、家計の負担が重いのは、修学前教育と高等教育であって、初等・中等教育については状況が異なっている。

就学前教育について見ると、日本では、3、4、5歳児のどの段階でも就学前教育を受けている割合がOECD平均を上回っている。この就学前教育段階の教育支出では日本はOECD加盟国で公的財源の割合が最も低い国の1つで、家計負担が重い。就学前教育の家計負担が重いのは、少子化問題対策や男女共同参画社会の推進といった観点から大きな課題である。子育てに関する負担軽減に資するためにも、まずはOECD加盟国平均水準を目指して幼児教育無償化等の施策が実行される必要がある。

高等教育については、大学・短大・専門学校の教育を受ける若者が日本では高いのだが、この段階の授業料はOECD加盟国の中で最も高い国の1つである。この段階の教育支出のうち日本では私費負担の割合は65%であり、OECD加盟国平均30%の2倍以上となっている。日本では、大学等の高い学費をアルバイトや家計が支えており、経済的に苦しい者の就学に大きな困難が生じている。日本では、学部レベルでの大学進学率は高いものの、大学院進学率や留学率はOECD平均よりもかなり低い。大学における教育のあり方にも課題があるのかもしれないが、大学に通う経済的負担が重すぎ、さらに費用をかけて学ぶのに困難が生じているという問題があることがうかがわれる。

◆教員の負担が大きいのが課題◇

以上のように、公的機関への公的支出の少なさは、主に就学前教育と高等教育に関する課題である。初等・中等教育では、家計負担が顕著に多くはない。

初等・中等教育には別の課題がある。教員の負担が大きい点である。教員の授業時間はOECD平均よりも少ないものの、勤務時間数はOECD加盟国の中で最も長い国の1つであり、初等および前期中等教育(小・中学校)の学級規模はOECD加盟国の中で最大規模の1つとされる。日本の教員は、多くの児童生徒に対して、授業以外にも授業準備、課外活動、生徒指導等に時間をかけて仕事をしており、そうした仕事に支えられて、家計にあまり負担をかけずに質の高い初等・中等教育が可能となっていると考えられる。

教員の多忙が常に問題になっているが、OECDのデータからも、日本の初等・中等教育が教員たちの大きな負担によって支えられている現実が確認できる。

◇男女格差の縮小も大きな課題◆

以上に加え、OECDが報告書で指摘しているのが男女格差である。日本の学校では、OECD加盟国平均よりも教員における女性の比率が低く、校長職に至っては圧倒的に男性によって占められている。大学や大学院修了者における女性修了者の割合はOECD平均を大きく下回っており、特に工学系や自然科学、社会科学、商学、法学分野等で女子学生の割合が低い点が指摘されている。高等教育を修了した女性の就業率が低く、男性の就業率が高いのも日本の特徴だ。男女共同参画社会に向けた取り組みはこれまで重ねられてきたはずだが、安倍内閣があらためて「女性が輝く日本へ」と言わざるをえない事情がうかがわれる。

日本では、公的資金による教育への投資はあまりなされず、家計による経済的負担と教員の過重労働によってなんとか質の高い教育が維持されてきた。しかし、教員の負担の重さは限界を超えつつあり、都市部を中心に教員採用試験の志願倍率低下や管理職不足の問題が生じている。家計負担の重さは少子化対策を困難にするとともに、大学院進学率や留学率の低迷との関係も懸念される。教育や就業における男女格差の縮小も大きな課題だ。

教育への投資は、将来の生産力強化や社会保障費削減等に関して高い効果が見込めるものである。だが、投資の効果が表れるのに時間がかかる上に、これまでの日本では、投資の少なさを、教員の過剰労働や家計の負担が補ってきた。こうしたことから、教育への公的資金による投資の切実さについて、なかなか理解が得られていない。

今回の報告書の内容が広く知られ、教育への投資への支持が強くなることを願う。


 

注目教育時事本紙ニュース要約
日本は33カ国中32位

OECDは9月15日、教育に関する調査報告書「図表でみる教育2016年版」を世界同時発表した。それによれば、2013年のGDPに占める教育機関への公的支出の割合は日本が3.2%で、比較可能な33カ国中で下から2番目だった。教員の労働時間はこの中で最も長かった。

公的支出の対GDP比は加盟国平均が4.5%。日本は7年ぶりに最下位を免れたものの、比較できる33カ国中で、最下位ハンガリーの3.1%をわずかにかわして32位にとどまった。最も高かったのはノルウェーで6.2%、次いでデンマーク6.1%。英国は5.2%、米国は4.2%だった。

教員の労働時間については、日本が最も長かった。幼・小・中・高校の全校種の教員をみると、年間1891時間であった。

その一方で、授業時間は短くなっていた。小学校では、00年からの4年間で17%増加しているが、年間742時間でOECD平均の776時間よりも少ない。中・高校も同様の傾向となっている。

労働時間が長いのは、授業の準備や教育相談、部活動などの課外活動などに時間が費いやされているからだ。

日本は、1学級の児童生徒数が、加盟国の中で多い。14年時点で、小学校の1学級あたりは27人で、中国の30人に次いで2番目に多い。OECD平均は21人。

日本の小・中・高校などを含む女性教員の割合は48.0%で、加盟国中で最下位となった。女性校長の割合も6%で最低だった。OECD平均の45%と比較すると、大きくかけ離れている。

OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は日本の教員について「教育の質が高いのが日本の強み。これまで多くの日本人教師に会ってきたが、子供たちのことを考え、強い気持ちで指導している」と評価した。

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