(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)避難訓練の見直しを

求められる防災教育の視点

文科省主催による「学校施設の防災対策セミナー」が10月7日に開かれた。その中でも特に「安全点検と避難訓練の見直し」が大きなテーマとして注目を集めた(電子版で10月7日、紙面版で10月17日付既報)。学校行事としての避難訓練は、どの学校でも行われているが、改めて防災教育の視点からの見直しを考えてみたい。

■熊本地震の教訓

今年4月に発生した熊本地震では、多くの被害が出て、全国に衝撃を与えた。東日本大震災の記憶が薄れつつある中で、日本に住んでいる限り、地震などの災害から逃れられない現実を国民に再認識させたといってもよい。

そこで重要になるのが、学校における避難訓練などの防災教育だ。

すべての学校で避難訓練は実施されている。しかし、恒例の学校行事の1つとして、内容が形骸化していないかどうか、もう一度見直す必要がある。

例えば、地震発生の合図とともに安全な場所に身を隠し、揺れが収まったら全員校庭に避難して終わりという形式的なものになっていないか。これでは、教職員の命令系統や役割分担の確認には役立っても、子供たちの命を守ることまでは期待できない。

また地震などの災害は、いつ起きるか分からない。その意味で、抜き打ちの避難訓練の実施は不可欠であるほか、授業中や休み時間、給食中や部活動中など、さまざまな場面を想定した避難訓練を計画しておく必要がある。当然、登下校途中に災害が発生する場合も考えられ、どのように対応するか、保護者や地域住民などと協議して訓練しておくのも必要だ。

また学校は地域の避難所となる場合が多い。地元自治会などと連携して、地域との合同避難訓練なども求められる。

■非構造部材の安全点検を

熊本地震では、校舎や体育館の窓・天井・壁など非構造部材と呼ばれる部分に被害が出て、学校が避難所として使えなくなったケースもある。校舎など建物本体の耐震化は全国的にほぼ完了したが、非構造部材の耐震対策実施率は、公立小・中学校全体で71・1%にすぎない。

学校では、地震の際に倒壊する恐れがある棚や下駄箱などの安全対策とともに、非構造部材を含めた点検箇所を洗い出し、定期的な点検の実施が求められる。災害が発生しても、点検すべき箇所が分かっていれば、安全確認がより速やかに行える。

熊本地震では、学校に防災倉庫があったものの、施錠された扉の鍵が見つからなかったり、発電機があっても燃料切れだったりしたという事例も見られた。防災関係の施設・設備についても、安全点検の一環として定期的に確認することが必要だ。さらに、月1回程度は安全点検を実施したい。

■避難訓練と問題解決学習

しかし、常に人間の予想を超えてやってくるのが災害である。どんなに防災マニュアルを見直し、多様な避難訓練を実施していても、それで十分とはならない。

たとえどんなに実際に即した避難訓練をしていても、それが教職員の指示に子供たちが黙って従うだけの訓練ならば、あまり意味がない。避難訓練の終了後、自分たちのとった避難行動や選択は正しかったのか、もっと適切な行動があったのではないかなど、子供たち自身が話し合って考える問題解決的な学習場面を設定すれば、避難訓練の効果は、さらに上がる。

また防災教育という視点で見れば、避難訓練という単発の行事だけでなく、保健体育、社会科、理科、道徳科などの教科も含めて、防災教育に計画的に取り組むことは可能だ。

■防災教育と次期学習指導要領

大切なのは、子供たちが避難訓練や教科などの中で習得した知識・技能を活用し、自らの命を守るために、自分で考え、判断し、行動できるようにすることだろう。そして、災害発生時や避難後に互いに助け合ったり他人への思いやりをもって行動したりすることも大切だ。

このように考えると、避難訓練をはじめとした防災教育は、「何を理解しているか(知識・技能)」「理解していることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)」「どのように社会や人々と関わるか(学びに向かう力・人間性)」という次期学習指導要領のねらいとも一致することが分かる。

学校の避難訓練を形骸化した行事から脱却させるとともに、知識・技能を身につける訓練や体験の場から、さらに自ら判断し行動する子供を育てる場、そして他人と協働できる子供を育てる場へと変えていくことが求められているといえる。

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