(新しい潮流にチャレンジ)特別活動はどう変わるか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

キャリア教育が導入される
○特別活動への期待は増大している

最近、にわかに特別活動への期待が高まっている。理由はさまざまあるが、何よりも学校教育における社会性育成への見直しがある。従来の目標に掲げていた「望ましい集団活動を通して」という曖昧な文言はやめて、将来に向けた社会性育成が強調され始めている。次期学習指導要領の基本もまた「社会に開かれた教育課程」である。

最近、特に言われているのは「非認知的能力」の重要性。これまで学校教育は「学力重視」に偏っていたが、学校は学力とともに社会性を育てる場との再認識である。認知的な能力である学力などのみでなく社会参画や人間関係、コミュニケーションなどの能力、やり抜く力や自制心、努力や忍耐力など非認知能力を育てる大切さである。

さらに近年、諸外国からの「TOKKATSU」への関心の増大がある。学校や学級等で行う多様な集団活動、子供たちの清掃や給食、スポーツ行事や文化行事などを含めて特別活動の形態や内容についての関心が高まっている。

特別活動への期待の増大から、次期教育課程はどう変わろうとしているのであろうか。特別活動の従来の課題は解消されるであろうか。

○課題山積の特別活動

特別活動は大きな課題がいくつもみられたのである。学級活動は決められた内容事項が示されているが、常に新たな教育課題への対応を余儀なくされてきた。食育、キャリア教育、図書館教育、防災教育、情報教育など、それらは授業時間が確保されていないために学級活動の時間に食い込んでいたのが実態である。つまり、「あれもこれも」と実践課題の要求が多すぎた。

そのため学習時間が極端に足りないという問題が起きている。子供の主体的な学習活動や学級・学年行事などを行おうとしても、時間が不足だけでなく、学校行事削減を求める声も大きい。学力向上優先の考えが強く、「特活軽視」がみられるのである。

そこで次期学習指導要領の改訂論議は従来の課題を踏まえて、次のような指摘を行っている。

「特別活動においては、『なすことによって学ぶ』ということが重視され、各学校で特色ある取組が進められている一方で、各活動において身に付けるべき資質・能力は何なのか、どのような学習過程を経ることにより資質・能力の向上につながるかということが必ずしも意識されないまま指導が行われてきた実態も見られる」

特別活動の固有の役割のみでなく、各教科等の学びの基盤になる点を考え、教育課程全体における特別活動の役割、機能を明らかにする必要があるとしている。

○特別活動で育てる資質・能力

特別活動ワーキング・グループ(WG)は、他教科などと同様に小・中・高校の資質・能力の3つの柱、「個別な知識や技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の内容を構想。

小学校を示すと、「個別の知識や技能」は、▽多様な他者と協働する様々な集団活動の意義の理解▽様々な集団活動を実践する上で必要となることの理解や技能。「思考力・判断力・表現力等」は、▽所属する様々な集団や自己の生活上の課題を見いだし、その解決のために話し合い、合意形成を図ったり、意思決定したり、人間関係をよりよく構築したりすることができる。「学びに向かう力・人間性」は、▽自主的・実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かし、人間関係をよりよく構築しようとしたり、集団生活をよりよく形成しようとしたり、自己の生き方についての考えを深め自己の実現を図ろうとしたりする態度——である。

これらの内容は小・中・高校を通して文言がほとんど変わらない。発達に応じた成長の姿がみえない。固定化されている印象が強い。

○特別活動の固有性とキャリア教育の導入

特別活動はさらに「見方・考え方」が強調されている。しかし、強調されているのは特別活動の独自性ではない。各教科等の特質を生かした指導を集団や社会の形成者という視点から問題を見いだし、「よりよい人間関係の形成、よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現の視点からその問題を解決するために考えること」としている。特別活動は全教育課程の中で社会性育成の中核的な役割を持つとされているのである。

各教科等の目指す資質・能力の形成について、特別活動は社会性育成に関連させながら「集団活動を通じた学級・学校文化の創造」を目指すことを主眼にしている。そのため学級(ホームルーム)経営との関連が重視されるだけでなく、学年が上がるにつれて生活範囲や人間関係が多様化し、そこに学年的な積み上げもまた考えられる。

具体的な実践として、学級経営との関連などが重要になるが、今の段階では明確ではない。その場合、教師にとって関心が高いのは「学級(ホームルーム)活動」がどう変わるかであろう。

WGは、特別活動の見方・考え方で示しているのは、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」である。その視点から学級活動の見直している。

例えば、従来の小学校の学級活動は(1)「学級や学校の生活づくり」(2)「日常の生活や学習への適応及び健康安全」であったが、それが、(1)「学級や学校における集団生活の創造、実現(仮)」(2)「一人一人の適応や成長及び健康安全な生活の実現(仮)」としている。さらに(3)として新しく「一人一人のキャリア形成と実現(仮)」が導入される。これら3つは小・中・高とも同様に設定される。キャリア教育の導入である。

具体的な内容事項はまだ決まっていないが、小学校の場合、(1)および(2)は従来とさほど変わらないであろうが、(3)のキャリア形成ついてはどうであろうか。

次の説明がみられる。「主として将来に向けた自己の実現に関わる内容であり、一人一人の主体的な意思決定を通して行うキャリア教育との関連を図るとともに、個に応じた学習の指導・援助や、個別の進路相談等との関連を図る」としている。

キャリア教育も従来の職場体験や職業指導のみでなく新たな考え方が導入されると考えるが、社会性育成に向けた学習の基本構造を考えるとき、新たな学習への具体的な内容がどうなるか、大きな関心を持ちたい。

ただ、年間35時間という枠内での学級(ホームルーム)活動で、(1)(2)(3)をバランス良く行うことは難しい。特に中・高校は私どもの調査では(2)が極めて低調であった。

一方、次期学習指導要領は「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」を教育課程に盛り込むのを意図しているが、例えば「健康・安全・食に関する力」など、いくつかの項目が特別活動に組み込まれるのではないか、と推測する。その結果、特別活動に過重な負担がかかる懸念がある。

現状でも、学級指導を含めて「時間が足りない」とする声は大きく、年間35時間の枠内での教育の実現に不満を持つ教員は多い。また、学級活動の項目に強く縛られずに担任教師の裁量で教育活動を構想できないか、という声もある。クロスカリキュラムのように、他教科等との関連で豊かなカリキュラム・マネジメントができないか、という新たなカリキュラムづくりを求める声もある。

特別活動は、学校の創意工夫が最も求められる学習活動でもあって、今後の中教審の論議がどう有意義に展開するか期待したい。

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