(新しい潮流にチャレンジ)ALをどう充実するか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

学習過程の最適化を目指す
○アクティブ・ラーニング(AL)の進化

中教審の次期学習指導要領改訂についての『審議のまとめ』が出て、新たな考え方が創出していると感じた。ALに関して、『論点整理』に示されていた(1)深い学び(2)対話的学び(3)主体的な学び——の順が『審議のまとめ』では「主体的・対話的で深い学び」に変わった。授業を考えれば、この流れが順当である。

それ以上に注目されるのは各教科等のワーキング・グループ(WG)がそれぞれ学習過程の案を示していることである。新しい動きといえる。

周知のように「ALは定型がない」とされているが、「主体的・対話的で深い学び」は一定の学習の流れを予想させ、古典的な「導入」→「展開」→「終末」の授業構成すら思わせる。

また一方で「定型がない」ということは、ある単元における学習過程を、その単元の目指す学習目標に沿って最も有効で適切な方策を築き上げることが必要ということになる。「学習過程の最適化」である。ただ、単元ごと、授業ごとに、最適な学習過程は変わるから、それは至難の業ではある。

だが、学習過程の最適化を目指すことは、たとえ極めて困難であっても、必要とされることではないか。

その動きの一つが中教審の各教科等のWGで行っているそれぞれの学習過程(案)の作業だと考える。この動きは従来になく画期的である。何よりも各教科等には固有の身に付けたい「力」がある。国語と理科、音楽では異なるのである。それらを十把一絡げで学習過程を定型化するのには無理がある。例えば、全ての教科等が問題解決学習で行われるわけではない。

○各教科等の学習過程の実践性

そこで各教科等はそれぞれの固有な見方・考え方に即して適切と考えられる学習過程を構想する。WGの学習過程の構想について一部であるが紹介したい。ただし、基本的な骨組みのみで細部は省略する。

▽国語=学習目的の理解→テーマの設定→情報収集→表現→他者の話すことへの評価、他者からの評価→自分の学習に対する考察→次の学習活動への活用
▽社会科=課題把握(動機付け、方向性)→課題追究(情報収集、考察・構想)→課題解決、新たな課題(まとめ、ふり返り)
▽理科=課題の把握(自然事象に対する気付き、課題の設定)→課題の探究(仮説の設定、検証計画の立案、観察・実験の実施、結果の処理)→課題の解決(考察・推論、表現・伝達)
▽家庭科=生活の課題発見→解決方法の検討と計画→課題解決に向けた実践活動→実践活動の評価・改善(→家庭・地域での実践)
▽総合的な学習の時間=課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現

このような各教科等の学習過程は、従来からの学習理論等の学習過程に依拠していると考える。授業など学習には流れがあって、導入→展開→終末はわが国の授業の典型であった。また、問題解決学習は仮説設定→課題追究→成果確認などの流れを持つ。総合的な学習は課題発見・設定→課題追究→成果発表の展開が主である。最近注目されている「反転授業」や「知識構成型ジグゾー法」も一定の流れがみられる。

ただ従来は、各教科等の固有の学習過程が学習指導要領レベルで提示されなかったため、どの教科等でも通用する学習過程があるかのような通念が生まれたのではないか。今回WGの示す動きが加速されることで各教科等の固有性の認識や、相互理解もまた促進されるであろう。

また、留意したいことは、今回のWGの学習過程(案)が各教科等の全ての単元等において適切かどうか、は難しいことである。実践では、さらなる適切な学習過程の吟味が必要になる。

○「主体的・対話的で深い学び」は基盤

各教科等の適切な学習過程が構築されれば、ALは影が薄くなる印象があるが、全ての学習過程のベースに「主体的・対話的で深い学び」があるという認識が重要である。教科等の学習過程を構想した場合、ALの視点で見直す必要がある。ただ、『審議のまとめ』のALの説明はよく分からないことがある。『論点整理』と違った説明である。

(1)学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通し持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」になっているか。
(2)子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
(3)各教科等で習得した概念や考え方を活用した「見方・考え方」を働かせ、問いを見いだして解決したり、自己の考えを形成し発表したり、思いを基に構想、創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

よく分からないのは、(1)の「自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら」の文言である。子供が学びにおいて単元などの課題解決を見通すことすら難しい。毎日の授業でキャリア形成を絶えず考えることはあり得ない。実は、河合塾などの高校・大学生の調査では、「教科学力」「リテラシー」「コンピテンシー」「キャリア観」が相関しない、というデータが示されていて、それぞれに固有の学習形成が必要なこと示唆している。主体的な学習過程とキャリア教育は容易に結び付かないのである(『現代社会をタフに生き抜く新しい学力の育成と評価』PROG白書プロジェクト編著 学事出版2016)。

また、(2)についても「教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに」とあるが、そのような学習過程は意図的な場合のみで一般的ではない。『論点整理』は「他者との協働や外界との相互作用」となっていて多様な交流や課題など学習材が想定できる。今回は「対話」の考え方や例が安易すぎる。

ともあれ「主体的・対話的で深い学び」が全ての学習活動の基盤であることは確かである。カリキュラム・マネジメントでは十分留意すべきことである。

○全ての学習の基盤となる資質・能力の形成

ALの展開について、さらに留意したいことがある。次期学習指導要領の改訂論議が始まって以降、「汎用性スキル(コンピテンシー)」重視の考えが強調されてきたが、『審議のまとめ』においても「教科等を超えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力」が示されている。ただし、その具体的な内容は「言語能力」と「情報活用能力」である。審議の過程では、「問題発見・解決能力」「体験から学び実践する力」「多様な他者と協働する力」「学習を振り返る力」も示されていた。それが「言語能力」と「情報活用能力」に絞られたのは、「全ての学習の基盤」についてさらなる検討が必要と考えたためであろう。

ただ、「汎用的スキル」をどう身につけるかは重要な問題で、各教科等のカリキュラムは次のように構想する必要があると考える。

(1)各教科等の特質を生かした適切な学習過程を構想する。
(2)その学習過程を「主体的・対話的で深い学び」の視点から再吟味する。
(3)学習の基盤となる汎用的スキルを必要性に応じて学習過程に組み入れる。

ALは、各教科等の具体的な単元の学習過程に組み込まれることによって、さらに質の高い学習に進化するといえる。

そのことを可能にするのが、教師のカリキュラム・マネジメント力である。教師個々がカリキュラム・マネジメント力を身につけることが最も重要な課題であると考える。

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