(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース )教職員定数巡る文・財攻防

予算折衝のかけひき材料か

公立小・中学校の教職員定数を巡って、文部科学省と財務省の攻防が激しくなっている(本紙1面に記事、電子版では11月4日付既報)。実質的な「現状維持」として今後10年間で約4万9400人の定数削減を求める財務省。これに「学校現場の実態無視」と反論する文科省。両省の攻防は、どう決着するのだろうか。

■約4万9400人削減試算

財務省は11月4日、平成38年度までの10年間で公立小・中学校の教職員定数を28年度比で約4万9400人削減することが可能とする「試算」を、財政制度等審議会に示した。これに対して文科省は、8日、財政審の議論に対する反論をホームページに掲載し、両省は真っ向からぶつかることになった。

教職員定数には、学級数などで機械的に決まる「基礎定数」と、単年度ごとに予算折衝で決まる「加配定数」の2種類がある。また少子化による児童生徒減で教職員定数の削減は今後必至との認識は、文科・財務両省とも一致している。

このため文科省は今年8月、現行では加配定数となっている発達障害児などの「通級指導」と、日本語が不自由な外国人児童生徒などに対する「日本語指導」を基礎定数に組み入れて安定的に確保する一方、いじめ対応などのために加配定数を充実させる方針を打ち出した。これによって、今後10年間で教職員定数の削減は差し引き約1万4500人減にとどめるというのが文科省の考え方だ。

一方の財務省は、現行の教育水準を維持しても、今後10年間で教職員定数をおよそ4万9400人削減できるとしたほか、通級指導と日本語指導の基礎定数化に対してもエビデンス(科学的根拠)の提示を求めるなど慎重な姿勢を示した。

■交わらない両省の主張

では両省の考え方は、どう違うのか見てみよう。

▽児童生徒の減少に伴う定数の変化について
財務「現在の教育環境を維持した場合でも、今後10年間で約4万9400人の削減が可能」
文科「(財務省の試算は)発達障害や外国人児童生徒の増加傾向が加味されていないので、現在の教育環境を継続させた試算になっていない」

▽通級指導の基礎定数化
財務「通級に関する教員1人当たりの児童生徒数は、都道府県別で最大15倍もの差がある」
文科「都道府県別の差を解消するために基礎定数化が必要」

▽国際的に見た教員1人当たりの児童生徒数
財務「既に国際的に遜色ない水準であり、学力も国際的に高いレベルにある。教員の『質』を高めつつ、『量』については現行教育環境を維持しながら基礎および加配定数を措置していくのが原則」
文科「他のトップレベルの国々と比較して『遜色ないレベル』とはいえない。(教員1人当たりの生徒数が日本より多い)日本以外の『先進諸国』の学力は、いずれも世界トップレベルとはいえない」

結局のところ、両省の主張はそれぞれの立場での「正論」であり、それが交わることはなさそうだ。しかし、世界的にも学力トップクラスといわれる現在の日本の教育が、過重労働ともいえる教員の負担によって、かろうじて成り立っているのは間違いない。

■攻防の陰に思惑ありか

一方、両省の攻防の陰で気になるのが、年末の予算折衝に向けた「かけひき」だ。

そもそも通級指導と日本語指導の基礎定数化には、財務省も理解を示していたともいわれている。児童生徒の減少で、基礎定数は放っておいても減っていくからだ。そして財務省が合意すると踏んだからこそ、文科省は、通級指導と日本語指導の基礎定数化に主眼を置いた中長期的戦略を立てたのだろう。

このため年末の予算折衝での教職員定数改善の焦点は、いじめ対応などでどれだけ加配定数を充実させられるかだとの見方があった。それがここにきて財務省は、通級指導と日本語指導の基礎定数化に難色を示すだけでなく、予想を超える教員定数削減を主張し始めた。これは何を意味するのか。

恐らく、通級指導と日本語指導の基礎定数化に批判的な姿勢を見せることで、教職員定数改善の争点をずらそうとしているのではないか。

つまり予算折衝の結果、通級指導と日本語指導の基礎定数化を「激しい攻防の末」に認めることで、肝心の加配定数改善は先送りするという思惑があるとも考えられる。年末の予算折衝では、義務教育の根幹である教職員定数の改善について、「かけひき」ではなく、正面からの「議論」を望みたい。

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