(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース )自己肯定感をどう高めるか

失敗を許容する社会が要に

政府の教育再生実行会議は、「子供の自己肯定感改善の環境づくり」をテーマにした審議を開始した(本紙電子版11月14日付、紙版11月21日付既報)。日本の子供たちの自己肯定感は高められるのだろうか。

■外国に比べて低い自己評価

日本青少年教育振興機構が昨年発表した高校生国際比較調査によると、「自分がダメな人間だと思うことがある」という質問に「そう思う」と回答した高校生の割合は、日本が72.5%、中国が56.4%、米国が45.1%、韓国が35.2%で、日本の高校生の自己肯定感の低さが際立っている。そして、この傾向は何十年も前から同様に指摘されている。

これは裏を返せば、何十年たっても日本の子供の自己肯定感は低いままだったということだ。

これに対して安倍晋三首相は、教育再生実行会議の立ち上げの際から子供の自己肯定感の向上を課題に掲げていたほか、下村博文元文科相も学習指導要領改訂を中央教育審議会に諮問した際、子供の自己肯定感の向上を次期学習指導要領の目的の一つに挙げた。

これらの背景には、グローバル社会において自己肯定感が低い人材は、国際競争に勝てないという危機感がある。

では、なぜ日本の子供の自己肯定感は低いのか。さまざまな説がある。

▽自己肯定感を高めるには「褒める」ことが必要だが、日本では「叱る」に重点を置いているため▽日本の社会は同調圧力が強く、他人よりも突出するのを嫌うため▽他人との比較で自己を確認する教育体制や社会システム、文化があるため——などだ。

■他者評価が肯定感に影響

一方、国際比較調査自体に疑問を呈する見方もある。回答の際に日本人特有の「謙虚さ」が出るため、自己を自慢するような回答が少なくなるのは当然という意見だ。また内閣府の研究チームの分析では、外国の子供は「対自的な自己認識」を基に肯定感を得ているのに対して、日本の子供は「対他的な自己認識」で肯定感を得ていると指摘されている。

とにかく、日本の場合は、他者による評価が自己肯定感に強く影響しているのは確かだ。しかし、自己評価だけで自己肯定感を得たとして、そんな人物を日本の社会はどう受け止めるだろうか。「根拠のない自信」にあふれた人間が、会社や地域でどう思われているか、言うまでもないだろう。

ここで明らかになるのは、自己肯定感の低さは、大人を含めた日本の社会全体の課題であって、子供たちだけの問題では決してないという真実だ。

■失敗を許容する社会へ

とはいえ、子供たちの自己肯定感の低さは、やはり好ましくはない。家庭や学校の問題でもあり、何とかしなくてはならない。

国立青少年教育振興機構の別の調査によると、自然体験など幼少期からの体験活動の経験が多い子供ほど、自己肯定感が高いという結果が出ている。体験活動の充実などは最優先で行うべきだろう。

また子供同士で、多様な意見や考え方を認め合う環境をつくるのも重要だ。これにはアクティブ・ラーニングが有効かもしれない。さらに、学校や家庭に対する満足度が高い子供は、自己肯定感も高いというデータもある。「分かる授業」を目指した授業改善、いじめなどのない「安心・安全な学校づくり」も必要だ。

そして、子供たちが持つそれぞれの長所を伸ばす教育も不可欠となる。日本の教育は、均一性・同一性に重きを置いているが、どんな子供にもある多様な長所を思い切り伸ばしていく教育が求められる。そのために、「飛び級」や「飛び入学」などの検討も必要だろう。また「1点刻み」で争う現在の大学入試を早急に改革することも求められる。

しかし一番重要なのは、「失敗を恐れない子供」を育成することだ。

日本では「起業」や「ベンチャー」という言葉には、どこかうさん臭さが付きまとう。これに対して米国などでは、「失敗したらやり直せばよい」という考え方を背景に、「起業」や「ベンチャー」が肯定的に受け止められている。

失敗を恐れない自己肯定感の高い子供を育成するためには、日本の社会が「失敗を許容する社会」に生まれ変わることが求められる。
くれぐれも、教育再生実行会議の審議が、体験活動の充実や道徳教育の強化などという小手先の議論で終わらないのを期待したい。

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