(新しい潮流にチャレンジ)教委と学校の連携をどう深めるか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

学力向上を目指す取り組み
○学力は向上できる

今年の全国学力調査の都道府県別結果を見て驚いた。最近ようやく最下位を脱出した沖縄県が小6の算数Aで上位に入っただけでなく、すべて全国平均以上の成績になっていたことである。

沖縄県については、学力調査実施以前からさまざまな課題について聞いていた。日本に復帰後の全国学力調査で最下位、しかも46位から大きく離されていた。学習習慣が低調で、補導は全国一であった。多くは夜間徘徊だった。そこで県教委は国語と算数について単元ごとに問題集を作り、基礎学力の向上として自発的に子供に学習させようとした。ただ当時、一部の教員の反発も大きかったという。

また、沖縄県は島嶼が多く、県立教育センターはあるが、研修は学期ごとに交替していた。県全体のまとまりをどう創るか、それが大きな課題に思われた。

その沖縄県が学力で大きな飛躍を遂げたのである。その背景に秋田県の学力形成に学ぶという方略があったという。その内情はわからないが、改めて秋田県の学力形成の在り方に注目したいと考えた。
その有効な情報をベネッセの『VIEW21』(平成28年、Vol.3)が示してくれている。教育委員会版になっていて学校では読むことができない冊子だが、本誌には一つの地域の教委による教育施策と学校の教育実践が載っていて両者の連携がよくわかり、私はいつも期待して読んでいる。

実のところ、これからは教委と学校が連携し、いわば地域教育創生が今後の重要な課題になるのではないかと考える。地域の多様な教育資源を生かした学校のカリキュラムづくりや地域住民の教育参画など、コミュニティ・スクールの動きなども含めて、教委と学校の連携はますます重要になると考える。学力向上もその一環である。

○秋田県の学力向上の取り組み

最近、いくつかの県や指定都市で学力向上に向けた具体的な方針や指導方法などを構想し、提示している例に出会う。単に学校の学力点のみを比較し、順位を問題にするのではなく、どうすれば学力が向上するか、その指導の在り方を支援する例である。

実は秋田県もまた、昭和30年代に実施した旧全国学力調査は40位くらいに低迷していたという。そこで平成13年に「少人数学習推進事業」など本格的に指導改善に着手した。例えば、今年は小中全学年で30人程度の学級規模にするため、臨時講師99人、非常勤講師112人を配置し、小3以上の国語、算数、理科、中学の数学、理科、英語は20人程度の少人数指導を可能にしている。

「学習状況調査事業」も充実していて、小4~中2に年1回学力調査と質問紙調査を行う。学年によっては社会、英語も含まれる。また、重要なことであるが、調査結果の分析結果を提出し、役立つ資料を学校に提供するなど、県教委が改善策を提供している。 また、「教科指導ICTの活用による指導力向上プロジェクト」があって、指導力向上に向けた学校間ネットワークづくりを各地区の教科指導力に優れた教員(コア・ティーチャー)を中心に進めている。

このように秋田県は学力向上対策システムがかなり進んでいると考える。特に教員増加のみでなく、学力向上への調査結果の分析など学校への直接的な対応を図っていることに注目したい。

市町村教委はどうか。本誌は八峰町を紹介しているが、町の施策は次のようである。

多くの具体的な施策をあげているのでその項目をあげておきたい。「学校生活支援事業(特別支援教育支援員)」「中1ギャップ対策事業」「学力フォローアップスクール事業(町営学習塾)」「家庭・学校等における児童生徒のトラブル対策」「国際交流事業」「ICT機器の導入」「ICT支援員配置事業」「図書館司書事業」「子ども子育てマイブック事業」「特別旅費」などである。

このうち「学力フォローアップスクール事業(町営学習塾)」は、町内に学習塾がないことから、中1~3年生を対象に、夏季・冬季休業中約20日間、特別教育支援員や秋田大学の学生が生徒を指導するもので、希望制であるが好評で9割の参加という。卓越した指導力を持つ教員を「教育専門監」とする制度もあって、例えば英語科の授業改善等の指導に当たっている。

本誌は八峰中学校の実践を紹介しているが、県と町のこのような施策を活用しながら学力向上に具体的に取り組んでいる。特に授業改善では、ノート指導や板書の工夫、少人数学習の推進、学び合いの充実に力を入れている。また、興味あることとして毎日2ページ分の自学ノートの提出を義務づけているという。ただし、課題は自由である。

さらに、ICT機器の活用が八峰町の特色であろう。中学校に2人のICT支援員が常駐していて、ICT機器を活用した授業作りをサポートしている。各教室に電子黒板や書画カメラが設置され、デジタル教科書などを使ったタブレット端末による授業が展開されているという。

○子供はどう学んでいるか

私が秋田県の教育に関心を持つのは、単に学力成績全国一という理由のみではない。子供がどう学んでいるかという点で多くの示唆がみられるからである。

例えば八峰町には学習塾がない。全国的には通塾率は中学校の場合ほぼ6割である。さらに八峰中は自学ノートの提出を毎日求めているが、ただし課題は自由とある。自学自習の習慣ができていないと難しいのである。

本誌の別な論文で、志水宏吉教授(大阪大学大学院)が学力向上の基本は「学習習慣」だと述べているが、全く同感である。私はそれに加えて「自学自習」ができることだと考えている。「自学自習」の力は社会人になってから最も大きな力を発揮する。その意味で、八峰中が「自学自習」を生徒に仕向けていることの意味は大きい。中教審が提示している「学んだことをどう生かすか」「学びに向かう力」をどう育てるかにつながるのである。

平成25年度の全国学力・学習状況調査であるが、それをみると秋田県は「学習塾に通っている」が全国最低であった。「国語で家庭学習の課題を与えた」も最低。算数・数学も最低に近かった。

つまり、学習塾に行かず、教師から宿題を与えられなくとも全国的に成績がトップなのである。さらに「家で計画的に勉強している」「家で授業の予習をしている」「家で授業の復習をしている」が、他の都道府県に比べて断トツに高かった。

「目的に応じて資料を読み、自分の考えを話したり、書いたりしている」「話の組み立てを工夫している」「理由が分かるように書いている」「段落や話のまとまりごとに内容を理解しながら読んでいる」。これらがすべてトップである。

教師の指導もまたトップであることが多い。「資料の調べ方を身に付ける指導」「グループで調べる活動」「発言や活動の時間を保障した授業」「思考を深める発問・指導」「話し合う活動」「家庭での学習方法等に関する指導」「学習方法(適切にノートをとるなど)に関する指導」「授業の冒頭で目標を示している」「振り返る活動を取り入れた」などである。

恐らくは、沖縄県の飛躍的な学力向上は、このような秋田県の指導の在り方に大きく学んだ結果ではないかと推測する。

学力向上は、子供の学ぶ姿勢をどう形成するかであって、その方略が全国的に広まることへの期待は大きいものがある。

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