(新しい潮流にチャレンジ)部活動の正常化に向けて

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

ブラックと言われない対策を
○部活動の教員多忙化が続く

「部活がブラックすぎて倒れそう—教師に部活の顧問をする・しないの選択権をください」という訴えが署名サイトから昨年末発信された。この若手グループの声はたちまち広まり、3カ月足らずで2万人以上の署名が集まったという。この署名は文科省に提出された。最近もある市の若手教員の残業時間は月平均90時間という調査結果が示されている。

報道によれば10月28日の教育再生実行会議で安倍首相は教員の長時間労働が顕在化しているとして「教師のみが部活動を担うのは限界があり、今の部活の在り方については見直す必要がある」との見解を示したという。

周知のようにわが国の教員が他国の教員に比べて著しく勤務時間が長いことが明らかになっている。OECDの国際教員指導環境調査(TALIS)は中学校教員を対象にした調査であるが、日本の教員の勤務時間は週53.9時間で調査対象国中最長であった。各国の平均は38.3時間である。

多いのは「課外活動(部活動)の時間」で7.7時間(平均2.1時間)、書類作りなどの「一般事務業務」が5.5時間(平均2.9時間)であった。「指導(授業)に使った時間」は17.7時間で、平均の19.3時間よりも少ない。部活動の時間が極端に突出している。

文科省は27年7月に『学校現場における業務改善のためのガイドライン』を公表している。ただ、部活動の改善についてはほとんど言及されていなかった。

部活動については今年の6月に文科省は「学校規模における業務の適正化に向けて」を公表し、かなり具体的な取り組みの提案を行っている。「教員の部活動における負担を大胆に軽減する」(以下、文科省提案)というものである。

○部活動は曲がり角か

部活動への不満が教員から多く寄せられるようになった背景には、勤務時間が長いという理由以外にも多様な課題がありそうだ。

一つの大きな理由は、部活指導のシステムの問題があると考える。部活動は学習指導要領の総則に「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」と書かれているが、基本的には生徒が自主的・自発的に参加するものである。ただ、全員参加の形をとっている学校が少なくない。

全員参加が当然と受け止められている学校風土がある。それに対して疑問を持つ教員が現れはじめているのではないか。約66%の中学校が全教員が顧問になることを原則としているというが、運動部顧問のうち競技経験のない顧問が46%もいるという。

部活顧問は校長が校務として分掌させることができるが、希望を無視してまで分掌させている実態に対する反発が起きているのではないか。

また、最近の教員は部活動による多忙化の解消に関心が向き始めているのではないかと考える。文科省提案も「教員が放課後指導に時間を過度に費やすと、授業準備、生徒の個別相談や家庭訪問、外部専門家や関係機関との連携に当たる上で支障になると懸念される」と述べている。今後は部活重視よりも教材研究等に時間をさきたいと考える教員が増加するのではないか。アクティブ・ラーニングやカリキュラム・マネジメントなど、やりたいし、やる必要のある課題が増加する。

ただし、以前から部活による多忙化軽減のための多様な提案がなされてきたが実行が伴わないことが多かった。例えば平成9年には、中学校の運動部は週当たり2日以上(高校は1日以上)の休業日を設定することや、土・日曜の大会参加の場合は休養日を他の曜日に設けるなどである。また、部活の練習は平日の場合、長くても2~3時間以内などが見られるが、校内の規定はあるだろうか。校長は部活顧問を分掌として任命できるが、時間外勤務までは命じることはできない。時間外勤務を命じることができるのは、生徒実習、学校行事、職員会議、非常災害の4項目である。結局、部活担当者任せになっている場合が多いであろう。部活動を見直す曲がり角にきているように感じる。

○部活動を見直す校内の方略を

部活動、特に運動部活動は従来から「より高い水準の技能や記録に挑戦する中で、スポーツの楽しさや喜びを味わい、学校生活に豊かさをもたらす意義を有している」(文科省、平成9年)と肯定的な考えが持たれていた。

調査においても中・高校生、教員、保護者の9割以上が「運動部活動は生徒の将来のために役立つ」と答えたという。運動部活動によって何を得たかといえば、40~50%であるが、「体力が伸びてきた」「スポーツの楽しさ」「友達ができた」「技術が向上してきた」とされている。

私どもも大学生に中学・高校時代を振り返って特別活動や部活動で「どのようなことが身についたか」を調査したことがある(『特別活動の社会性獲得に関する調査報告書』日本特別活動学会研究開発委員会23年)。

それによると、特別活動全体では「人間関係を築く力」中学校92.0%(高校91.1% 以下同じ)、「コミュニケーション力」90.9%(88.2%)、「チームワークなど連帯感」90.2%(90.4%)など極めて高かった。
部活動は次のようであった。「自分のやりたいことを選ぶことができた(自発性)」87.0%(86.0%)、「自分から進んで一生懸命努力することが多かった(努力)」85.6%(81.5%)、「先輩・後輩などの人間関係について多く学んだ(人間関係形成)」80.0%(78.5%)、など高い結果であった。この他、「達成意欲」「自主性」「チームワーク力」「連帯感」「協力性」「責任感」の順であったが、すべてほぼ70%を超えていた。

この数値は、全体的には学校行事としての文化・スポーツ活動の取り組みや、学級・ホームルーム活動、生徒会活動よりもかなり高かったのである。部活は生徒にとって意義のある活動であることは確かである。

しかし、今回の文科省は生徒の部活についてかなり懸念を持っているようにみえる。積極的な肯定ではなく、部活の見直しを生徒の面からも行う考えである。次にように述べている。

「教員の勤務負担の軽減のみならず、生徒の多様な体験を充実させ、健全な成長の促進を促す観点からも、休養日の設定の徹底をはじめ、部活動の大胆な見直しを行い、適正化を推進する」
この文中の「健全な成長」とは何か。実は全国学力調査の生徒質問紙調査は多面的に考察できる優れたデータであるが、その中に例えば日常生活に関する調査がある。「普段、何時に就寝しているか」の問いに「12時以降」が21.5%もみられるのである。「テレビ等」の視聴時間や「テレビゲーム」や「スマホ、メール」などに費やす時間は、それぞれ「3時間以上」が24.1%、18.9%、16.6%である。同じ生徒が関わっているとすれば、その影響は甚大であろう。

また、授業での学習態度に関する調査項目を見ても、多くの課題がみられる。つまり、大切なことは生徒個々の生活・学習管理が正しく行われているかどうかの学校の把握が重要であって、その観点を含めて自校の生徒の実態を把握し、部活動の指導につなげる必要があるということである。

部活動の指導は各学校の裁量に任されることが多い。生徒や教職員個々の考え方や保護者の意向などを十分聴取して、従来の部活観を超えた、自校にとって望ましい部活動の在り方をそれぞれの学校が考えるべきではないか。今はその時期に来ていると考える。

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