(注目の教育時事を読む)第32回 スクールカウンセラー

藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

 

多様な役割担い活動している チーム学校の方向性に影響大

本紙電子版11月10日付記事は「スクールカウンセラー活用 文科省が27年度実践事例集」の見出しで、文部科学省が全都道府県・政令指定都市のスクールカウンセラー(SC)の活用例などをまとめた事例集を公開したことを報じている(紙版では11月17日付で)。同事例集は、サイト上でも全文公開されている。

本事例集はまさに各地域の取り組みを集めたものであり、全体を通した分析などは掲載されていない。67もの地方自治体の取り組みが羅列されているため、全体の様子を理解しようとすれば少々骨が折れる。

では、本報告書から読み取るべきは何であろうか。私は、以下2点が重要と考える。

第一に、SCの仕事は相談を受けるだけではないということだ。

カウンセラーというと「カウンセリングをする人」、すなわち悩みを抱えた人などから相談を受けるのが主な仕事と考えられやすい。確かに、SCの仕事の中で、相談を受けるのは一つの柱であろう。だが、事例集には、SCが教員研修やPTA研修の講師を務めている事例、SCが児童生徒向けに人間関係づくりの実践を行っている事例も掲載されている。

海外でも、SCが問題の予防として研修や人間関係づくり実践を担当する事例は見られ、問題を未然に防ぐ必要は当然高いことを踏まえれば、SCの業務を相談だけに限定せずに広く考えることが必要であるのが分かる。

第二に、SCが対応している事例の種類が幅広いということである。すなわち、不登校やいじめ問題はもちろん、暴力行為、非行、児童虐待、貧困、震災被災地の児童生徒の心身の健康など、対応している事例の種類は実に多岐にわたっている。

これらは、SCの役割が従来素朴に考えられていたよりもずっと広く、重要だというのを意味している。だが、SCの活用に関しては、まだまだ課題が多い。

まず、SC配置の少なさが課題である。SCが配置されていない学校がまだまだ多い上に、配置されている学校でも、週1回3〜6時間の配置が一般的である。SCは、学校の教育相談・生徒指導関連の会議に毎回出席するのが望ましいが、勤務時間が限定されるため、スケジュールの調整も難しい。また問題が生じても、SCがすぐに対応することが困難だ。SCの配置校や勤務時間の拡充が求められる。

次に、配置の少なさとも関係するが、SC待遇の問題がある。SCは基本的に大学院修了を前提とする専門職であるが、多くの地域で非常勤扱いとなっており、複数校のSCを掛け持ちしても年収は300万~400万円程度が一般的である。基本的に1年契約で、雇用は不安定だ。学部卒の教員よりも大学院修了のSCのほうが大幅に給与が低く不安定であるのはバランスを欠いており、これでは人材確保が困難になるであろう。

そして、SCの質の確保も課題である。各地でSC対象の研修会が開かれているとはいえ、SCには学校文化を理解した上で問題の予防や相談への対応などの業務を行う必要があり、SCを務めながら力量を向上させていく必要がある。だが、非常勤での雇用ではSCの質を維持、向上するのは容易ではない。

ここで述べたのは全て、予算に関わる問題である。SCについて教員と同様に国の責任で常勤職員として雇用する体制を、今後検討する必要がある。

昨年12月に出された中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」では、SC配置の改善の必要性が述べられており、今後の改善方策として、SCを学校において必要とされる標準的な職として職務内容を法令上、明確化することや、SCの数を教職員定数として算定し、国庫負担の対象とすることなどを検討すべきと記している。財政難の状況においてこうした財政措置をとるのには抵抗も多いだろうが、SCの業務の重要性に鑑み、今後の対応が進むことを期待したい。

もちろん、SCを増やした分、一般の教員を減らすなどという愚策がとられないことを願う。

これまでSCの資格要件は臨床心理士、精神科医、大学教員などであり、SCの多くは民間資格である臨床心理士である。しかし、昨年、公認心理師法が施行され、平成30年度には、国家資格である公認心理師の資格付与が始まる見込みである。今後は、SCの多くが公認心理師となっていくであろう。公認心理師制度の詳細は明らかになっていないが、SCを含むカウンセラー職の質の向上と待遇の改善に寄与することが期待される。

今後、学校には、児童福祉のプラットフォームとして課題を抱える子供への対応を始める場所としての役割が期待される。当然、いじめなど、学校に起因する問題への対応が遅れることも許されない。

SCの処遇は今後の「チーム学校」の方向性に大きく影響を及ぼすはずだ。今後も、SCの状況に注目していこう。


 

注目教育時事本紙ニュース要約
文科省がSC実践事例集

文科省はこのほど、全都道府県・政令指定都市のスクールカウンセラー(SC)配置体制や資質向上に向けた取り組み、学校における実際の活動例などをまとめた「平成27年度スクールカウンセラー実践事例集」を公開した。

同事例集には、(1)SC等の推進体制(2)SC等の資質向上に向けた研修体制(3)SC等活用事例(4)成果と今後の課題——の4項目について、各教委からの報告が掲載されている。

活用事例からいくつかを拾うと——。

東日本大震災を受けてSCの全県配置を推進している岩手県教委は、沿岸部の被災児童生徒の在籍校を巡回するSCを配置し、組織的・継続的なケアに取り組んでいる。課題として、被災関係を含む情報の引き継ぎがあったが、SCが児童の家庭状況、経済状況、被災体験などを一覧表にまとめて中学校に示すようにした。教師が家族や住居を失った児童との教育相談に戸惑いを持っていたケースもあり、SCが講師となって、教育相談の方法について研修を行った。

兵庫県教委は、中1ギャップ解消のためにSCを活用した事例を報告。中学校のSCが小学校に出向き、「中学生になるまでに知っておきたい人間関係のコツ」と題した出前授業を実施。児童がSCの存在を知り、▽進学後のカウンセリングへの抵抗感が低くなった▽担任とSCの連携が円滑になったなどの成果が見られた。

市独自の「小中一貫型カウンセラー配置」を推進している横浜市教委は、小学校で相談したカウンセラーに引き続き、中学校でも相談できる制度を平成30年度までに全中学校に拡大する計画。9年間の見通しを持った相談体制を目指す。

このSC実践事例集は文科省サイト(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1379093.htm)から全文が閲覧できる。

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