(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース )横浜原発いじめに疑問多々

「当たり前」に丁寧な対応を

東京電力福島第1原発の事故により、福島県から横浜市に自主避難していた現在中1の男子生徒が、避難時に転入した小学校でいじめに遭い、不登校になっていることが、同市教委の第三者委員会による調査報告で明らかになった(本紙電子版11月21日付、24日付、紙版11月28日付、12月1日付既報)。学校関係者が、今回のケースから学ぶべきは何だろうか。

■学校などの対応に疑問も

横浜市の件は、被害者が原発事故といじめという「二重の被害」を受け、文部科学省が義家弘介副大臣らを同市に派遣したことなどもあり、社会的に大きな関心を集めた。またしても学校や教育行政は、これまでのいじめ事件やいじめ自殺事件と同じ轍を踏んでしまった。

公立学校は学区ごとに地域、保護者、児童生徒など、抱える事情がそれぞれ異なる。市町村教委にしても同じだ。だから、全国的に注目を集めたケースを全ての学校に当てはめるのは難しい。またそれぞれの事件やケースには、マスコミの報道などでは語られないさまざまな事情が絡んでいる場合も少なくない。しかし、あえて一般化すれば、同市のケースにはいくつかの疑問が残る。

一つ目は、避難当時の小2でいじめが始まり、当時の校長が配慮してくれたものの、校長、副校長、担任などが異動してからいじめがエスカレートした点である。異動の際に、情報の円滑な引き継ぎが行われていたのだろうか。

二つ目は、被害者がゲームセンターなどで合計150万円にも及ぶ金銭を加害者らに渡していたとされる点。学校が把握した金額はもっと少ないと報道されているが、それでも小学生としては無視できる額ではない。被害者が「自らおごった」と学校が認識していたとしても、その時点でなぜ適切に対応できなかったのか。

三つ目は、脅迫による金銭の授受が疑われるケースであるのにもかかわらず、被害者家族が再度訴えるまで、市教委はなぜこの事案をいじめの「重大事態」として認識できなかったのか。

■対応できなかった学校

市教委の第三者委員会は報告書の中で、学校の対応を「教育の放棄」と批判し、市教委についても被害者への支援が遅れた点を指摘している。個々のいじめ事件、いじめ自殺事件には、さまざまな背景や事情があり、軽々に論じられない部分がある。

しかし、一般論として見た場合でも、同市の事案は、学校や市教委の対応に疑問がある。

事態を受けて市教委は、全市立学校に、▽児童生徒理解に基づく教育支援体制の確立▽情報共有と組織的な対応の徹底▽保護者とのコミュニケーションの活性化▽関係部署、関係機関との連携強化などを再防止策として通知した。

先に挙げた疑問に沿っていえば、原発事故の避難者である情報、「いじめ」が疑える状況があるとの情報が、学校全体で共有され、それが校長、副校長、担任などが異動しても適切に引き継がれていれば、事態はもっと変わっていたかもしれない。

また金銭に関しても、学校側がもっと「常識」を持って対応していれば、脅迫の有無にかかわらず、小学生レベルの出来事ではないと認識できたはずだ。さらに、いじめ防止対策推進法は「重大事態」に関して、その疑いがあるだけでも対応するよう求めている。学校と市教委の両方が、その理念を理解していたら、やはり事態は変わっていたかもしれない。

■当たり前を丁寧に

誤解を招く言い方にはなるのだが、学校現場にはさまざまな事情があり、さまざまな保護者や子供がいて、いろいろな地域住民がやってくる。そのような中で、「ささいなこと」として放置される出来事は、決して少なくない。

そして異常事態は突然、発生する。同市のケースにしても、学校や市教委にとってはそうだったろう。しかし事件やトラブルは、最初から異常事態として現れるわけではない。日常の中の「ささいなこと」が、知らず知らずのうちに大きくなっているのに、学校関係者などが気付かないだけだ。

また多くの学校関係者は、同市の再発防止通知を「当たり前」と思うに違いない。そう、まさに「当たり前」の内容だ。しかし、事件やトラブルを未然に防止するためには、こうした「ささいなこと」があふれている学校現場の中で、「当たり前」のことを地道に、そして丁寧に積み重ねていくしかないのではないだろうか。

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