(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース )ブラック部活、いじめ、18歳選挙

来年も引き続いて重要な課題に

平成28年も残りわずかとなった。まだ年内に、次期学習指導要領の改訂に向けた中央教育審議会答申が控えており、気を抜くわけにはいかないが、ここらでひとまず、今年1年間の、注目すべき点を振り返っておきたい。今年はどんな年だったのだろうか。

■多忙化と「ブラック部活」

まず注目したいのが、教員に対する一般社会の見方に徐々に変化が出始めていることだ。

相変わらず教員バッシングの類は少なくないものの、日本の教員の長時間労働に対しては、社会の共感的な目が向けられつつある。特に、若手教員が中心になって3月に、中学校や高校の部活動顧問の勤務実態を文科省に訴えたのは、「ブラック部活」という言葉で大きな注目を集めた。

格差社会や非正規雇用者の増大などを背景とした「ブラック企業」や「ブラックバイト」などが問題となっていたため、「ブラック部活」という言葉に、社会が敏感に反応したのがうかがえる。

これに対して、文科省も省内に教員業務適正化のためのタスクフォースを設置し、6月13日に報告書をまとめた。「チーム学校」による専門スタッフとの協働などが柱となっている。

しかし、専門スタッフの常勤化などによる「チーム学校」の組織化はまだまだ先の話で、実質的な対策としては、部活動の教養日設定程度しかなかったといってよい。裏を返せば、教員の多忙化が「ブラック部活」問題に矮小化されてしまったともいえる。

今後、教員の多忙化の実態を一般社会に正確に理解してもらうのが、大きな課題として残ったようだ。

■いじめや誤った生徒指導

一方、学校をめぐる問題は、今年もやはり尽きなかった。3月には広島県府中町で、万引をしたとの誤った情報によって、高校入試で推薦を出せないと言われた中3男子生徒が、昨年12月に自殺していた事実が明るみに出た。

また11月には横浜市で、東京電力福島第1原発の事故により自主避難してきた中1男子生徒が、避難時に転校した小学校でいじめに遭い、不登校となっているのが分かった。同様の事態が新潟市でも起こり、教員も関わっていた。

これらの事件で文科省は、いずれも副大臣などの幹部を現地に派遣したが、学校や教育行政に対する社会の目は、厳しい。特にいじめへの対応に関する学校への不信感には、根強いものがある。

文科省が10月に発表した問題行動調査では、平成27年度中のいじめの認知件数は、前年度より3万6468件増の22万4540件となり、過去最多となった。

ただ、これだけ多くなったのには、いじめの発見に学校現場が努めたからとの見方もあり、過去最多自体を批判する声は少なかった。その点は一般社会の変化として注目すべきだろう。

今後、いじめなど生徒指導関係の情報の学校全体での共有化などを一層進めていく必要がある。

■18歳選挙権と主権者教育

平成28年の出来事として忘れてならないのものの一つは、やはり「18歳選挙権」の実現だろう。昨年に成立した改正公職選挙法が施行され、7月10日の参議院選挙で初めて選挙権年齢が18歳に引き下げられた。これに対応して高校では、積極的に模擬投票や模擬議会などによる「主権者教育」が実施されるようになった。

だが、政治的中立性などの問題もあり、主権者教育の内容は形式的で、やや腰の引けたものだったという批判もある。また主権者教育は高校だけの問題ではなく、中学校、そして小学校の課題でもある。小学校から高校までを通した一貫した主権者教育の実施が、これからの課題といえる。

また法務省は、来年の次期通常国会で、成人年齢を現行の20歳から18歳へと引き下げる民法改正案の提出を予定しているともいわれている。「18歳成人」となれば、主権者教育とともに消費者教育などの充実も不可欠となる。

そしてそれは、高校を卒業したら「大人」として社会の荒波に放り込まれるのを意味する。

「18歳選挙権」と「18歳成人」は、小学校から高校までの初等中等教育において、子供たちにどんな資質や能力を身に付けさせるのかを、切実に問うものだ。初中教育の関係者にとって来年以降、主権者教育などの問題は、今まで以上に重要な課題となってくるだろう。

とにもかくにも、来年は良い年であるようにと願わずにはいられない。

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