(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース )「学校事故対応指針」の趣旨徹底を

重要なのは保護者への誠実と配慮

文科省は昨年末に、「『学校事故対応に関する指針』に基づく適切な事故対応の推進について」という通知を、都道府県教委などに発出した(本紙1月16日付既報)。同省が既に、昨年3月に公表した「学校事故対応指針」の趣旨の徹底を求めたものだ。改めて趣旨徹底通知した文科省の狙いは、どこにあるのだろうか。

■対応指針の徹底を

東日本大震災の際に、多くの犠牲を出した岩手県石巻市立大川小学校の事案などを契機として、文科省は有識者会議の審議などを基に「学校事故対応指針」を作成。昨年3月に、都道府県教委などに通知した。危機管理マニュアルの作成や見直しを各学校が実施する際に、参考とするべき内容となっている。

これに対して昨年12月の文科省通知は、学校や教委などの一部で「指針の趣旨・内容に関する認識が十分ではないと思われる例が見受けられます」として、学校事故対応指針の趣旨徹底を改めて求めた。

学校事故対応指針のポイントは、大きく2つに収れんしている。1つには、学校管理下で子供の死亡事故などが発生した際に、事故に関する基本調査、詳細調査の内容や手順、配慮事項などを定めている。2つには、被害児童生徒の保護者に対する適切な配慮を強く求めている。

最近では、いじめ自殺などの報道の陰に隠れてマスコミの扱いは小さくなっているので、学校事故が全国的な注目を集める機会は少ない。ところが実際には、部活動中、授業中、登下校中など学校管理下の死亡事故や重大事故は、いまだに発生している。その中には、保護者が学校側の管理責任を問い、損害賠償訴訟となるケースもある。

文科省が学校事故対応指針の趣旨徹底を改めて通知した背景には、保護者によるそのような損害賠償訴訟や、保護者とのトラブルが後を絶たないといった事情がある。

■指針が守られない

一般的に、学校事故の被害児童生徒の保護者が、学校やその設置者などを相手取って損害賠償訴訟を起こすのは、賠償金が主な目的ではない。学校や教委などの説明に納得できず、事故の全貌を明らかにするには、学校の管理責任を問う形で損害賠償訴訟を起こすしか方法がないと考えるからだ。

裏を返せば、学校側が被害児童生徒の保護者に丁寧に説明責任を果たし、一定の納得を得られれば、事故などの結果は保護者に重くのし掛かったままであっても、多くの場合、訴訟までに発展しにくいともいえる。

一方、学校事故対応指針は、児童生徒が死亡または治療に30日以上を要する負傷などを負った場合は学校設置者に必ず報告し、学校設置者が必要と判断したら、関係者への聞き取りなど事故の基本調査を行うよう規定している。さらに、学校の教育活動自体に事故の要因があると考えられる場合には、専門家など第三者による詳細調査の実施を求めている。

しかし、実際には事故による負傷などを教委に報告しなかったり、教委が児童生徒や教職員への聞き取りなど基本調査や詳細調査を実施しなかったりする事例もあるようだ。このため文科省は再度、学校事故対応指針の周知に踏み切ったものと思われる。

■趣旨の中核は何か

だが、ここで留意すべきは、先に指摘したように、学校事故対応指針の趣旨が、事故の再発防止と同時に「被害児童生徒等の保護者の事実に向き合いたいなどの希望に応えること」である点だ。学校事故対応指針は、▽学校事故が発生したら速やかに被害児童生徒の保護者に連絡する▽保護者の意向も踏まえ基本調査の実施を判断する▽基本調査の経過を適切に保護者に説明する▽保護者からの要望がある場合は詳細調査を実施するなど、繰り返し保護者への丁寧な対応を求めている。

このたびの文科省通知について学校現場では、学校事故の防止、事故が起きた後の再発防止策の徹底などを求めていると受け止める向きもあるだろう。しかし、それは一面の理解に過ぎない。なぜなら、学校事故対応指針の趣旨の中核は、被害児童生徒の保護者に対する配慮、保護者の意向に沿った対応など、徹底的に保護者に寄り添うのを学校や教委に求めたものだからだ。

学校事故が発生した場合、学校現場で、管理責任などの問題が頭に本能的によぎるのは仕方がない。しかし、学校事故対応指針が学校や学校設置者に求めているのは、被害児童生徒の保護者への配慮や誠実な対応であるのを、文科省通知は改めて訴えている。その点を見落としてはならない。

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