(新しい潮流にチャレンジ)「学びに向かう力」の形成

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

全国学力・学習状況調査の活用
○子供の資質・能力の形成と調査

次期学習指導要領の『答申』が公表され、子供に身に付けたい資質や能力などに関する考え方を学習指導要領等で示されることになった。また、各教科等の目標・内容・方法・評価等を一体的に示す動きもみられる。

ところで、全国学力・学習状況調査は現行の学習指導要領の水準における学力・学習力等の傾向を全国的に悉皆調査をするものであるが、改訂学習指導要領によってどう変わるのであろうか。

中教審は「学習内容は削減しない」と明言しているから「知識」と「活用」に分けた学力調査がどう変わるのかよく見えないことがある。

しかし、『総則』の構想が示すように、「何を学ぶか」「どのように学ぶか、何が身に付いたか」「何ができるようになるか」などの形成は自ずと従来型の学力調査との転換を示す意図があると考える。

大きな課題は、その『総則』の理念が学校教育の実践にどうつながり、子供個々にどのように「力」が形成されるかである。

つまり、学習指導要領の理念によって全国学力・学習状況調査も変わることが必要である。そのことを期待しながら今年度実施した調査を読み解くと新たな課題が浮かんでくる。

○全国学力・学習状況調査の活用

そこで、関心を持ったのは学力調査の結果ではなく、知識・技能を課題解決にどう活用するかという「学びに向かう力」の獲得についてである。その「力」は、それぞれの教科等が求める学習活動の在り方のみでなく、また「主体的・対話的で深い学び」とされるアクティブ・ラーニングを典型とする学習のみでもなく、汎用的スキル(コンピテンシー)の形成をも踏まえた学習展開になると考える。

その具体的な展開は先になるにしても、現状において「学びに向かう力」はどう育まれているであろうか。

実のところ、全国学力・学習状況調査の詳細なデータを読み取っていたところ、現状においても「学びに向かう力」の萌芽がすでに現れているのではないか、と思えたのである。特に注目したのは児童・生徒質問紙調査である。その質問項目は、小・中学校ともに85項目もある。それが単純に並列している。

順序を入れ替えるなど、一部省略しながら、一応9つの分野に分けてみた。(1)生活基盤について(9項目)(2)学校以外の学習について(5項目)(3)家庭学習について(5項目)(4)協力的取り組みや社会的な関心など(15項目)(5)授業での学習態度など(14項目)(6)国語の授業(9項目)(7)算数・数学の授業(10項目)(8)道徳と総合的な学習(4項目)(9)「生き方」をめぐる課題(10項目)——である(具体的には高階代表編『学校の評価・自己評価マニュアル』加除式(ぎょうせい)に示している)。

このように分野に分けて、例えば全国や県等の数値と自校の数値を比較してみると、自校の「強み」と「弱み」が浮かびあがってくる。個々の項目のみではよく分からない面が分野で捉えることで見えてくるのである。

例えば、山形県のA中学校は国語・数学ともに県や全国の平均点よりも成績が高い学校であるが、「授業での学習態度など」をみると、「当てはまる」のみであるが、「2年生のときに受けた授業の中で目標(めあて・ねらい)が示されていたと思いますか」は55.7%(全国47.6% 以下同じ)、「2年生のときに受けた授業では、生徒の間で話し合う活動をよく行っていたと思いますか」47.9%(34.9%)と全国よりも高かったのであるが、「2年生のときに受けた授業の最後に学習内容を振り返る活動をよく行っていたと思いますか」16.5%(23.3%)、「2年生のときに受けた授業では自分の考えを発表する機会が与えられていたと思いますか」41.2%(43.5%)と低くなっている。

このように「授業での学習態度など」を見ても、自校の「強み」や「弱み」を見いだすことが可能で、このデータから授業の改善に結びつけることは可能であり効果的である。

○「学びに向かう力」を育てる

ところで、質問紙調査で明らかになっている子供の学習態度であるが、次期教育課程で伸ばしたい「力」の萌芽がすでに現れていることに気づく。

その「力」とは、一言で言えば「学びに向かう力」である。それは多様にあるが、例えば「課題解決に向けた意欲や取り組み」「自ら学ぼうとする態度や自学自習ができる取り組み」「友達などとのコミュニケーション能力」「社会参画意識や行動」などである。

そこで質問紙調査をみると、「課題解決に向けた意欲や取り組み」については、「当てはまる」(全国)のみであるが、例えば「先生から示された課題や、学級やグループの中で、自分たちで立てた課題に対して、自ら考え、自分から取り組んでいたと思いますか」は、小学校30.7%、中学校27.4%であった。

また、「学級やグループの中で自分たちで課題を立てて、その解決に向けて情報を集め、話し合いながら整理して、発表するなどの学習活動に取り組んでいたと思いますか」は、小29.4%、中22.3%である。

このように課題解決に向けた取り組みは「学びに向かう力」の形成として重要なものであるが現状では3割以下程度である。しかも中学校が低い。

「コミュニケーション能力」についてはどうであろうか。「授業で友達との間で話し合う活動をよく行っていたと思いますか」は小45.2%、中34.9%であるが、「学級の友達との間で話し合う活動では、話し合う内容を理解して、相手の考えを最後まで聞き、自分の考えをしっかり伝えていたと思いますか」は小33.4%、中25.4%と低下する。

また、「友達の間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができると思いますか」はさらに低下して小26.4%、中20.2%である。

さらに注目したいのは「友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか」をみると小21.2%、中17.6%であった。コミュニケーション能力は個々の自立に支えられている必要があるが、この調査結果をみると態度面を含めた指導が必要であることがよく分かる。育っていないのである。

「社会参画意識や行動」は多様な面を持つが、その必要度は今後、極めて高くなるであろう。「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がありますか」は小33.3%、中26.7%である。「今住んでいる地域や行事に参加していますか」は小39.1%に対して中19.1%と激減する。一方、「地域社会などでボランティア活動に参加したことがありますか」は小36.2%、中48.7%であった。

以上は「学びに向かう力」の一端を現在の状況から拾ってみた結果であるが、問題解決的な態度やコミュニケーション能力の形成、生活・社会的関心や行動力などは子供に積極的に身に付けたい「力」である。調査結果をみると軒並み十分に育っていないという実態が表れている。今後の「力」の形成に結びつける指導の在り方が重要になる。

そのことでは児童生徒への質問紙の項目を次期教育課程の方向に合わせて再構成する必要があると言えるのである。それは今後も継続するであろう学力調査問題と同様に学習力や社会性育成としても極めて重要視したい事項である。児童生徒の質問紙も新たな構成を必要としていると考える。

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