(教育時事論評)研究室の窓から 第22回 新たな定義で記述されたカリキュラム・マネジメント

国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

 

学習指導要領案が公表された。昨年暮れに出た中教審答申と、大きく変わっているところが2カ所ある。1つは、「アクティブ・ラーニング」が「主体的・対話的で深い学び」の表記に統一されて記述されたこと。もう1つは、カリキュラム・マネジメントが新たな定義で記述されたことである。

昨年12月に出た、学習指導要領改訂に関する中教審答申では、「学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくこと」が「カリキュラム・マネジメント」であると記述された。

その定義のままであれば、カリキュラム・マネジメントは、これまで総則第1「教育課程編成の一般方針」第1項で記述されていた「各学校においては(中略)適切な教育課程を編成する」との記述がカリキュラム・マネジメントの語に代わる可能性もあった。

これまで学習指導要領においては、各教科・道徳・総合的な学習の時間・特別活動の「指導計画」を「作成」し、それらの総体としての「教育課程」を「編成」することと記述してきた。学校で「課外活動」という言葉が使用される場合、それは「教育課程外」の略であり、教育課程内として学習指導要領が規定する各教科・道徳・総合的な学習の時間・特別活動と区別する意味合いがある。

ところが、2月に公表された学習指導要領案では、この第1項の記述はほとんど変わらずに残っている。その上でカリキュラム・マネジメントの定義として「各学校においては、児童や学校、地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと、教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。」と記している。

これまでの学習指導要領では、児童や学校、地域の実態を適切に把握すること、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を組み立てること、指導体制の構築、指導方法や指導体制の工夫改善に関しては記述されてきた。

教科横断的な観点は、学習指導要領解説総則編で記述されてきた。

したがって、このたびのカリキュラム・マネジメントの意味するところは、これまで「教育課程編成」あるいは「指導計画作成」という言葉で語られてきた内容と大差ない。

新たな内容は、教育課程実施状況の評価、改善の観点といえようか。

それと「教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくこと」が、これまでの指導方法や指導体制の工夫改善よりも広い学校経営の営みを意味しているのであれば、これも新たな観点といえよう。

以上のように考えると、アクティブ・ラーニングが日本語に置き換わったように、カリキュラム・マネジメントを日本語の教育課程編成あるいは指導計画作成の語に置き換えることは可能だったはずだ。なぜ、この言葉が残ったのか。

おそらくは、教科等横断的な視点で教育の内容を配列していくこと、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら、効果的に組み合わせることなどの意義について、強く訴えようとしたゆえであろう。

その意義は私も認める。ただし危惧するのは、学校の教育課程編成、カリキュラム・マネジメントの一番の中核は、1時間ごとの「指導案」であるということだ。

木を見て森を見ず、森を見て木を見ずになってはいけない。