(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース )中教審が第8期から第9期へ

残した課題と期待される事柄

第9期中教審が3月6日、松野博一文科相から「高等教育に関する将来構想」について諮問を受け、実質的にスタートした(本紙電子版は当日、紙面では3月13日付既報)。第7期と第8期の中教審は、安倍内閣の下で多くの教育改革方策を提言してきたものの、多くの課題を残したといえる。その残された課題とは何か。また新たに始まった第9期中教審に期待されるものとは何か。

■「下請け化」した中教審

昭和46年に出された「四六(ヨンロク)答申」に代表されるように、中教審は、戦後教育の歴史を語る上で欠かせない存在で、旧文部省の審議会の中でも特別な位置を占めていた。それが平成13年に省庁再編の一環として、生涯学習審議会、理科教育および産業教育審議会、教育課程審議会、教育職員養成審議会、大学審議会、保健体育審議会が中教審に統合され、教育全般を審議する唯一の審議会となり、重要度はさらに増した。

委員の任期は2年間で、再編後の中教審は今回で9期目となる。ただし、過去の中教審を見ると、第7期と第8期の中教審は、それ以前の1〜6期までの中教審と比べて、明らかに異質なものとなっている。

その理由は、安倍首相が掲げる「教育再生」の方針の下で、首相直属の「教育再生実行会議」と並立したことが原因だ。下村博文元文科相は、平成25年2月の第7期中教審総会で「これからは教育再生実行会議の提言を踏まえて諮問させていただく」と表明。記者会見でも「屋上屋を架すのは時間の無駄。実行会議で方向性を決めて、中教審で具体的に議論してほしい」と語っている。これは悪くいえば、中教審が実行会議の提言を具体化するだけの「下請け機関」となったのを意味する。

実際、第7・8期の中教審への文科相の諮問は、詳細に具体化すべき方策を盛り込み、諮問文さえ読めば答申内容が想像できるものになっている。

■中立性に大きな禍根

これまでも首相直属の教育改革検討機関が設けられたことはあった。しかし、中曽根内閣による臨教審の設置中は、中教審は実質的に休眠状態であったし、小渕・森両内閣による教育改革国民会議の際は、中教審は同会議と一定の距離を保っていた。また第一次安倍内閣の教育再生会議については、道徳の教科化などを求める同会議提言を否定する答申さえ出している。

このことを見ても、教育委員会制度の見直し、道徳の教科化など意見が分かれる実行会議の提言を、短期間に次々と具体化する答申を出した第7・8期の中教審がいかに異質であるかが分かる。長期的に見て、国の教育行政は一内閣の意向に左右されるのは好ましくないという「教育行政の中立性」の面において、第7・8期の中教審は、ある意味、大きな禍根を残したといえるだろう。

■求められる「教育的視点」

また教育再生実行会議の提言には、急速なグローバル化対応をはじめとして経済界の意向が強く働いていたことは、否定できない。いわば「教育的な視点」ではなく「経済的視点」が提言の背景にはある。これが多くの教育関係者が、同会議の提言内容などに違和感を覚える原因となっている。

同会議の議論が実質的に終了した現在、第9期中教審に求められるのは、本来の「教育的視点」に立ち返ることだろう。その意味で、3月6日に諮問された高等教育の将来像は、これまでの諮問と比べて内容が抽象的で、具体的な方策実現の縛りは少なく、フリーハンドの部分が多い。ここでしっかりと「教育的視点」に立った中教審本来の議論を期待したい。

■スピード感とバランスを

一方、第7・8期中教審のもう一つの特徴は、審議のスピードだ。道徳の教科化に関する答申は諮問から約4カ月しかかかっていない。大学入試改革など高大接続改革は平成24年8月28日諮問で、その年の12月22日に答申されている。一つの諮問に対して1年以上の審議時間をかけた従来の中教審とは、スピード感が全く異なっている。

教育再生実行会議で既に方向が定まっていたのも理由の一つだが、これからの激しく変化する時代に、従来のように一つのテーマを数年単位で審議するのは困難だろう。今後も中教審には、同様のスピード感が求められよう。ただし短期間で結論を出すのは、教育行政が一内閣に左右されることにつながる恐れがある。そのバランスが重要だ。急ぐべきものとじっくり議論すべきものを「教育的視点」で区別していく必要があろう。

第7・8期中教審の経験を経て、第9期中教審の果たすべき責任は重い。

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