(注目の教育時事を読む)第36回 部活動指導員の制度化

藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

 

教員の多忙解消はここから 教育上の配慮や財源が問題

◇負担大幅減の可能性がある◆

本紙3月20日付は、「4月から『部活動指導員』制度化」の見出しの下、学校教育法施行規則が一部改正されて「部活動指導員」が制度化され、学校外の指導者が部活動の指導や大会などの引率に当たるのを可能にしたことを報じている。

また、同日付では「部活の専門スタッフ拡充を」の見出しの下、全日本中学校長会のチーム学校についての調査で、今後さらに拡充してほしい専門スタッフは「部活動に関わる専門スタッフ」であったことも報じられている。

1990年代くらいから、中学・高校の部活動の危機は繰り返し指摘されてきた。背景には、少子化や教員の多忙がある。少子化で学校規模が小さくなり、学校の統廃合が進んだこともあって、各学校や地域で多様な部活動の維持が困難になって久しい。また教員の多忙化が進み、教員の部活動負担の軽減が強く求められるようになっている。

こうしたことを背景に、平成27年5月、教育再生実行会議は第七次提言で、スクールカウンセラー、部活動指導員、学校司書、ICT支援員などの配置を行うことによって教員の負担を軽減すべきと述べ、同年12月の中教審「チーム学校」答申へとつながり、今回の「部活動指導員」制度化へと至った。

これまで顧問としての部活動指導は当該校の教員にのみ認められてきたが、制度化により、外部の「部活動指導員」が顧問として部活動指導に当たれるようになるので、教員を顧問から外せるようになったり、教員が大会などに生徒を引率する必要がなくなったりするため、教員の負担を大幅に減らせる可能性がある。

◆解決が必要な多くの問題がある◇

だが、教員の負担を減らすためには、解決が必要な問題が多く残されている。以下、挙げていこう。

第一に、部活動指導員を雇用する予算の問題がある。平成29年4月から部活動指導員制度が施行されるものの、文科省がこのために特別の予算をつける様子はなく、公立学校の場合、部活動指導員の人件費は地方自治体が捻出する必要がある。財政難の自治体が多い中で、財源の確保は難題であろう。無償のボランティアで部活動指導員を確保する動きが広がる可能性もある。

第二に、部活動指導員の人材確保の問題がある。土日祝日の活動はともかく、部活動は基本的に平日の日中にも行われるので、そうした時間帯に時間がとれる人を確保するのは容易ではないと考えられる。

第三に、部活動指導員の指導力の問題がある。技術指導ができる人の確保も難しいかもしれないが、部活動指導における教育上の配慮をどのように担保するかは大きな課題だ。部活動に関してはこれまでも、体罰を含む過剰な指導、部活動内のいじめやハラスメントなどの問題が生じている。外部の指導者に委ねた場合にこうした問題に適切に配慮できるのか、不安が残る。

部活動指導員制度を有効に機能させるためには、こうした問題を解決していく必要がある。

◇参考にすべき先行事例がある◆

もちろん、すでにヒントはある。これまで各地で、部活動の指導を外部委託する試みがなされており、こうした試みから示唆を得ることができる。

名古屋市では、平成16年度から部活動外部顧問制度を設け、地域の指導者などが中学校の部活動を教員に代わって指導できる制度を設け、非常勤特別職として予算の人件費も確保している。今回の部活動指導員制度のモデルともいわれており、今後、各地で取り組みを進める際に参考にする必要があるだろう。

大阪市教育委員会では、平成27年度、民間事業者を活用した部活指導の事業を実施した。この事業では、民間の企業・団体に対して指導者の派遣を委託している。学校が個人に対して指導を委託するのではなく、企業・団体に委託することによって、企業・団体が人材確保や指導力向上に責任を負うことになるので、教育委員会や学校が解決すべき問題は限定される。

静岡県磐田市では平成28年度から、通う学校に希望する部活動がない中学生が地域スポーツクラブで活動できる「磐田スポーツ部活」という取り組みを進めている。28年度にはラグビー部と陸上競技部が設けられ、活動を始めた。学校から活動場所までの移動は必要になるが、社会人チームとの連携もなされており、今後の発展が期待される。

部活動指導員制度ができたのは、教員の多忙解消策として重要な一歩である。しかし、この制度を有効に活用できるかどうかは、各地域での取り組みにかかっている。先行事例を参考に、地域の特性に合った取り組みが進められるのを期待したい。もちろん、教員の多忙解消には他にも多くの課題が残されており、ようやく出発点に立てたかどうかという認識を忘れてはいけない。


注目教育時事本紙ニュース要約

松野博一文科相は3月14日の閣議後会見で、学校教育法施行規則の一部改正の省令を公布し、4月1日から部活動指導員を制度化すると発表した。教職員の部活動の負担軽減を視野に、外部人材による中学・高校の部活動指導や大会への引率などを可能にする。同指導員制度は、学校の教育計画と校長の監督の下で、学校外の指導者が中学校や高校の部活動の技術指導や大会引率などに携われるようにしたもの。

文科相は、教員の勤務に関する国際比較調査の結果を指摘。日本の教員の多忙の要因になっている授業以外の校務と部活動指導の重さを課題に挙げた。その上で、この制度化によって、部活動での生徒の技術向上と教員の働き方改革の両面を進めていきたいと述べた。

指導員が単独で生徒を引率できるようにするために、中体連や高体連、高野連などの大会主催団体と関係規定の改正を行う必要がある。そのために、文科省は、施行通知に合わせて、各団体に適切な対応への協力を依頼する。また同指導員に係る規則整備や研修の実施なども掲げている。

同制度は、平成27年12月に中教審が出した「チーム学校」答申の中で創設が提言された。文科省は今年1月、「学校現場における業務の適正化に向けて」の通知で、部活動の適正化推進と教員の部活動負担を大胆に減らす取り組みを示唆している。

この通知では、29年度中に適切な練習時間や休養日設定を含むガイドラインを策定するなどを示している。そのための総合的な実態調査も行うという。

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