(教育時事論評)研究室の窓から 第23回 カリキュラム・デザイン

国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

 

実現可能なモデルを

前回(3月)の小論を執筆した直後に、田村学文科省初中局視学官から、近刊『カリキュラム・マネジメント入門』が恵贈された。この書で氏は、独自のカリキュラム・マネジメント論を展開している。4月から國學院大學教授となった氏は、中教審答申のカリキュラム・マネジメントとは別の考え方を提起している。

答申は、(1)各教科等の教育内容を相互の関係で捉え教科横断的な視点で教育内容を配列する(2)教育課程を編成、実施、評価するPDCAサイクルを確立する(3)人的・物的資源を活用する――の3つの側面でカリキュラム・マネジメントを説明している。

それに対して氏は、最初の側面を「カリキュラム・デザイン」と表現し、それを(1)全体計画の階層(2)単元配列表の階層(3)単元計画の階層――の3つで説明し、それらを通じて「授業デザイン」するのを求めている。

単元配列表は年間指導計画と称される場合が多く、年間指導計画の中の各単元の計画は、指導案作成に関連して作成される場合が多い(年間指導計画を作成していても、単元計画を全単元に関して作成している学校は少ない)。

「授業デザイン」とは、1時間ごとの指導案である。田村論は、従来から各学校で行われている年間指導計画―単元計画―指導案の流れを、カリキュラム・デザインと授業デザインの語で説明している(授業デザインを、カリキュラム・デザインに含めてもいいのではと思うが)。

中教審のカリキュラム・マネジメント論は、教科横断的配列と教育課程のPDCA、人的・物的資源の整備の3つを並列的に扱っている。それに対して田村論は、最初の側面の重要性を示し、それをカリキュラム・デザインという、氏独自の言葉で説明している。この論調は同意できるものであるし、カリキュラム・マネジメントが教育課程の中身の問題なのか、組織運営の問題なのかと疑問を抱く人々に明確な指針を示すものであろう。

田村論はカリキュラム・デザインとの語で、年間指導計画において全体計画と単元配列表作成の重要性を訴えている。この観点は、新しい学習指導要領が教科横断的な視点を重視しているため必要であるが、これが現場でどの程度の期待感と負担感で受け止められるか、危惧がある。
『カリキュラム・マネジメント入門』では、新潟県上越市立大手町小学校や上越教育大学附属小学校など、氏がこれまで総合的な学習の研究を共に進めてきた学校関係者が、カリキュラム・デザインの具体例を紹介している。

これらが実際に作成されたカリキュラム・デザインの数々であるのは疑いないのだが、総合的な学習に取り組むレベルの高い研究校でできていることを、通常の公立小学校にも取り組むよう求めているように感じられる。私が国の学校評価事業で訪問した学校には、年間指導計画と称して教科書会社が作成したモデル計画のコピーをそのまま提出した学校があった。年間授業時数の資料を求めたら、学校教育法施行規則の別表を出した学校があった。そのような学校に水準の高い研究校と同じカリキュラム・マネジメントを求めても無理だ。まずは何に取り組まないといけないか、学校の状態に応じた明確なメルクマールが必要だ。

1時間の研究授業に関する指導案を、数十ページかけて詳細に記述していても、肝心の授業がそれについていっていない学校がある。過去にそのような批判が出て指導案を書くのをやめた学校があるが、こちらの授業はなお感心しない場合が多い。どのような授業デザインが有効かというレベルで現場は試行錯誤している。

カリキュラム・マネジメントは、ハイレベルなものを求めるだけでなく、それぞれの学校にふさわしい、実現可能なモデルを示す必要がある。