(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) インクルーシブ教育の理念

通常学級担任なども理解を

文科省は、特別支援学校(小学部・中学部)の次期学習指導要領案を、幼稚部教育要領案とともに公表した(電子版3月17日付、紙面3月27日付既報)。今、この改訂が持つ意味は、何だろうか。

■特別支援教育をめぐる状況

特別支援学校の学習指導要領に関心を持つのは、特別支援学校の教員や特別支援学級の担任などを除けば少ないだろう。一般報道でも、小・中学校の新学習指導要領に比べれば格段に小さな扱いだったが、これからの時代の教員にとって、特別支援教育の内容を知っておくのは無駄ではない。というよりも積極的に知っておく必要がある。

まず指摘しておきたいのが、特別支援教育をめぐる状況の変化だ。平成19年度から「特殊教育」が「特別支援教育」に改編され、新たに発達障害も対象となった。これにより一般の小・中学校における通級指導の対象は、小学校の場合、平成18年度に3万9764人だったものが、28年度には8万7928人と2倍以上に増えている。特別支援教育コーディネーターや校内委員会の設置などもほとんどの学校で行われるようになった。また25年度から就学先決定の仕組みが見直され、保護者の意向が尊重されるようになり、障害がある児童生徒が一般の小・中学校に入学してくるケースが増えている。背景には、障害の有無にかかわらず、共に学ぶ「インクルーシブ教育」の理念がある。

忘れてはならないのが、4月から障害者差別解消法が施行され、国公立学校に障害のある児童生徒への「合理的配慮」の提供が義務付けられたことだ。また「義務教育ではない」との理由で、実的に特別支援教育と無関係だった高校でも、30年度から通級指導が制度化されることになっている。

■教育課程との連続性を重視

学習指導要領改訂についての中教審への諮問を見ると、インクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、全ての学校で特別支援教育を進めるとの視点が盛り込まれており、一般の小・中学校も特別支援教育と決して無関係でないのが示されている。これに対応して小・中学校の新学習指導要領では、総則の中に示された「特別な配慮を必要とする児童(生徒)への指導」の記述が大きく変更されている。

また特別支援教育の学習指導要領改訂案を見ると、一般の小・中学校の教育との連続性への配慮を求める記述が多いのが注目される。これは小・中学校から特別支援学校へ、または特別支援学校から小・中学校へと、障害のある子供たちの流動性が高まっている事態への配慮であるのがうかがえる。連続性を保つために一般の小・中学校には、障害のある子供に対する個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成と活用の徹底、きちんと機能する特別支援教育コーディネーターの任命などが求められる。

■注目される自立活動

特別支援教育の学習指導要領は、特例などプロパーの内容が多く、一般には分かりづらい。

そこで、一般の小・中学校で注目すべきは「キャリア教育の充実」と「卒業後の視点を大切にしたカリキュラム・マネジメント」だろう。特別支援教育の目標は、あくまで障害のある子供たちの社会的自立であることを示してる。

これに関連して松野文科相は4月7日、大臣メッセージを発し、障害のある子供たちへの対応が、学校教育施策と学校卒業後の福祉施策、労働施策に分離している状況を批判し、これからは教育施策、福祉施策、労働施策を連動していく必要があると提言。これを「特別支援教育の生涯学習化」と名付けた。

同時に学習指導要領の「自立活動」の内容にも留意しておくべきだろう。自立活動の内容には、発達障害をはじめとする多様な障害への指導の充実を図るための視点と内容が盛り込まれている。通常学級にも特別な支援を必要する子供が多数在籍する現在、小・中学校の一般教員にとっても、自立活動の知識は必要不可欠だといえる。

■アクティブ・ラーニング(AL)の必要性

この他、見逃せないのが、知的障害のある子供に対するALの必要性を明記している点だ。学校現場では知的障害のある子供に対してALが可能か疑問視する声も多いが、新学習指導要領は、特別支援教育においても思考力・判断力・表現力の育成を重視するという「教科観の転換」を図っていることを一般の教員も認識しておくべきだ。

インクルーシブ教育の理念が広がる中で、通常学級担任などにも特別支援教育の学習指導要領への理解が求められているといえる。