(教育時事論評)研究室の窓から 第24回 教員勤務実態を調査

国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

変えなければ変わらない

平成27年度の教員勤務実態調査が公表された。前回実施の平成18年度調査に比べても勤務時間が増加し、週60時間以上勤務する教員が小学校で3割以上、中学校で5割以上いる実態が明らかになった。

一般紙では「部活、授業増響く」「脱ゆとりで授業増」などの見出しが並んでいた。教員の1日あたり勤務時間は小・中学校共に11時間超となっている。朝7時に出勤し夜7時に帰る毎日だろう。学校によっては、教員たちが学校を離れる時間が夜の9時や10時になるところもある。

このように多忙になっている実態が明らかになった以上、事実上の超過勤務手当である教職調整額を増やすか、教員数を増加するしかない。だが、その前にかたづけたい教員の勤務態様がある。

文部科学省の若手職員で県教育委員会の課長として出向し、勤務時間順守を部下と自分に課した人がいる。都道府県の教育委員会は不夜城といわれる時期があったが、近年は早めに勤務を切り上げる傾向にある。それでも、正規の勤務時間の中で業務を遂行するのは難しいのではと思っていたが、何とかできたそうだ。その彼に聞いてみた。

「仕事は80点でいいんです。学校の先生たちは100点の仕事をしようとするから、時間がかかってしまうんです」とのことだった。無論、ミスが許されない100点の仕事が要求される業務もある。しかし、80点でいい業務に100点のエネルギーを注いでしまうのは時間の無駄である。時間をかけて100点にするよりも80点の状態で早く仕上げた方が、顧客である県民や議員の満足度は高まる。

そのような意識改革に取り組むことで、効率的な業務運営が可能になったらしい。

ある教育委員会指導主事の話。議会の質問通告は3日前になっている。中央省庁が前日の通告になっているのに比べると、余裕がありそうだが、「その3日間をすべて答弁書作成に注ぐ」そうだ。当然、本来の学校指導業務がおろそかになる。

ある中学校に教務主任として赴任した教員の話。勤務は深夜に及んでいる。なぜそのように遅くなってしまうのか。教材業者との連絡など些末な仕事でも「これは教務の仕事ですから、といって回されます」「外部からの電話を誰もとろうとしません。とったら苦情の電話。それに対応していたら、どんどん時間が経ってしまいます」

ある学校の総合的な学習のカリキュラムがおかしいと思い、調べてみたら、過去に35時間で実施していた内容を16時間で実施するようにしていた。総合的な学習の年間計画に新たな単元を加えるために従来の単元計画を組み直したのだが、実施内容は35時間の時のものを踏襲したために慌ただしいカリキュラムになっていた。

そのことを、カリキュラムを変えた年度の担当者は知っているはずだが、いったん組み直されたカリキュラムはそのまま次年度に引き継がれ、無自覚的に慌ただしい総合的な学習が実施されることになっていた。

学校や教育委員会では、かくのごとく非効率、非合理な仕事が行われている。私が第三者的に見て非効率に思えるカリキュラムや業務の進め方を変えるように提言しても、「今までこのようにやってきましたので」という理由で却下される場合が多い。そしてその学校の子供の状況に応じて「このようなことをやってみてはいかがでしょうか」と提案しても、「忙しいのでそれはできません」と却下される。

このような教員のメンタリティーは「子供を大事にする」という価値観では莫大な効果を発揮する。日本の教育が先進国でトップの成績を示しているのは、教員が共有している「子供第一」の価値観が大きい。

しかしながら、変えないといけない部分もある。そうしないと、限られた公的リソースを教育の世界に注入する意思決定に至るのは、難しいだろう。