(教育時事論評)研究室の窓から 第25回 政治と行政の関係

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国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

調整システムの刷新が必要

村松岐夫京都大学名誉教授を中心とする研究グループが、昭和51年から平成13年にかけて、霞ヶ関の行政官を対象に実施した調査がある。対面調査の中で質問紙への回答も求めており、行政官の意識が変容する傾向が明らかになっている。

調査を始めた時点から昭和52年にかけて収集したデータでは、「国の政策を決めるのに最も力を持っている者」として、最も回答率の高かったのは「政党」で45%だった。次いで「行政官僚」が41%、次に「民間諸アクター」14%となっている。

それが、平成13年に得たデータでは順位が変わらないものの、「政党」が61%と回答率を高め、「行政官僚」は21%、「民間諸アクター」は18%となっている。

「府省の政策形成に影響力を持っている者」として、昭和60年から61年にかけて収集したデータでは「局長」が最も多くて52%、次いで「大臣」17%、「課長」15%となっている。

それが平成13年に収集したデータでは順位が変わり、最も支持率が高かったのが「大臣」57%、次いで「局長」30%、「課長」7%となっている。

村松グループが明らかにしたのは、政策上の意思決定に関する行政官の地位が徐々に低下し、政治家の地位が上昇しつつある傾向だ。

村松調査は国会議員も対象にしており、「大臣は誰の意見を重視するか」という問いに、1980年(昭和55年)代の調査では、「上級公務員」が36%で最も高かったのが、2000年(平成12年)代の調査では、「大臣自身」が74%で最も高くなっている。

政治と行政の関係は、かくのごとく、変容しつつあるのだ。

私は立場上、文部科学省の幹部と交流する機会が多い。OBになった方との交流もある。特にOBの方々が最近よく口にされるのが、現役への不満だ。

現役本人に直接おっしゃっていただきたいのだが、私のような立場の者を相手にするのがちょうど話しやすいのだろう。

「自分が現役の頃は大臣にきちんと説明し、理解していただいた。しかるに、今の現役は何だ」という話を、一人ならず複数のOBから聞く機会があった。

なぜそうなっているのだろうか、と疑問に思い、調べて行き着いたのが、村松調査である。

政治と行政の関係の変容は、国だけでなく、地方でも見られる。私は業務上、教育委員会の関係者と接する機会も多いが、教育委員会にとっては、首長の位置付けが大きくなりつつある。地教行法の改正以前から、首長が教育に直接意見する場面は見られ、教育への影響力は拡大傾向にある。

なぜそのようになってきたのか。

先行研究で指摘されているのは、小選挙区制、行政施策の調整システムとしての内閣官房の肥大化、省庁の管理システムの変更などさまざまである。原因究明も重要だが、この新しい潮流の中で、行政機関はどう動かないといけないのか。

おそらくは、政と官という枠組みそのものをも見直す視点が必要だろう。また旧来のシステムの中で暗黙的に処理されていた権力の偏重に対する調整システムも、おそらくは、新たに構築し直さないといけないはずだ。

日本の行政機関は、諸外国に比べて文脈型機能が重視されていると指摘する先行研究もある。

上司との徒弟制的な交流の中で、職場の暗黙的な意思決定文化における調整能力をより多く習得した行政官が、同僚との競争に勝ち残りやすいという役所文化は徐々に弱くなりつつある。だが、まだまだ根強い。民間企業で重視されつつある問題解決能力や論理的思考力よりも、古い調整能力が重視されている。組織のシステムだけではない、人材育成システムも刷新の必要がある。