(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 教科書「を」から「で」に転換

3本柱で検定基準改善に向かう

文科省の教科用図書検定調査審議会は、次期学習指導要領を見据えた教科書検定基準に関する報告案をまとめた(本紙電子版5月23日、紙版5月29日付既報)。今後教科書とそれを使った授業は、どう変わるのだろうか。

■AL対応型の教科書

報告案は、(1)次期学習指導要領の実施を見据えた教科書検定基準の改善(2)デジタル教科書導入の検討に関連した検定基準の改善(3)検定手続きを改善するための検定基準の改善――の3つの柱からなっている。

まず(1)は、次期学習指導要領に対応した教科書をどう検定するかを示しており、学校現場に最も大きな影響を与える。次期学習指導要領は「何を教えるか」と同時に「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」が重視される。コンテンツ型からコンピテンシー型への転換であり、初の本格的な21世紀対応型の学習指導要領となる。

ここで重視されているのが「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)だ。

報告書は、この学びを行うためには、「記述された内容はすべて教える」から「個々の児童生徒の理解の程度に応じた指導の充実に資する教科書」「学ぶ意欲の向上に資する教科書」「自学自習に資する教科書」へと教科書観の転換を求めている。

具体的には、単元としてのまとまりを重視しながら、子供たちの振り返りやグループで対話するなどの場面をどこに設定するかなど、「子供が考える場面と教員が教える場面をどのように組み立てるか」の視点が教科書に求められるとしている。つまり、次期学習指導要領の教科書は、その使用に際して、ALの実施が前提になっているというわけだ。当然、従来のような「教科書を教える」授業は通用せず、「教科書で教える」が必要となる。これまで、学習指導要領が改訂されてもあまり読まず、新しい教科書の内容がどう変わったかだけを見て授業をする教員が、実際には少なくなかった。

しかし、教科書そのものがALに対応した構成を取るとなれば、新しい学習指導要領を十分に理解しておくことが、これからの教員に求められる。

その一方で報告案は「教科書の内容が学校における型にはまった指導を誘発するようなものとならないよう留意する」とも釘を刺している。

次期学習指導要領に対応した教科書は、これまでの教科書のイメージを大きく変えるものとなるのは間違いなさそうだ。

■デジタル教科書への対応も

もう一つ注目されるのは、デジタル教科書について、初めて教科書検定での対応を明記した点だ。動画や音声を主体とするデジタル教科書について報告案は、検定するのは困難として「検定を経ることを要しない教材」と位置付けた。一見すると、デジタル教科書が教材に格下げされたように見えるが、「検定を経ることを要しない」と制度的に明確化されたことにより、今後、タブレット型パソコンなどで利用するデジタル教科書が、爆発的に増えそうだ。

またネット上の動画や画像に誘導するURLとQRコードの教科書への記載は、現行では規定がないが、報告案は「教科書発行者自身のサイトに限ることが適当」として限定的に扱うよう求めている。ただ、教科書発行者のサイトが学習上有益なサイトとリンクを張るのは認めるとしている。

一方、英語の教科書には、音声教材を加えるのが有効であることから、URLとQRコードの「積極的な記載を許容する」としている。その場合の検定は音声がおおむね教科書の内容(本文やスクリプト)に沿っているかだけを審査する。デジタル教科書の進展で、英語の授業風景は大きく変わるだろう。

■不正行為は審査せず不合格

報告案の柱の3つ目は、謝礼を渡して検定中の教科書を教員に見せていた問題を受けて、不正行為をした教科書発行者の教科書を、内容の審査をせずに検定不合格とする制度を導入するのが狙い。

また小学校で必修化されるプログラミング教育に対応して、プログラミング教育に関する検定基準を整備する。この他、英語教科書では、学習する語彙を実際のコミュニケーションで活用できるよう配慮することを検定基準で規定するとしている。

新しい教科書では、「教科書を教える授業」から「教科書で教える授業」へと転換することで、全教員にALの実施が求められることになりそうだ。