(注目の教育時事を読む)第39回 新学習指導要領への移行措置

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

カリキュラム・マネジメント
今からでも「混合戦略」に舵を
◇実施年度の時数変動に疑問がある◆

本紙6月1日付(電子版は5月26日付)は、「次期指導要領の移行措置案 小の外国語の学習枠を配慮」の見出しで、新学習指導要領完全実施に向けた移行措置案が公表され、パブリックコメントの募集が始まったのを報じた(6月25日に締め切った)。今年3月に小・中学校の次期学習指導要領が告示され、全面実施になるまでの期間(小学校では30~31年度、中学校では30~32年度)の移行措置の在り方が公表されたこととなる。

今回の移行措置では、小学校での外国語の扱いが注目されている。現行学習指導要領下で外国語活動の時数は、5・6年生で各35時間である。これが、新学習指導要領完全実施下では、外国語活動の時数が3・4年生で各35時間、外国語科の時数が5・6年生で各70時間となるので、外国語関係の時間数は3~6年生で各35時間増えることになる。今回発表された移行措置案では、30年度と31年度に外国語活動を3・4年生各15時間、5・6年生各50時間と、現行より15時間ずつ増やすこととしている。総授業時数の増が避けられるよう、移行措置期間中は総合的な学習の時間数を年間15時間まで減らすことが認められている。総合的な学習の時数は学習指導要領改訂前後で不変(3~6年生各70時間)であるため、一時的に時間を減らしても、32年度から時数を70時間に戻す必要がある点に注意が必要だ。

移行措置における最大の問題が、この点である。教員の多忙が問題になっている中で、30年度から授業総時数を増やそうという学校はあまり多くないだろう。となれば、総合的な学習が削られ、外国語関係の時間に充てられることとなる。そうなれば、地域と連携して毎年取り組んできた活動等が縮小、あるいは中止となり、継続性が失われることとなる。2年後にまた時間数が増えても、増えた時間を充実したものにできるか、疑わしい。総合的な学習の時数を一時的に減らすのを促すような今回の移行措置は、疑問である。

◆年間15時間増は週当たり20分弱◇

時数を増やすのが難しいとの認識が広がっているようだが、45分授業の年間15時間増は、年間35週で考えれば週当たり20分弱である。週2回、10分間の外国語の時間を設ければ、年間15時間増に対応するのは可能だ。静岡県吉田町では来年度から夏休みを10日程度に短縮するという報道が注目されているが、そこまでしなくても、時間割は組めるはずである。なお、同町の場合には、教員の多忙対策という趣旨もあるようだが、子供が夏休みならではの経験がしづらくなる上に、教員も連続した長期の有給休暇が取りづらくなると考えられるので、もっと慎重に検討する必要があると思われる。

移行措置を全体として見れば、教科書の対応が不要である総則、総合的な学習、特別活動については30年度から新学習指導要領によることとなっており、各教科については、教科によって対応が分かれている。

小学校については、移行措置への対応について、すぐにでも検討を開始すべきであろう。前述のように、30年度から外国語の時間増が必要である上に、道徳が「特別の教科」となって新学習指導要領による対応が全面実施となる。教科で対応が必要な部分も含め、30年度から教育課程の大幅な変更が必要となる上に、外国語や道徳の指導に関しては教員が研修等で学んで準備することも不可欠だ。学校レベル、自治体レベルで、早めに対応の検討を始めるべきであろう。

他方、中学校については、30年度に必ず対応すべきことはあまり多くない。道徳の「特別の教科」化は31年度本格実施であり、教科書の内容もまだ明らかになっていない。基本的には、各教科で対応可になる。

◇教育課程を持続可能なものに◆

だが、小・中学校ともに注意が必要な点がある。それは、30年度から新学習指導要領によるとされる総則の中に、カリキュラム・マネジメントが含まれていることだ。

実態に応じて必要な資源を確保して教育課程を組み立て、評価し、改善することによって「組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上」を図ることが、今回初めて学習指導要領に明記され、早くも30年度からこうした取り組みが求められると解されるのである。

地方自治体の財政難、教員の多忙、管理職やその予備軍の中堅教員の不足といった状況を踏まえれば、各学校の教育課程運営の在り方について抜本的な改善が必要である。

今回の移行措置は、各学校や地域がカリキュラム・マネジメントのしくみを構築し、学校の教育課程を持続可能なものにする時期として考えられるべきであろう。

新学習指導要領が求めているのは、学校が自ら柔軟に教育課程を運営できるようにすることであるはずだ。移行措置期間は、このための貴重な準備期間だと解されるべきである。