(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 何を目指すか教員の働き方改革

真の狙いは従来型学校像の変革

松野博一文科相は6月22日、「学校における働き方改革に関する総合的な方策」の検討を中教審に諮問した(本紙電子版6月22日付、紙版7月3日付既報)。教員の長時間勤務が「看過できない深刻な状況」であるとして、教員勤務の改善などを求めた。中教審は業務改善の有効策を打ち出せるのだろうか。そのためには何が必要なのか。

■予算の裏付けなしでは決め手に欠ける

文科省公立学校教員勤務実態調査によると、教員は、厚労省が過労死ラインとする月80時間以上の時間外勤務をしている。その割合は小学校で約3割、中学校で約6割に上る。数字だけを見ると、学校は「ブラック職場」そのものだが、普通なら学校現場の業務改善の文科省通知が出るだけで終わったろう。

ところが、大手広告会社の新入社員の過労死自殺を契機に、長時間労働が社会問題となり、安倍内閣は「働き方改革」を掲げざるを得なくなった。このため政府の「働き方改革」の一環として教員の業務改善が審議されることになったわけだ。

しかし、有効な手段が打ち出せるのだろうか。現在の教員の長時間労働は、本質的に学校現場の人手不足が原因だ。それを解消するには、教員数を大幅に増やす定数改善しかないが、国の財政事情を考えると実現は極めて困難だ。さらに教員に時間外手当を支給すれば、教員の不満は幾分解消されようが、膨大な額になる時間外手当の支給を財政当局が認めるはずがない。

■学校像、教員像の転換を

予算を伴う改革が難しいとなれば、中教審でも打てる手は限られてくる。実際、諮問の検討事項を見ると「チーム学校」を前提とした教員と専門スタッフの役割分担の明確化をはじめとして「学校が担うべき業務の在り方」「教員が子供の指導に使命感を持ってより専念できる学校の管理運営体制の在り方」などが課題として挙がっている。

これらの検討課題を具体化させる方策は、ICTの活用や部活休養日の設定など「地味なもの」ばかりだ。正直なところ、教員の業務改善にどれだけの効果があるのかは疑わしい。

では中教審の審議は無駄か。そうではない。諮問内容をよく見ると「チーム学校」、地域学校協働活動など「地域とともにある学校」や、教員養成・研修の改革など過去の中教審答申を踏まえているのが分かる。そこで共通して求められているのは教員だけが教育を担うという従来の学校像、教員像の転換だ。

■教務改善の本当の狙い

従来の日本の学校教育は、教職員の献身で成り立ってきたといってよい。だが、これは「長時間勤務につながりやすい面もある」と中教審諮問も指摘している。現在の働き方を教員が維持するならば、大幅な教職員定数改善以外に負担を軽減する方法はない。しかし、これまでの学校像、教員像を転換すれば、多様な方法で業務改善は可能になってくる。重要なのは、教員自身が学校像、教員像を変えること。それを支えている「学校文化」や「教員文化」を壊していかなければならない。専門スタッフや地域との協働に対して「話し合いや調整が面倒だから嫌いだ」と言っていれば、いつまでたっても効果的な働き方改革は実現しないだろう。

今回の中教審への諮問は、教員の時間外勤務を削減するのが本当の目的ではなく、働き方改革の視点を通して、これまでの学校像、教員像を壊していくことにあるのかもしれない。

■非正規教員の扱いも課題に

また諮問事項にはないが、中教審審議の中で問題になりそうなのが、臨時任用などの非正規教員問題だ。非正規教員は特別職の地方公務員という身分で、賞与も退職金も出ない。給与水準は正規教員より低く抑えられている。採用は原則1年で、共済年金などの対象にならないよう、連続して任用する際にわざと「空白の1日」を設け、形式上、連続任用にならないようにしている都道府県もある。

政府の働き方改革では、長時間労働の是正と同時に非正規雇用者の処遇改善も課題となっており「同一労働・同一賃金」の実現を掲げている。公務員も地方公務員法等の改正で「会計年度任用職員」との身分を新設し、非正規公務員に賞与や退職金を支給できるようにしている。地方公務員の中で最も非正規職員が多いのは公立学校だ。臨時任用教員などにボーナスや退職金を支払えば、都道府県教委は大きな影響を受ける。文科省は「非常勤の教員も地方公務員なので(制度改正の対象に)含まれる」(財務課)と説明している。

もしかしたら、業務改善などよりも、こちらのほうが学校現場にとって、大きな影響を及ぼす可能性がありそうだ。