(注目の教育時事を読む)第40回 教職課程コアカリキュラム

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

「混合戦略」が欠如している
変化への対応に不可欠だが
◇解釈の上に成り立っていた実態を変える◆

本紙電子版7月10日付(紙版は7月17日付)は、「教職課程コアカリに賛否 教員養成関係者らがシンポ」の見出しで、7月9日に開かれた公開シンポジウムでの議論を報じている。

教職課程コアカリキュラムは、平成27年中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」で、関係者が共同で作成するのが必要とされた「大学が教職課程を編成するに当たり参考とする指針」のことであり、「全国すべての大学の教職課程で共通的に修得すべき資質能力を示すものである」と説明されている。今年5月から6月にかけて意見公募がなされていた。

公表された教職課程コアカリキュラム案では、現行の「教職に関する科目」(教職実践演習を除く)について、科目ごとの「全体目標」と、小項目ごとの「一般目標」「到達目標」が列挙されている。これらは目標の形をとっているものの、実際には大学の授業で扱われるべき内容項目を示しているといえる。

これまで「教職に関する科目」は、教育職員免許法施行規則で各科目に含めることが必要な事項が「教職の意義及び教員の役割」「各教科の指導法」などのように定められていただけであった。このため実態としては、各事項について担当教員が自分なりに解釈して授業を行うしかなかった。おそらく、担当教員が得意な部分を大きく扱い、他はほとんど扱わないなどという事態があったと思われる。

当然ながら、必要な内容が授業で扱われないのであれば、教員養成制度の根幹が揺らぎかねない。だから、課程認定はかなり丁寧になされるようになっており、授業のシラバスの細部にまで踏み込み、必要な項目が扱われているかを確認し、不足があれば指摘されてきた。だが、何をもって各項目が扱われているといえるかについては明確な基準がなかったため、大学側も文科省側も、対応に苦労する部分が多かったと推察される。

◇横並びで独自性を出すのが困難に◆

こうした状況を踏まえれば、扱われるべき事項をより詳細に定めようとの議論が出るのは当然で、大学側でも文科省側でも、教職課程コアカリキュラムに頼って対応しようとすることとなるだろう。教職課程コアカリキュラム案で示されている各授業科目の目標は、全体としてよく考えられているといえよう。これに従って授業がなされるとしてもあまり無理はないと思われる。教職課程コアカリキュラムが作成されることは、従来の教員養成制度を前提とすれば、当然の帰結だったと考えられる。

だが、記事によれば、登壇者から批判的な意見が出された。記事を見る限り、批判的な意見の中心は、第一に今後求められる教員の専門性についての議論が不十分なまま教職課程コアカリキュラムが定められることへの懸念、第二に教員養成に関する国の統制が強くなることへの懸念である。

第一の点については「ニワトリが先か卵が先か」の問題のように思われる。確かに、教員の専門性についての議論は不十分だったかもしれないが、教職課程コアカリキュラムの策定は議論の契機となるかもしれない。議論が進めば、教職課程コアカリキュラムを修正すればよい。議論が熟すのを待っていたら、対応がどんどん遅くなってしまう。

第二の点は深刻である。教職課程コアカリキュラムの策定だけでなく、今回の教育職員免許法施行規則の改正では、教職課程における基準が非常に細かくなり、大学の裁量が極端に小さくなっている。大学の立場から見れば、施行規則や教職課程コアカリキュラムの要求に従うことに精一杯で、学生たちに必要な授業科目を大学の判断で充実させることが難しい。結局、どこの大学でも教職課程コアカリキュラムをなぞった授業科目が並ぶこととなり、独自の方針で教員を養成するのが困難となる。

◇複数の異なる方法を組み合わせる◆

文科省自身が学習指導要領で記しているようにAI(人工知能)の普及等で今後、社会は大きく変化すると予測されている。こうした中で20年後、30年後の学校教育がどうなるかは不透明で、これから教員になる者には変化への対応が期待される。だが、教員が画一的な教育しか受けてこなかったとしたら、状況によっては大多数の教員が変化に適切に対応できず、学校教育が大きな困難に陥ってしまう恐れがある。変化への対応に必要なのは複数の異なる方法を組み合わせる「混合戦略」であるはずだが、今般の教員養成制度改革は真逆の方向を向いている。

本来、各大学が独自色を出して、国際経験が豊富な教員、ICTに強い教員、地域振興で汗を流してきた教員、インクルーシブ教育に強い教員、児童福祉に強い教員等の個性ある教員を養成し、教委や学校が状況に応じて多様な教員を適切なバランスで配置できるようにするべきではないか。

今後、せめて地域レベルで、「混合戦略」を志向した教員養成が議論されることを望みたい。

タイトルで「新学習指導要領への移行措置」とあるのは「教職課程コアカリキュラム」でした(2017.7.31)