(教育時事論評)研究室の窓から 第27回 PDCAで学校経営を安定

eye-catch_1024-768_chichibu国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官
千々布敏弥

秋田県と福井県―高学力の秘密

最近は指導主事相手の講演や研修の依頼をいただく機会が増えている。教師個人を相手にするよりも、組織を相手にしたいので大歓迎だ。依頼をいただいた委員会には、全国の状況とそれに比した秋田県、福井県の教育行政の特徴をお伝えしている。

両県の強みは、全県的に学校経営が安定していることだ。学校経営が教師の指導力を向上させている。どの教師でも一定水準以上の授業を行う力を備えているが故に、全県的に高い水準で学力調査の結果を示すことができる。なぜそれができるのか。

秋田県の場合、秋田メソッドといわれる指導方法を、県教委が主導して全県に広めたことが要因となっていることは明らかだろう。教育センターの研修で伝授するほか、教育事務所の訪問時にあらためて指導主事が教師たちに指導している。教育事務所指導主事は、毎年複数回協議会を開催し、県としての指導方針を確認している。

秋田県にはもう一つ強みがある。秋田メソッドの普及を強引に行っていないことだ。教委で秋田メソッドの普及に尽力した指導主事が校長になっている学校を訪問したが、予想通り、その学校では秋田メソッドの定着がいまひとつだった。校長は教育委員会に勤務していた当時から、「いかに教員が納得して変わっていくか」を意識していた。その学校でも校長は、秋田メソッドができていない教員に、強引な指導はしていない。「繰り返し、繰り返し、なんでめあてが必要なのかを説いているんです」。そう語り続ける校長の学校経営の中で、教員は自然に変わっていく。秋田県が秋田メソッドを普及させた秘訣は、その校長のように粘り強い姿勢が教委に共有されていたからではないかと捉えている。

秋田県の特徴が指導法にあるのに対し、福井県は学校経営に特徴がある。福井県は市町教育長と校長のつながりが強い。福井県で今まで会った教育長は、校長たちを生徒のように束ねるクラスの担任教師という印象。指導主事が年2回学校を訪問し、授業研究体制を引き上げるのと同時に、教育長は校長に対して学校経営の指導を行っている。

指導の方針が人によって異なっているのが面白い。ある教育長は、教育委員も同席の場で学校経営計画について説明を求めて、「計画が現実的でない」などと厳しく指導し、ある教育長は「相談したいときに来ればよい」とどっしりと構えている。頻繁に学校を訪問し、校長はおろか教師たちの個々の情報まで把握している教育長もいる。名人教師の学級経営が人によって異なっているのと同じように、福井の教育長はそれぞれ個性的な方法で校長たちをまとめ、引き上げている。

秋田・福井県の強みはかように異なるが、共通する要素もみられる。それが学校評価のPDCAサイクルだ。秋田県は教育事務所が中心になって、年に3回学校を訪問している。年度当初の学校訪問で学校の課題を指摘し、学校としての経営改善の状況をその後の訪問で確認している。教育事務所と市町村教委は連携し、年度当初に観察された学校の課題がどう改善されたかという観点で学校を訪問する。いわば学校関係者評価が県全体でシステム的に実施されているのが秋田県である。

福井県は市町村教委が計画的に訪問するが、秋田県に比べると学校評価的な意味合いは少ない。その代わり、学校単位の学校評価、自己評価のサイクルが明確に位置付いている。学校経営計画は前年度末に確定しており、4月からすぐにスタートする。夏休みは中間評価の時期だ。全国学力調査の結果は自己採点しているし、児童生徒アンケート、保護者アンケートも頻繁に取っている。データで得られた学校の課題を素早く分析して、2学期には学校経営計画を修正する。2~3月には1年の振り返りと次年度の学校経営計画の策定に費やす。

両県の高学力の秘訣は、学校評価のPDCAサイクルによる学校経営の安定にある。

関連記事