(注目の教育時事を読む)第41回 学校基本調査で速報値

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

地滑り的変化前の静けさか
義務教育学校に注目したい
◇注目点の3点◆

本紙電子版8月3日付(紙版8月21日付)は、「学校基本調査で速報値 女性教員過去最高の52%」の見出しで、同日、文部科学省から発表された学校基本調査速報値について報じている。

学校基本調査は昭和23年から実施されているもので、「学校に関する基本的事項を調査し、学校教育行政上の基礎資料を得ること」を目的としている。学校数、児童生徒数、教員数等の、まさに基礎的なデータを得ることができる。

本紙記事では、女性教員の割合が過去最高を更新した点を見出しにしており、他に女性管理職の割合が過去最高を更新した話題もある。だが、女性教員が52.0%であるのに対して女性管理職は26.9%であり、女性教員が多い割には管理職になる人が少ない傾向に、大きな変化はない。

他に、今回の速報値の注目点は3点ある。

第1に、幼稚園の数や園児数が目に見えて減っている一方で、幼保連携型認定こども園の数や園児数は大きく増えていることである。専業主婦家庭が減る中で、子供を夕方まで預かる機能のない幼稚園のニーズが大きく下がっていることが、データからもうかがえる。

第2に、小学校から高校までの学校数、児童生徒数、教員数が減っている一方で、大学については、大学数、学生数、教員数が増えていることである。少子化の影響で、初等中等教育は縮小傾向にあるのに対し、大学進学率が伸びているため大学は拡大傾向にある。なお、義務教育学校は少しずつ増えている。

第3に、特別支援学級や特別支援学校については、学級・学校数も児童生徒数も増えていることである。特別支援学級の数も特別支援学校の数も10年で1.5倍以上になっており、特別支援教育のニーズが増大しているのが分かる。

そして、インクルーシブ教育システムの構築がうたわれている中でも、通常学級での指導だけでなく、特別支援学級や特別支援学校の役割が重要であるのがうかがえる。

今回の速報値には、以上のような注目点があるわけだが、これらはある程度想定されていたものであり、特に意外な点はない。この状況は、嵐の前の静けさならぬ、地滑り的変化の前の静けさと考えるべきであろう。

◆人口が少ない地域から変容◇

日本の年齢別人口構成(昨年10月現在)を見ると、第2次ベビーブームの43歳の約200万人から徐々に少なくなり、30歳が約137万人、20歳が約123万人、10歳が約106万人と、若くなるに従い人口が減っているが、10歳未満は100万人前後で推移しており、子供の数の減少はいったん止まっている。しかし、これは一時的なもので、今後は、親世代の人口が減るのに伴い、また子供の数は減っていく。

しかも、子供の数の減少は、全国同じペースで進むわけではなく、もともと人口が少ないところから進んでいく。すでに各地で学校の統廃合が進んでいるが、今後しばらくすると、こうした動きはさらに加速していくはずだ。

現在は、まだ規模拡大傾向にある大学も、すぐに少子化の影響に直面する。すでに学生募集に苦慮している大学は多いが、こうした傾向はさらに進み、規模縮小や廃校に向かう大学が増えていくであろう。
当然、人口が減少する地方の大学ほど、状況は厳しくなるはずである。

今はまだ変化は緩やかであるが、今後、人口が少ない地域から地滑り的変化が生じるのは避けがたい。そうした地域では、従来の学校のイメージにこだわらず、子供たちへの教育システムの再構築を考える必要がある。

◇小中両方の教員免許で対応する道◆

この意味で、増加する義務教育学校には注目しておきたい。義務教育学校といっても、人口の多い都市部と人口の少ない地域とでは様相が大きく異なる。都市部では中1ギャップの解消等、小学校レベルと中学校レベルの接続に重きが置かれている場合が多いだろうが、人口の少ない地域では小学校や中学校の規模縮小への対応という点が中心である。

中学校には、各教科等を合わせて10種類の教員免許が必要である。生徒数の少ない学校は各学年1学級しかなく、同時に行われる授業は基本的に3クラスのみとなり、常に授業のない教員が多く出てしまうこととなる。義務教育学校にして小中両方の免許を持った教員を多く配置すれば、中学校とほぼ同じ教員数で小学校レベルにも対応できることとなる。

小中両方の免許を持つ教員を確保するのには、課題はあるものの、人口の少ない地域において、小学校と中学校を統合して義務教育学校化することは魅力的である。

だが、人口の少ない地域の学校の変化は、義務教育学校化だけでは済まないだろう。計10種類の中学校免許を有する各教員を揃えるのでなく、よくできた動画授業を配信するなど、学校の新たな形を柔軟に考えるべき時が迫っているのかもしれない。