学校における働き方改革に係る緊急提言

本紙論説委員 細谷 美明

部活指導を教科等指導と同様に

中教審から8月30日に、「学校における働き方改革に係る緊急提言」が出され、同日、文科省から発表された来年度の概算要求の中に、その関係予算が盛り込まれた。こうした動きの背景には、今年4月、文科省が公表した「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」の調査結果がある。

そこには、小・中学校に勤務する教員の1日当たりの勤務時間(平日)が小・中学校とも10年前の調査と比較してそれぞれ30分以上も増加し、土・日曜日も含めた勤務時間が週60時間以上の教員が小学校で33・5%、中学校では何と57・7%という、いわゆる「過労死ライン」を超えた、驚くべき勤務実態が明らかにされている。

緊急提言は、教員の業務改善を促進するための統合型校務支援システムの導入や部活動指導員など教員の指導を支援するための多様なスタッフの配置、教員1人当たりの授業の持ち時間数の軽減(教職員の増加)などを示し、文科省の概算要求でもそれらが多く盛り込まれている。

本稿では、こうした提言全般についての所見とともに、教員の過酷な勤務の要因となっている部活動対策について意見を述べてみたい。

まず、提言全般についてだが、教員1人当たりの授業の持ち時間数の軽減以外は、過去の概算要求においても出されたか類似の項目ばかりであり、目新しさはあまりない。教員1人当たりの授業の持ち時間数の軽減にしても、結局、現在の教職員定数に関わることになり、概算要求でも、小・中学校合わせてわずか2700人の増加である。中教審の緊急提言が財務省との折衝においてどれだけ効果を発揮するかだが、財務省のこれまでの姿勢からは、あまり期待は持てない。

ただ、教員の業務が多岐にわたり、その実態が世間の常識を超えているという労働問題の視点で社会全体に知らしめた意義は大きい。

部活動対策についてだが、提言は「部活動指導員の配置促進及び部活動の運営にかかわる指針の作成」とだけ述べている。概算要求では、部活動指導員7100人分の要求である。これは部活動の持つ根本的な問題の解決策とはなっていない。確かに、部活動指導員は学校教育法施行規則を改正し、今年度から中学・高校に配置が可能となったが、人材確保の面で地域格差が生じる可能性が高い。

また、「部活動の運営にかかわる指針の作成」の具体案については、部活動休養日の設定があるが、すでに平成9年、当時の文部省から「休養日の設定例」まで示された同様の提案(「運動部活動の在り方に関する調査研究報告書」)があるにもかかわらず、20年後においてこの現状である。つまり、部活動問題、ひいては教員の働き方改革問題における解決策は、現在のわが国の法体制の下では限界があるという現実を、今回の提言は明らかにしてしまったということになる。

では、今後何を変えていけばよいのか。国立教育政策研究所名誉所員の市川昭午氏の意見が参考になる(『月刊 教職研修9月号』)。

同氏は、学校には部活動を学校教育から切り離せないといった考えが根強くあり、国も部活動に関する法整備を十分行ってこなかったとし、部活動は「学校教育の一環であるが、教育課程外の教育活動」といった矛盾をまずは解消しなければならないとしている。

そのために、(1)学習指導要領で部活動を教育課程内の活動と位置付けその履修時間等の基準を明確に定める(2)教員に指導させるのであれば、あらかじめ教育課程において必要な単位の履修ないしは資格の取得を位置付け、指導に伴う超過勤務には手当を支給する(3)指導員を任用するのであれば、その専門資格を定め、取得を求めるほか、給与費について国庫補助・負担金などの予算措置を講ずる――としている。

こうした意見も全面的な解決にはならないであろうが、せめて部活動指導を教科等指導と同様に扱うための時間的・金銭的措置を教職員に対して行うことが問題解決への第一歩ではないだろうか。