(教育時事論評)研究室の窓から 第28回 全国学力調査に各県の特徴

eye-catch_1024-768_chichibu国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

組織文化変革の意欲が最大の要

今年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表された。大きな傾向はこれまでと変わりない。この10年間に変わらず上位を維持し続ける県と急激に改善されている県、変わらない県に類別される。急激に改善している県は、小学校のみが改善されている場合と小中両方が改善されている場合に分かれる。どちらかといえば前者が多い。

これらの都道府県間の違いをどう解釈すればよいか。私は近年、学力上位県の秋田、福井、石川に焦点を当てて訪問調査を続けており、その成果を『若手教師がぐんぐん育つ学力上位県のひみつ』(教育開発研究所)で報告した。それに伴い、いろいろな県や市町村から依頼をいただき、講演したり授業を拝見したりしている。この経験を通じて見えてきた、それぞれの県の特徴を仮説として挙げる。

第一に学力調査の結果が改善されている県は、いずれも秋田型授業に学んでいる。「あきたのそこぢから」などを参考に県として授業の指針を策定し、市町村を通じて学校に伝達している。学校側が教委の指導を受け止めにくいと聞いていた県であっても、意外に県教委の指導が現場に届いている。「以前は県の資料は職員室まで届くのですが、先生方の机の上までは届きませんでした。それが、今ではきちんと読んでいただけるようになっています」とは、その県の担当者の言である。教委が右といえば左に向く教員が多いといわれた県である。なぜそのように変わったのかと尋ねると、「全国順位であの低位は、さすがにこたえたようです」と。小学校が変われるのに中学校が変われないのは、授業研究文化の違いだろう。秋田型指導を示されてすぐに対応できる土壌が、小学校にあって中学校に不十分であるがゆえではないかと推察している。秋田型指導が実施できるか否かは教師の教材解釈力と学び合いを組織する学級経営力に影響される。教師にその資質が欠ければ、指針を示されても実践できない。

第二に教委の指導体制を変えたことが学力調査の結果に結びついている県や市町村がいくつかある。私がこれまで実施した調査によると、教委指導主事の訪問指導が年に1回かそれ以下の頻度である県の学力調査平均点は低い傾向にある。秋田、福井、石川は年に2回以上訪問している。訪問の主体が教育事務所であったり市町村であったり、双方であったりだが、同じ訪問主体が年に複数回訪問している。単に複数回訪問するだけでなく、年度当初の訪問で観察された学校の課題が改善されているかどうかとの視点を持って2回目以降の訪問を行っている。すなわち教委の訪問指導が事実上の学校関係者評価の場になっている。そのような説明を私はこれまでいくつかの教委で行ってきた。私の助言だけではないだろうが、指導主事の訪問指導体制を大きく変えた県や市町村が出てきている。年1回の訪問を2、3回に増やしたり、そのためのスタッフを増員したり、部署を新設したりしている。それらの県や市町村が揃って今年度の学力調査で改善傾向が示された。

第三に、学力調査の結果が改善されている県は、そのように意図した施策を推進している。当然のことと思われるだろうが、実は県によって学力調査に対する雰囲気が異なっている。「本県はさほど悪くないものですから、このままでいいと考えています」と語る県がある。市町村になるとなおのことだ。地域性から県平均より高い平均を得ることができる市町村は多い。そのような市町村は現状で十分と考える傾向にある。これまでの学校文化研究は、学校が旧弊を維持する傾向にあること、変化を好まないこと、表面的に同調しながら深いところでは個別の価値観を尊重し過ぎていることなどを指摘してきた。学校文化の主体は教師集団が第一であるが、校長も含まれる。そしてそれを追認する教委も含まれる。

県としての組織文化を変える意欲、これが一番のポイントかもしれない。