(注目の教育時事を読む)第42回 自治体が本気で取り組めるか

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

着実な成果を積み重ねる
文科省概算要求・働き方改革の方策
◆教員の多忙化の抜本的な解決を◇

本紙電子版8月30日付は、「文科省が30年度概算要求 文教関係で4兆4265億円」の見出しで、文部科学省による概算要求の内容を報じている。今回はこの中で、「学校における働き方改革」のための方策について見ていこう。

教員の多忙はかねてより問題となっていたが、社会的にも「働き方改革」が注目される中で、教員についても働き方を変えることがようやく強調されるようになった。

学力向上やいじめ防止対策といった課題への対応を考えても、教員が多忙に苦しむ状況が許されるはずはなく、抜本的な対応が求められる。

概算要求に先立ち、8月29日には、中教審の学校における働き方改革特別部会が「学校における働き方改革に関する緊急提言」を公表。タイムカードの導入等で「勤務時間」を意識すべきこと、校務支援システムの導入や給食費の公会計化等を通して業務改善を推進すべきこと、国も「持続可能な勤務環境整備」のための支援を充実させるべきことが述べられている。

こうした提言を受けての文科省の概算要求では、学校における働き方改革関連でどのような予算が計上されているか。指導体制の充実等のための教職員定数3200人増、補習のための指導員や部活動指導員配置等の専門スタッフ・外部人材の拡充、学校における業務改善のための実践研究やアドバイザー派遣、校務支援システムの導入促進という項目が見られる。関連予算の合計は約230億円である。

こうした予算によってどのような効果が期待されるのか、検討してみよう。

◆改善は緒に就いたばかりである◇

まず、教職員定数増員3200人のうち2200人は小学校の専科指導に充てられる。全国の小学校数は約2万校であるので、10校に1人の割合で教員が多く割り当てられる。増加分の教員が配置された学校では、多くの教員に週1~2時間の空き時間の割り当てが可能であろう。中学校の生徒指導体制の強化のために500人が充てられている。

中学校は約1万校であり、20校につき1人が増員となる。生徒指導に課題が生じている学校にうまく割り当てられれば、他の教員の負担の軽減が期待できる。スクールカウンセラーの全公立小中学校への配置や、スクールソーシャルワーカーの大幅増等もあり、課題を抱えた児童生徒への対応の改善が期待される。

そして、公立中学校には、部活動指導員7100人の配置が盛り込まれている。だが、これは中学校1校当たり約0.7人の配置であり、部活動指導員を配置できる部活動はごく例外的なものとなる見込みだ。多くの中学校教員が部活動指導で休日を返上している現状を考えれば、改善は緒に就いたばかりと考えられる。

この他、学校の業務改善については、モデル自治体での取り組みが中心であり、こうした自治体において効果が上がるのかどうかが問われる段階である。

以上のように、今回の概算要求が全て認められたとしても、学校における働き方改革が一気に劇的に進むことが期待できるわけではない。しかし、ずっと手が付けられてこなかった教職員の働き方の問題に対して、非常に大きな一歩が踏み出されようとしているのは間違いない。

だが、たとえ国が予算をつけても、公立学校の予算を決めるのは地方自治体である。地方自治体が本気にならなければ、国の努力は水泡に帰す。

たとえば、スクールカウンセラーの全公立小・中学校配置は、国による補助は予算の3分の1となっている。自治体が3分の2の予算を確保した上で、適切な人材を確保しなければ、配置はできない。スクールソーシャルワーカーや補習等のための指導員、部活動指導員についても同様である。業務改善についても、校務支援システムの導入は国からの補助は半額であり、残る半額を自治体で負担する必要がある。

◆楽にならなくても対策は進める◇

学校における働き方改革の問題は、ともすると「できるわけがない」と絶望視されがちであれば、できるかできないかの二分法で考えることは不適切だ。まずはできることを着実に行い、成果を出すことである。努力を重ねても、教職員の仕事が抜本的に楽にならないかもしれない。それでも、改善は進めるべきである。わずかに見える改善でも、余裕ができる教職員が少なからず出るはずであり、それで救われる児童生徒が出てくる可能性は決して低くないはずだ。

公立学校における働き方改革は、最終的には自治体が本気で取り組むかにかかっている。とはいえ、まずは国に概算要求通りの予算確保を求めたい。