(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 第3期教育振興基本計画

ポイントと課題は

中教審は9月28日、第3期教育振興基本計画の策定に向けた「審議経過報告」をまとめた。早ければ年内に答申をまとめ、今年度末にも「第3期教育振興基本計画」(平成30~34年度)を閣議決定する予定だ。第3期となる教育振興基本計画の、ポイントと課題は何か。

■「政策カタログ」という芳しくない実情

まず、政府の教育振興基本計画といっても、関心があるのは、恐らく教育関係者でも少ないだろう。

改正教育基本法の第17条では「政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画」を定めるとしている。さらに地方公共団体は、政府の同計画を参考にして、それぞれ独自の基本計画を策定することを努力義務として課している。まさに日本の教育行政の「進路地図」ともいえるもので、第1期(20~24年度)、第2期(25~29年度)に続いて、今回で第3期目となる。

しかし、中期的な教育施策を集めた基本計画は、「施策が網羅的・羅列的」「教育条件の整備が伴っていない」「予算の裏付けに欠ける」など、あまり評判は芳しくないのが実情だ。

そもそも文科省は、教育基本法の改正には消極的だったが、改正教育基本法の中に政府による教育振興基本計画策定の義務付けを盛り込むことで、中長期的な教育予算の確保を実現できるという思惑があった。このため当時の文科省は、教育基本法改正を積極的に支持する立場に転じた。

ところが改正教育基本法の成立後、基本計画の策定に着手したものの、さまざまな圧力や教育に対する社会の無関心などもあり、結局、施策実現のための予算的裏付けや教育条件整備の具体的指標などを盛り込むことができず、閣議決定された基本計画は単なる「政策カタログ」のようなものになってしまったという経緯がある。

■2030年以降を見据えた教育政策

「審議経過報告」を見ると、ポイントの一つは、「2030年以降の社会」を見据えて教育政策を考えようとしていることだ。そこには、少子高齢社会などともに「人生100年時代」や、人工知能(AI)の発達による技術革新を中心とした「第4次産業革命」「超スマート社会」などのキーワードがちりばめられており、社会の変化に対する大きな危機感がうかがえる。

そして「2030年以降の社会」を展望した教育政策の基本方針として次の5項目と、それらに対応した政策の進捗状況を示すための基準となる「測定指標」や「参考指標」を示している。

(1)夢と自信を持ち、可能性に挑戦するために必要となる力を育成する

PISA調査での世界トップレベルの維持。学校における学習指導の改善状況。自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の改善。いじめの認知件数に占める、いじめが解消しているものの割合。今の自分が好きだと思う小・中・高校生の割合など。

(2)社会の持続的発展を牽引するための多様な力を育成すること

英語力について中学校卒業段階で英検3級以上、高校卒業段階で英検準2級以上を達成した中高生の割合を50%以上にする。日本人高校生の留学数を6万人にする。理科や算数・数学が好きだと思う児童生徒の割合の増加など。

(3)生涯学び、活躍できる環境を整える

この1年間の生涯学習の実施状況において、「生涯学習をしたことがない」と回答する者の割合の減少など。

(4)誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する

経済的理由による大学中退率・高校中退率の減少。ひとり親家庭の子ども、児童養護施設の子どもの高校中退率、大学進学率の改善など。

(5)教育政策推進のための基盤を整備する

小・中学校の教諭の1週間当たりの学内総勤務時間の短縮。教育委員会における学校業務改善方針・計画等の策定状況の改善。教員のICT活用能力の改善など。

■最重要課題にはしっかり対策を

「審議経過報告」が示した日本の将来への懸念、それに対して教育がなすべきことなどの分析は、恐らく適切だ。だが、そのために示された教育政策は、現時点で実施・準備している政策を課題ごとに寄せ集めた感が拭えないし、突っ込み不足だ。

国の財政事情を考えれば、中長期的教育予算の確保などを基本計画に盛り込むのを求めるのは、もはやないものねだりかもしれない。

だが、それでも今後5年間の教育政策の見取り図を描く基本計画には、最重要課題だけはきちんとした対策を盛り込む必要がある。それは教員の長時間勤務解消と、経済格差に起因する子供の格差拡大の防止だ。

「審議経過報告」では、教員の勤務時間短縮は盛り込まれているが、それをどう実現していくかという道筋が全く描かれていない。子供の格差解消も同様だ。既に第3期となる基本計画では、なぜ「基本計画」を策定するのか、という原点に立ち戻る必要があろう。5年ごとに「カタログ」の更新をしているだけでは、意味がない。

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