(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 学校の働き方改革

教育新聞特任解説委員 妹尾 昌俊 (教育研究家、中教審委員)

特任解説委員 妹尾Whyタイムカード?
■働き方改革の緊急提言

中教審の学校における働き方改革特別部会で8月29日に、「学校における働き方改革に係る緊急提言」が発表された(電子版8月29日、本紙9月4日号既報)。

報道されたとおり、緊急提言には「ICTやタイムカードなど勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムが直ちに構築されるよう努めること」などが盛り込まれている。なお、筆者はこの部会の委員として関わっているが、この解説では個人的な意見を述べさせていただく。

なぜ8月末の時期に、〝緊急〟で出したのか。それは来年度予算等において、国・教育委員会の施策として盛り込んでほしい、という思いが込められているからである。そのため、国の審議会の提言としては比較的珍しいと思うのだが、かなり具体的な内容が入っている。

先ほどのタイムカードの話しかり、今回詳細は省略するが、留守番電話の活用や給食費等の徴収・督促事務を教育委員会にすることなども重要である。

■なぜタイムカードか?

とはいえ、教育委員会や学校現場の反応には、冷ややかなものもあるようだ。長年、教員の仕事は個々人の裁量で行うことが多く、タイムカード等による管理はなじまない、とされてきた歴史も影響しているのだろう。次のような意見もある。

・教育委員会や校長による管理強化は慎重であるべき

・測っても、勤務時間の削減には大した意味はない

実際、教育委員会や校長と話をしていても、上記のような意見で、当の教職員からタイムカード等の導入を反対されるという声も聞く。

なぜタイムカード等による管理が必要、重要なのか? この点がきちんと共有されていないと、労務管理や働き方改革は、すぐに形骸化してしまうであろう。本稿では3点に整理する。

■理由1:義務である

第1に、緊急提言でも「勤務時間管理は、労働法制上、校長や服務監督権者である教育委員会に求められている責務である」と書かれているとおりである。厚労省からも「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」が出ている。

わずか4ページなので、ぜひご一読いただきたい。

使用者が現認できない場合は、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」が原則である。

■理由2:振り返りのため

2つ目の理由は、働き方改革や業務改善を進めるには、まず、現状をしっかり把握して、反省する必要があるからである。教員の大好きな〝リフレクション〟は、働き方改革にも必要である。

例えば、学校でテストを1度も行わずに学力向上の有効な手立てを立案できるだろうか。あるいは、体重計に乗らずに、ダイエットしようとする人がいるだろうか。正確な記録と振り返りがないとは、そういうことと同じだ。

確かに、タイムカード等を導入したからといって、劇的に勤務時間の削減になるとは限らない。実際、連合総研の27年の調査によると、タイムカード等の機器で出退勤時刻管理を行っているという教員と、そうでないという教員との間で、週の労働時間に有意差は確認されなかった。

少し考えてみれば当たり前の話だが、時間の把握だけでは、仕事を減らすことにはならない。が、同時に言えることは、時間の把握もないままでは、今が危機的なのか、何を見直すべきかなども見えてこない。

■理由3:自分と家族を守るため

3つ目の理由として、仮に病気や最悪、過労死等となった場合、公務災害として認められるかどうかという点で、勤務時間の記録がないと、不利になる。

裁判になって何年も闘って勝てるかどうかという事案も多いのは、正確な記録がないためである。記録がないと、遺族の方には、教材や文書などの成果物を集めたり、関係者から証言をとったりする苦労がものすごくかかってしまう。その負担もあって、公務災害の訴えを断念する(いわゆる泣き寝入りする)例も多いと推察される。

■正確な記録を活用せよ

以上3点から、教員の勤務実態の記録と把握は必須だ。残業代が出ないからといって、過少申告などが横行する運用も避けなければならない。

そして正確な記録を基に、本当に今のままの働き方でいいのか、何か改善できることはないかを、ぜひ学校や教育委員会で議論する場を持ってほしい。