(新しい潮流にチャレンジ)プログラミング教育をめぐる課題

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

学校教育にどう伝播させるか
○「周知・徹底」はどう進むか

今年は次期学習指導要領の「周知・徹底」の年度である。各学校や教師たちの理解・徹底がどう進んでいるか気がかりなことである。その中で最も懸念される課題の1つは「プログラミング教育」であると考える。

中教審は「情報技術を手段として活用する力やプログラミング的思考の育成」を強く主張しているが、その必要性は誰もが認めることである。

その必要性から小学校段階から導入されることになったが、教師たちの関心は必ずしも高くない。

課題が多すぎるのである。

プログラミング教育を実施できる基盤は、『答申』で述べているように、「各小学校において、各学校における子供の姿や学校教育目標、環境整備や指導体制の実情等に応じて、教育課程全体を見渡し、プログラミング教育で行う単元を位置付けていく学年や教科等を決め、地域等との連携体制を整えながら指導内容を計画・実施していくことが求められる」ことである。

つまり、プログラミング教育を実施できる学年の単元を選択し、指導内容に基づいて学習過程を組み立てることが必要である。

実のところ、プログラミング学習は小学校に導入されるが、「時間」確保ができていない、という批判があったが、それも大きな課題であろう。プログラミング学習が独自の時間を確保して、例えば総合的な学習の時間のように実施されるという意味ではない。

あくまでも教科等の単元に基づいて、そこにプログラミング学習を並行させて実施するという形である。情報技術の手段としての活用である。ただし、初期指導や文字入力など基礎の指導ではそのための時間が必要とされる場合もある。

しかし、学校の教育課程編成における学年の単元選択は容易であろうか。最も重要な課題は、肝心のプログラミング学習が何であるか、教師の理解が不徹底なことである。

何よりも、教師が可能とするプログラミング教育の「周知・徹底」が求められるのである。

○プログラミング教育の教師受容を容易に

次期教育課程において小学校教員にとって新たな課題が2つある。1つは、4年生からの英語指導である。授業時間が決まっているので、課題はあっても実施される。不安なのは指導能力である。また、1つはプログラミング教育である。授業時間をどう設定するか、という課題は大きいが、指導能力はどうであろうか。

最近の教師はパソコンやスマホ、デジタル機器などの活用度は高いのではないか、と考える。プログラミングの導入はかなり進むのではないかと思えるが、その導入に関して教員の指導力を懸念して、民間で実施している多様なプログラミング教育の機会や指導者などを活用してはどうかという考え方が多くみられる。

実は、外部の支援員が参加してのプログラミング教育の研究校での授業を参観したが、2年目なのに一人の教員が「プログラミング教育の指導が全くできない」と訴えていた。支援員はScracthを主としたプログラミング教育を指導していて、授業そのものは教員も子供もかなり難しいものであった。

その後、別のプログラミング教育研究員の話を聞く機会があったが、説明はScracthがほとんどで参加者に違和感が残るものであった。子供が面白いと思える程度でよいのではないか、という発言もあったが、ICTスキルなどを学んだことが次に転移するなど、積み重ねを重視しなければ真の学びにはならないのである。

何が問題かといえば、研究員等に教員が求めるカリキュラム・マネジメント等の理解がないことである。つまり、学校教育の理解が低い。そのため教員がカリキュラムに位置付けたプログラミング教育のイメージを持ちにくいのである。

中教審『答申』が述べているように、単元に位置付けられたプログラミング教育をどう展開するかであるが、課題は多いといえる。

○情報スキルの獲得を目指して

今日、情報スキルの獲得を誰もが願っているであろう。将来的にますます必要になるスキルである。それは世界共通の課題でもある。

2013年に実施したOECDの「国際成人力調査」(PIAAC)をみると、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野を16歳以上65歳の範囲で行っているが、わが国は「読解力」「数的思考力」はトップであったが、「ITの活用力」は10位であった。わが国はITの活用力で遅れているのであろうか。

OECDはITの活用を次のように説明していた。

「PIAACにおけるITを活用した問題解決能力とは、情報を獲得・評価し、他者とコミュニケーションをし、実際的なタスクを遂行するために、デジタル技術、コミュニケーションツール及びネットワークを活用する能力である」

これからの社会は、AIやIoTなどによって過激なほどの変化の時代を迎える。それは時代が進むほどますます過激になる。最近の子供は生まれながらにしてデジタル・ネイティブではあるが、確かな情報操作を確実に身につけることの重要性は高まるばかりである。

その意味で、小学校からプログラミング教育を導入すべきことに異論はないであろう。だが、実施する教育条件の整備はどうであろうか。

プログラミング教育にとっての最も大きなネックは学校の教育用コンピュータの整備が極めて脆ぜい弱じゃくだということである。コンピュータ1台当たりの児童生徒数は、平成17年に8・1人であった。
10年過ぎた平成26年は6・5人と、遅々として進んでいない。この状況は、学校によって情報指導格差を創り出す結果となる。

しかし、パソコンやタブレットが子供個々に備えられればプログラミング教育は格段に進化することは間違いない。総務省は平成30年度の概算要求にプログラミング教育に関する新規事業に5億円を要求したほか、教育のICT関連にも3億5千万円を要求している。ぜひ、実現してほしいことである。ただし、それで十分とは到底思えないが。

プログラミング教育への期待の声は大きいが、一方では学校や教師が冷ややかな反応を見せていることも確かである。

次期教育課程の「周知・徹底」を確実にするために、どのようにすれば学校や教師に受容され、確実に実施されるか、その伝播のあり方について十分留意すべきではないか。教師の指導力を容易に発揮するための多様な方策の提供が待たれるのである。

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