(注目の教育時事を読む)第43回 70年を迎えた中学校教育

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

校長のリーダーシップで改善図る
全日中としてのメッセージ配信を
◆今、在り方を問われる◇

昭和22年にスタートした新制中学校教育は今年、70年を迎えた。10月19日には都内で、全日本中学校長会(全日中)などが主催して記念式典が開かれた。本紙でも、10月9日付紙面での細谷美明論説委員による記事、10月19日付紙面での「深掘り 教育ニュース」等の関連記事が掲載されている。

今、中学校教育は大きな転機を迎えている。まずは、今年3月に新学習指導要領が告示され、大学入試改革も予定される中、「主体的・対話的で深い学び」への転換や、カリキュラム・マネジメントの充実等の課題に対応が迫られている。

新学習指導要領にどのように対応するかにとどまらず、中学校教育は今、その在り方を問われている。

これまでの中学校教育は、生徒たち全員を高校に進学させることを目指し、授業だけでなく部活動や学校行事等で生徒たちが、長時間集団で生活をするようにし、問題行動に対しては生徒指導や教育相談で対応するというやり方で進められてきた。だが、学級や部活動における深刻ないじめ事案が各地で発生し、部活動における体罰が問題となり、体育祭における組体操の危険性に批判がなされ、不登校生徒も増加している。他方で、教員の長時間労働が問題となり、学校における働き方改革が課題となっている。中学校が担ってきたものが成立しにくくなっているのに、教員の負担の軽減が求められているのが、70周年を迎えた中学校教育の現状だ。

◆法令順守や人権意識が欠けている◇

70年目を迎えた今年、中学校教育の信頼を揺るがす事態が目立つ。茨城県の取手市教委は、平成27年に女子中学生が自殺した事案でいじめ防止対策推進法に基づいた対応をせず、いったんは重大事態ではないと教委会議で議決し、批判された。仙台市では、今年男子中学生がいじめを受けて自殺した事案で、生徒に対して2人の教師が日常的に頭を叩いていたことが報じられている。福井県池田町では、教師たちのしつこい叱責を苦にした男子中学生が自殺した。こうした事例には、学校にも教委にも法令順守の姿勢も人権意識もみられない。生徒たちのためにあるはずの学校が生徒を傷つけ、追い詰め、命を失わせる場となってしまっている。

部活動の在り方も、深刻に問われている。部活動が中学校教師を多忙にしているのは疑いなく、平日は朝も放課後にも部活動の指導をし、土日は生徒を引率して練習試合や大会に行っている。他に業務が多い中で部活動にこれだけの時間を使っていれば、教員が多忙になるのは当然である。多忙は教員本人の心身の健康を脅かすことに加え、生徒のいじめ等の悩みへの対応の遅れにもつながる。法令違反や人権軽視は許されるものではなく、教師の多忙対策も、放置は許されない。次の節目となる2027年(80年)には、抜本的な改善がみられなければならない。

抜本的な改善は容易ではないが、文科省はすでにいくつかの手を打っている。いじめについては、いじめ防止対策推進法を順守した対応を促す取り組みを進め、SNS等でのいじめ相談・通報の取り組みの推進等、実効性があると思われる策を進めている。多忙対策としては、「チーム学校」を掲げ、部活動指導員の配置、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの拡充、校務システム導入の推進等を進めようとしている。

◆リーダーシップこそが現場を変える◇

70周年を迎えた全日中でも、学校現場を預かる校長の団体として、実効性ある取り組みの推進を期待したい。現状では、いじめや体罰への対応に関しても、教員の多忙化解消に関しても、全日中から特段のメッセージ発信はみられない。

いじめや体罰に関しても、教員の多忙化に関しても、校長のリーダーシップがなければ対応は変わらない。いじめや体罰に関しては、順法と人権重視の考え方の浸透のため、問題が起きるごとに校長が考え方を確認し、徹底を図ることが重要だ。問題が起きたときに、校長が法にのっとった対応を説明し、教職員の理解を得て進めなければ対応は遅れ、結果的に法令違反、人権軽視になる。教員の多忙化解消でも短期的な目標を定め、部活動指導員等の配置推進や、会議や事務の合理化推進には校長のリーダーシップが重要である。

全日中にはぜひ、中学校教育に抜本的な改善が迫られているという自覚の下で、校長がなすべき役割について議論し、具体的な計画を立てて対応を進め、全日中としてのメッセージを発信していただきたい。