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大学入試改革でこのままでよいか

大学入試センターは11月13日から全国約1900校の高校を会場にして、「大学入学共通テスト」の試行調査(ブレテスト)を開始した。2020年度の大学入試改革の実施に向けて準備は進みつつある。しかし、高校現場では記述式問題などをめぐり採点の公平性に疑問の声が上がっている(本誌11月2日付既報)。大学入試改革は、このままでよいのか。

■矮小化する論点

今回の大学入試改革は、安倍晋三首相が主導する「教育再生」の中心となるもので、下村博文元文科相は「明治以来の大改革」と強調している。その趣旨は、1点刻みで知識を争う入試から、多面的・総合的に評価する入試への転換だ。さらに、単なる入試改革ではなく、大学教育改革、高校教育改革と共に三者を一体的に改革する「高大接続改革」が本当の目的だ。

グローバル化する21世紀を生き抜くため、覚えた知識の量よりも思考力・判断力・表現力を重視するという入試改革の狙いは、新学習指導要領の趣旨とも重なる。小・中学校に比べて高校は大学入試を理由に思考力育成などの授業改革が遅れており、大学入試改革で高校教育の現状が変わることが期待されている。

ところが、大学入試をめぐる議論は、文科省の有識者会議などから報告が出るたびに、次第に論点が矮小化して、最終的には共通テストの記述式問題導入と、英語における民間検定試験の活用の2点が中心となり、それらの実施に向けた技術論に陥ってしまった感がある。

■改革スケジュールがタイト過ぎる

大学入試センターは、記述式問題で「受験者の自己採点が可能か」という不安を払しょくするため、プレテストでの自己採点方法に関する動画をネット上に公開した。残念ながら高校関係者の不安を逆にあおる結果となっている。動画を見る限り、共通テストの記述式は、「自分の言葉で自分の考えを表現する」という狙いを達成しているとは、とてもいえない。

採点という技術的課題を考えれば、仕方ない面もある。それでも、今年11月に高校を会場にしたプレテスト、来年11月に大学を会場にしたプレテスト、そして本番同様の最終テストが2019年11月というスケジュールは、タイト過ぎる。これだと共通テストの全貌を受験生や高校関係者が把握できるのは、本番の約1年前。周知には最低でも2年間は必要だ。

また、英語の4技能評価のために民間検定試験を活用する問題で、国立大学協会は、共通テストの英語と民間検定試験の両方を受験生に課すという統一方針を決定した。受験の平等性確保のためだが、受験生にとって二重の負担になるのは明らかだ。

一部だけに負担がかかると不公平になるので、全員に負担を課して平等性を保つという考え方は、いかにも日本的だ。だが、このような日本的発想が、センター試験をはじめとする大学入試をゆがめていたのではないか。これを打破するのが大学入試改革の目的の一つだったはずだ。国大協がこんな決定をした背景には、やはり改革スケジュールのタイトさがある。

■新指導要領履修者からの実施で

一方、入試改革の技術論に目を奪われている間に、多面的・総合的に評価に向けた大学入試改革は進んでいる。文科省の調査によると、2018年度入試でAO入試を実施する国公立大学は50・3%、初めて半数を超えた。

国公立大学のAO入試募集定員を見ると、16年度入試で3529人だったのが、17年度4270人、18年度4791人と急増。私立大学でも早稲田大学の「新思考入試」などをはじめとする入試改革が始まっている。

また21年度入試からは、一般入試が「一般選抜」、AO入試が「総合型選抜」、推薦入試が「学校推薦方選抜」に変更されることになっている。一般選抜以外でも学力評価が課されるほか、高校の調査書には思考力などの評価の記載が求められることになる。調査書で、思考力・判断力・表現力などの評価が必要になれば、高校教育は変わらざるを得ないだろう。新学習指導要領の実施に伴う指導要録の改定が加われば、なおさらだ。

共通テストなどの大改革は、期限を切らないと実現はできない。しかし、現在の大学入試改革をめぐる議論が矮小化しているのは、2020年度実施という期限がタイト過ぎるせいだ。

大学教育、高校教育、そして受験生にとって、2020年は東京オリンピック開催のお祭りムード以外に特段の意味はない。

共通テストは、20年度実施にこだわらず、技術的課題解決のためにもっと時間をかけ、新学習指導要領の履修者から実施した方がよい。それが結局は「高大接続改革」のためになるはずだ。

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