(新しい潮流にチャレンジ)全国学力・学習状況調査を生かす

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

子供を主体化する授業改善を
○子供は主体化することで伸びる

8月28日、今年の全国学力・学習状況調査の結果が公表された。都道府県の成績のトップクラスはこれまでと変わらず、B問題は依然として課題が残る。つまり、例年とあまり変わらない結果であることから、結果分析方法や調査内容を抽出等で実施すべきという声がみられる。

だが、悉皆調査は今後も継続すべきと考えるが、それは次期学習指導要領で示す学力の3つの柱や「主体的・対話的で深い学び」がどう定着するか、それを見極めたいからである。課題はなお山積していて、今回新たな項目に加えた中学校部活と学力の関連など、極めて注目されるものがあった。部分的な改善を加えながら、さらに調査を進化させるべきである。

しかし、今回の調査でも多様な課題発見はある。例えば、質問紙と学力のクロス分析が提示されているが、その中に「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に関する取り組み状況、学習評価の在り方」という児童生徒質問紙と学力のクロス分析と学校質問紙と学力のクロス分析がみられた。

提示された分析では、教科の平均正答率が高い傾向にあるとして前者18項目、後者19項目を挙げているのだが、例えば「友達の前で自分の考えや意見を発表することが得意である」など、当然なことを項目として並列しているにすぎない。

そこで具体的に読み込んでいくと、この2つの分析結果で気付かされたのは、学校質問紙にみられる学習指導の改善事項よりも、児童生徒質問紙の学力との相関の方が格段に差異が大きいことであった。

学校質問紙で「前年までに発言や活動の時間を確保して授業を進めましたか」は、「よく行った」は小学校51.3%、中学校が39.3%、「あまり・全く行っていない」は小1.6%、中2.9%であったが、学力の差異をみると小国語Bで4.8ポイント、小算数B4.3ポイント、中国語B4.3ポイント、中数学B4.3ポイント差でしかない。

それに対して児童生徒質問紙では、「前年までの授業で、自分の発表する機会が与えられていたと思いますか」は、「当てはまる」が小52.9%、中42.4%、「当てはまらない」小3.6%、中3.2%を比べてみると、学力の差異は小国語B23.6ポイント、小算数B21.8ポイント、中国語B24.7ポイント、中数学B19.3ポイント差である。A問題も同じような傾向である。

つまり教師の指導方法の差異よりも、子供の学びの傾向が大きな差異を生んでいることになる。それがほとんどの項目にみられるのである。学力の向上は、いかに子供を主体化し、自ら学ぼうとする姿勢を形成することにあるのではないか。

○「主体的・対話的で深い学び」の課題

しかしながら、子供の自ら学び、自ら課題追究する主体的な学習態度の形成は容易ではない。教師が授業改善したつもりでも、子供の学習意識はすぐには変わらないことが多い。学級風土も現状維持という状況が続く。

そのため、「主体的・対話的で深い学び」の授業の効果は今後どう表われるか、興味深い。

そこで質問紙調査をみると、いくつか「主体的・対話的で深い学び」に関連した事項がみられる。例えば、「先生から示された課題や、学級やグループの中で、自分たちで立てた課題に対して、自ら考え、自分から取り組んでいたと思いますか」は「当てはまる」(以下同じ)が小30.5%(昨年30.7%、以下同じ)、中26.8%(27.4%)であった。昨年とほとんど変わらない。

「学級やグループの中で自分たちで課題を立てて、その解決に向けて情報を集め、話し合いながら整理して、発表するなどの学習活動に取り組んでいたと思いますか」は、小30.5%(30.7%)、中26.8%(22.3%)で、中学校がやや改善している。

コミュニケーション能力についてはどうであろうか。「授業で友達との間で話し合う活動をよく行っていたと思いますか」は小46.9%(45.2%)、中38.9%(34.9%)と、やや向上している。「友達の間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができると思いますか」は、小27.0%(26.4%)、中19.8%(20.2%)と依然として低い。

さらに主体的な態度の形成として重要な「友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか」をみると、小21.7%(21.2%)、中17.7%(17.6%)とかなり低い。

しかし注目すべきことは、これらの「当てはまる」という子供は、他の「当てはまらない」などに比べて学力はかなり高く、差異が明確であることである。

つまり、子供の能動的な学習態度が学力向上を押し上げていることは確かであって、子供の主体的な活動を促進する授業展開などの工夫が今後の主要な課題になるといえる。

○新たな課題に向けて調査を広げる

このように全国学力・学習状況調査は、自校の子供の実態がよくわかり、日常の指導に生かす多様な方策がよく見えてくる、という極めて有効なデータである。

例えば、ある小学校は学力調査の成績はかなり高いが、「自分の考えや意見を発表する」などが低いという課題が見いだされている。恐らくはどの学校もそれぞれ固有の課題を見いだせるのではないか。この調査の活用度は高いと言えるのである。

また、さらに子供向けなどの質問紙調査は新たな課題発掘を可能にする。その点でも注目される。

今回は、中学校の部活の時間と学力のクロスが注目を集めた。練習時間1~2時間が最も好成績という結果が示されている。教師の労働時間増加に対応してノー部活デーが言われているが、生徒の練習時間の影響を探ったことで、部活の在り方に大きな影響を与えそうである。

部活以外にも、新規の調査項目がみられる。

その一つが、学校調査として「地域や社会を良くするために何をなすべきか考えさせる指導を行いましたか」である。新学習指導要領の「前文」には、これからの教育の実現として「学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会が共有する」という考えを掲げているが、まさにそれと関連する調査項目である。結果は「よく行った」は小16.0%、中10.6%であった。

子供調査に「地域や社会を良くするために何をすべきかを考えることがありますか」の項目があるが、「当てはまる」は小14.8%、中9.8%であった。相関をみると、学校の「行った」「行っていない」の子供の回答は成績にあまり関係ない。「社会を創る」という理念に基づく具体的な考え方や指導が十分でない印象である。

さらに学校調査として「授業や課外活動で地域のことを調べたり、地域の人と関わったりする機会の設定を行いましたか」があって、「よく行った」は小38.3%、中23.9%であった。同様の子供調査は「当てはまる」が小34.4%、中19.2%である。なお、「どちらかといえば当てはまる」を加えると、小学校は70.0%であるが、中学校は53.1%であった。

その他として興味深い新規の子供調査に「外国人と友達になったり、外国のことを知りたいと思う」があって「当てはまる」は小40.6%、中37.1%であった。また、「将来、外国へ留学したり、国際的な仕事につきたいと思う」は同様に小16.0%、中16.6%であった。

これらの数値が高いのかどうかは今後の継続調査や外国の調査などとの比較が必要であるが、私の記憶では、かつて台湾の外国留学の希望が5割を超えていたというのがある。中国や韓国も高かった。わが国の若者は「国内にこもる」傾向が強いと指摘されているが、今後こうした調査の数値がどう変わるか、関心を持って見守りたい。

ともあれ、質問紙調査は学力調査と異なって多様な課題を探ることが可能で、今後も進化してほしいと考える。

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