(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) PISA協同問題解決能力調査

結果が示した課題とは?

経済協力開発機構(OECD)は、2015年の児童の学習到達度調査(PISA)の一環として実施した、「協同問題解決能力調査」の結果を発表した(本紙11月30日付既報)。日本は高い成績を収めて、能力の高さを証明したが、逆に調査結果が示した課題とは何だろうか。

■「協同」は「協働」と同じ

科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3分野の力を測るPISAは、既に教育関係者の間ではおなじみだろう。

また3年に1回実施されるPISAでは、3分野以外の能力を測定する、さまざまなオプション調査が行われている。今回の協同問題解決能力調査も、その一つだ。

「協同問題解決能力」とは、「複数人が、解決に迫るために必要な理解と労力を共有し、解決に至るために必要な知識・スキル・労力を出し合うことによって、問題解決しようと試みるプロセスに効果的に取り組むことができる個人の能力」と定義されている。

「協同」という訳語を「協働」に置き換えれば、求められている力が、新学習指導要領の「協働」する力であり、「主体的・対話的で深い学び」の「対話的学び」の部分であると分かる。

調査はコンピューターを使用して実施され、ある架空の国の人口問題、経済問題などに架空の仲間と一緒に挑むという形式で行われた。

実際にはチャットの画面で、仲間の提案や質問に対して、自分が答えるべき言葉をチャット画面の中から選択するという方式で、選択した解答に応じて、次のチャットの展開が異なってくる仕組みになっている。

調査の成績は、日本は552点で、シンガポールの561点に次いで高く、調査参加国・地域中2位、OECD加盟国中ではトップとなっている。また、成績上位層と下位層の差が小さいことで、全体の平均点が上昇しているのが日本の特徴だ。

■拭い切れない違和感

データ的には、日本の子供の「協同問題解決能力」は、諸外国の子供よりも高いといって間違いない。これは、小・中学校で活発に行われている話し合い学習など集団学習の成果だろう。さらに、学校現場で取り組みが進むアクティブ・ラーニング(AL)の効果といってもよいかもしれない。

普通ならば、この結果を素直に喜ぶべきなのだろう。しかし、日本の子供の「協働」する力は世界トップクラス、「対話的学習」の力が諸外国の子供よりも高いといわれても、正直、どうにも違和感を拭い切ることができない。

その違和感のヒントは、「異なる意見について考えるのは楽しい」と回答した日本の子供はOECD平均よりも少なく、逆に「チームの方が、1人よりいい決定をすると思う」「友達と協力するのは楽しい」という回答は平均より多かった、との国立教育政策研究所によるPISA2015との関係分析にある。

関係分析では、「共同作業が嫌い」な子供、「異なる意見について考えるのは楽しい」という子供の方が、「協同問題解決能力」が高いという結果も出ている。

■異質な者同士の「協働」を

要するに日本の子供は、みんな仲良く同じ価値観を共有して、同じ目標を目指すことが得意なだけなのではないか。これは恐らく、集団の和を重視する日本人の特質が背景にある。

確かに、「同じ価値観を共有して、一丸となって同じ目標に向かって進む」という日本人の特質は、かつて経済成長に大きく貢献した。企業もこのような「協働」ができる人材を求めた。

ところが、このような「協働」する力を持つ人材が、21世紀のグローバル社会で役に立たなかったことは周知の事実だ。異なる価値観を持つ者が集まり、時に対立し、時に妥協しながら、問題解決の道を探るのが21世紀のグローバル社会における「協働」だからだ。

翻って学校や職場に目を転じれば、自分の主張を貫く者や、集団の和を乱す雰囲気を持つ者は、「空気が読めない人」という烙印を押され、下手をすると排除やいじめの対象になりかねないのが実情だ。

今回の調査結果について、お茶の水女子大学の耳塚寛明教授(教育社会学)は、「異質性が際立った障害となるような場面などを設定すれば、日本の弱点が露呈する可能性がある」と述べている。

学校のALは、「みんなで仲良く、波風を立てず」という古いタイプの「協働」になっていないか、見直す必要があるだろう。

それは新学習指導要領が求める「協働」ではないはずだ。