(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) プレテストの意義を問う

小さくない記述式問題の衝撃

大学入試センターは11月13~24日、2020年度からセンター試験に代わる「大学入学共通テスト」(共通テスト)の試行調査(プレテスト)を実施した(本紙11月16日付既報)。プレテストから明らかになった課題や、プレテストの本当の意義とは、何なのだろうか。

■「試行調査」の意味するものは?

プレテストでは、国語と数学で記述式問題が出されたほか、マークシート問題でも正解が複数ある問題が出るなど、共通テスト実施に向けた試行が行われた。全体的に従来のセンター試験よりも難易度が上がったと言われているが、出題内容の分析は本紙でも解説(本紙12月7日付既報)しているので、そちらに譲る。ここでは二つの課題を指摘しておきたい。

まず一つ目は、共通テスト実施本番までのスケジュールの短さだ。大学入試センターは、来年11月に高3対象の10万人規模の第2回プレテストを行った後、平成31年度に本番同様の「確認プレテスト」を実施する予定だ。つまり確認プレテストによって、共通テストの全容が判明するのは、本番のわずか1年前ということだ。

来春には、共通テストの最初の対象者となる生徒たちが、高校に入学してくるというのに、いまだに共通テストの全貌がはっきりしないというのでは、高校側も対応に困るだろう。

そもそも入試センターによると、今回のテストの正式名称は「プレテスト」や「試行テスト」ではなく「試行調査」となっている。その理由は、今回のテストで出されたような問題が本番でも出題されるという誤解を与えないためだという。裏を返せば、今回のテストの出題内容・方法や傾向は、今後、大きく変わる可能性もあるということになる。

それもこれも2020年度の共通テスト実施という日程が先にあり、強引に準備が進められているからだ。やはり共通テストの実施は、新学習指導要領の履修者からとした方がよいのではないか。

■実施体制の検証は2回必要

二つ目は、今回のテストで、共通テストの実施体制が全く検証されていないということだ。5万人規模で実施されたプレテストの記述式問題の採点は、ベネッセコーポレーションに委託され、約千人の採点者が2人一組になり採点を行うという。だが、採点体制は今回の検証事項に入っていない。

共通テストの採点体制、実施運営体制は、来年度のプレテストで検証されることになっているが、受験者は約10万人に過ぎない。

これで約50万人が受験する共通テストの採点体制を検証し、本番に入ることができるのか。恐らく、平成31年度の確認プレテストだけでは、明らかになった問題に対処しきれないと思われる。

記述式問題の成否は、大学入試改革の根幹の一つを担っているといえる。本番同様の受験者数、実施体制によるプレテストが、最低でも2回は必要だろう。

■これからどんな授業が求められうのか

このようにさまざまな課題を抱えたプレテストだが、その持つ意義は決して小さくない。それは今回の大学入試改革が、大学教育改革と高校教育改革の三者が一体となった「高大接続改革」であるところにポイントにある。

思考力などの育成を重視する教育への転換が、小・中学校において明確に意識されるようになった契機として、文科省の全国学力・学習状況調査の「B問題」が果たした役割は非常に大きい。実際に「B問題」を経験したことで、小・中学校の現場は、求められる教育の具体像を意識できるようになった。一方、高校は小・中学校に比べて、明らかに思考力などを育成する教育が不足している。小・中学校において身に付けた力が、高校の知識偏重で元に戻ってしまうことも懸念される。

これに対して、記述式問題をはじめとするプレテストの出題が高校現場に与えた衝撃は、小さくなかったはずだ。従来の知識伝達型授業では、対応できない問題が出されたことで、これから必要とされる教育がアクティブ・ラーニングによる探究型学習などであることが理解できたのではないか。

その意味で、プレテストの出題を大学入試対策の面からのみ分析することは正しくないし、逆に本質を見失う恐れもある。重要なのは、新学習指導要領をはじめとするこれからの教育において、どんな授業が求められているのかを、今回のプレテストの問題を通して高校現場が読み取ることだろう。

関連記事