(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 中国はAI、テクノロジー大国

深掘り・小宮山教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子 (リクルート次世代教育研究院院長)

共産主義と資本主義が奏功
■教育科技大会2017

先月14日から16日にかけて北京で開催された「教育科技大会2017」。15年から始まったテクノロジーと教育に関する中国最大の国際カンファレンスで、5千人以上が参加する。今年は習熟度別学習(パーソナライズドラーニング)やAI、ゲーミフィケーションに関連したセッションが増えた。

中国の二大教育事業会社の一つ、好未来教育集団のバイスプレジデントが登壇した「個別のより良い教育とは何か?」と題されたセッション。今後はモチベーション、学習環境、学習能力の3つを上手に連携させることが重要だと説いた。

AIのある未来で必要な、6つの能力についても言及した。読解力、コミュニケーション力、発見探索力、分析的思考力、創造的思考力、批判的思考力だ。

「これからの教育は、子供のときにだけ必要なものではなく、一生必要な能力を育成するという価値観に変化する」

同社では、マジックミラーシステムを使って授業中の先生や生徒の言動をAIで分析し、集中力や学習意欲についての研究も行っている。

AI一つとってみても中国の研究は米国と両雄を成しており、深層学習に関して言えば、2013年に中国が米国を抜いて研究論文発表数第一位となっている。

同年、習近平国家主席が「教育にテクノロジーを導入する」と発言してから、都市部を中心にその動きは一気に起こり、雨後のたけのこのように起業も行われている。

ある中国人の知人は、「中国で100万人の利用者というのは、ああ、ビジネスをやってるのねくらいの印象」と話す。つまり、そのくらいの数の利用者を獲得しているサービスがあまたあるということだ。小学生から高校生まで約1億9600万人いれば、そのような数字の感覚も不思議ではない。

また、日本では20年から小学校でプログラミング教育が必修化となるが、中国では今年2月に教育省が初めて公式に小学校にSTEAM教育を導入すると言及した。今後、同教育の普及は爆発的に加速するだろう。

中国の強いところは、政策の普及発展段階の時にトップからの通達があまねく全土に行き渡り、有無を言わさず実行される強力な共産主義と、その市場を整備する資本主義がハイブリッドで機能している点だ。

■人気のある教育領域

投資額の多い領域、翻って考えれば現時点で需要がある、もしくは今後需要が増加しそうな領域を5つ列挙する。まず子供向けのオンライン英語学習だ。子供向けオンライン英語学習最大手のVIPKIDは、売上が16年の1億5100万USドルから17年には7億5800万USドルを超えると言われている。

次にSTEAM教育。17年8月末時点でのSTEAMへの投資額は4800万USドルで、教育領域全体への投資額の内の3・3%。現時点で投資額は少ないが、今後爆発的に伸びると言われているのは前述した通りだ。

課題は、カリキュラムと先生の質の担保および、地域や家庭の経済環境によってSTEAM教育を受けられる機会が大きく異なることで、その点は日本の現状と似ている。

3つ目に未就学児教育。二人っ子政策により、向こう3年は毎年6400万人の子供が生まれることにより、19年までに幼児教育全体で7千万USドルになる。

4つ目にライブ動画授業。教育のどの分野でも大変な人気となっていて、英語学習ではTwo Teacher Systemと呼ばれるオンライン授業の先生と地元の先生を活用したものが人気だ。

最後に若年層向けスポーツだ。中国政府は若年層のスポーツについて大変な注意を払うようになった。09年にはK12対象のサッカーリーグの創設が促進され、11年には15年までに全国で5千のスポーツクラブを設けることが組み込まれた。また25年までに4万のサッカースクールの創設が予定されている。

■海外との連携も積極的

中国の研究機関や企業は海外との連携も積極的だ。

例えば清華大学はシアトルにあるワシントン大学やマイクロソフト等と組んで、Global Innovation Exchangeというプログラムを展開。世界で活躍できるイノベーションのリーダー育成を目的としている。米国の大学には多くの中国人留学生が在籍し、例えばスタンフォード大学のコンピューターサイエンスを専攻している学生の三分の一は中国人だ。

日本とはその母数が違うとはいえ、中国は次世代のイノベーション人材、グローバル人材を増産している。

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