新しい学びと先端技術 テクノロジーと人間とのパートナーシップ

〈展望2018(4)〉
1・小宮山教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

テクノロジーの発展とそれに伴う社会の流れが非常に速い中で、テクノロジーに何ができて人間に何ができるのか、そしてそのハイブリッドな関係はどのようなものになるのかを考える機会が増えるとみている。世間では、テクノロジーの進化によって職がなくなるという記事など、テクノロジーが人間と対立して描かれる記事も多いが、果たしてそのような考えは建設的だろうか。テクノロジーの波やその深化は、遅かれ早かれ有無を言わさず全ての領域に訪れる。今年の展望を主に3つ挙げるが、その際、パートナーシップを念頭に置きながら読んでいただきたい。

■コーチングやメンタリングの重要性がより認識される

今後、教員の役割が変化するといわれている。テクノロジーによって個別習熟度別学習が進めば、必要となるのは伴走者の存在だ。例えばリクルートは「スタディサプリ高校講座」において合格特訓プランを提供している。大変好評で、長期間かけて合格を目指してコーチが伴走することで、学習効果を最大限に高めるのが目的だ。

テクノロジーによってそれさえも代替できるとの議論があるが、一方で興味深い話もある。昨年AIと教育に関するカンファレンスに登壇した際、パネル登壇者の一人が「私は実際に人を雇って、一定間隔で私に仕事をきちんとしているかどうかメッセージしてくれるよう頼んでいる。その部分もテクノロジーで代替できるかもしれないが、それだと〝ああ、またbotから連絡が来たな〟と思って、自分が怠けてしまう。そのため、あえて人にお願いしている」と語っていた。

■トランジション時の学びが注目される

人生100年時代を迎えるといわれ、それに伴い健康寿命も延びている。一方で会社の平均寿命は年々短縮化し、2014年時点での日本の倒産企業のそれは23・5年。その差によって生じるのは、終身雇用の崩壊だ。既に一部で終身雇用が崩れているが、今後一つの会社に居続けられる人は少なくなるだろう。複数回転職する人、フリーランスで働く人、兼業・副業する人が増加する。

その際に必要なものが新しい学びだ。これまでは会社が用意してくれた社内研修を受けていれば定年まで過ごせた。しかし、今後は自発的な学びが鍵を握る。学び続ける人とそうではない人で、大きな差が生じる。今はテクノロジーが入ることで、あらゆる学びを身近に感じられる。さらには学んだことがすぐに職につながる場合もある。

例えば、Nanodegreeというプログラムを設けているオンライン学習サービスのUdacityでは、あるプログラムを修了すると職が得られることが保証されている。万が一、職が得られなかった場合には、受講費用が全額返金される仕組みを持つ。学び続けるには、まず自分の好きなもの、やりたいものが何か、自分自身で把握することから始める必要がある。

■SNSを用いた多様な相談窓口が検討される

名古屋大学では発達障害などが理由で、大学の相談窓口を訪れる学生が急増しているとの記事が掲載された。相談件数はこの15年で2・5倍に上る(毎日新聞12月15日)。このような急増に対応するには、従来、紙で記録されてきた相談内容をデータ化(もしくは直接データ化)し、FAQ的な問い合わせについてはbotで一次対応もしくは解決することが効率的だ。

米ジョージア州立大学では、高校卒業から大学入学までの間に入学意欲を失ってしまう「Summer Melt」という現象改善のため、彼らとの連絡ツールとしてチャットbotを使用。学生3114人が利用し、18万5211のメッセージのやり取りが発生。その結果、同現象は21・4%減少し、入学者は3・9%上昇、入学オリエンテーション出席率は3・3%上昇した。

また、それとは趣きが異なるが、LINEを使ったいじめ相談に関する実証研究が長野県で行われた。子供からのいじめなどの相談について、電話・メールを使った相談件数の一日平均は1・8人だったが、LINEを使ったそれは112・7人。10代のコミュニケーションツールの利用時間を見てみれば、固定電話・携帯電話は全くと言ってよいほど使われない一方、SNSは6割弱を占めており(総務省の15年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査)、LINE等のSNSを相談ツールとして利用するというのは、子供たちにとって身近でかつ潜在的な問題意識を拾い上げているといえる。

現在はいじめ相談が主だが、今後、子育てなどの子供全般に関連した相談窓口としても利用されるのではないか。

(リクルート次世代教育研究院院長)
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