(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 非正規教員「雇い止め」は大きな課題

もう一つの「働き方改革」である

改正労働契約法の施行が今年4月から始まる。これを前に3月末で「雇い止め」を通告された私立高校の非正規教員が204人に上っていることが全国私立学校教職員組合の調べて分かった(本紙2月1日付既報)。この問題は一体、教育界にどんな課題を投げ掛けているのか。公立学校関係者は、非正規職員の問題をどう受け止めるべきか。

■公立学校にも対岸の火事ではない

2012年に改正された労働契約法は、同じ企業や団体に5年以上勤務した非正規雇用者は、本人が希望すれば「無期雇用」とすることを求めている。法改正から最初の5年目が到来するのが18年4月で、関係者の間では「2018年問題」と言われている。

今回の件は、私立学校が5年以上継続して雇用していた期限付き採用講師などの非正規教員を無期雇用にするのを嫌って、3月末で「雇い止め」(解雇)にしたものだ。同様の事例は、東京大学などでも発生しており、マスコミでも大きく取り上げられた。

では、この問題は、公立学校にも影響を及ぼすのだろうか。結論から言えば、直接の影響はない。公立学校の非正規教員は「公務員」であるため、労働契約法の適用対象とはならないからだ。それに対して、私立学校は民間であり、公立大学も国立大学法人職員は公務員ではないので、どちらも労働契約法の対象となる。

しかし、私立学校の非正教員問題は、決して対岸の火事ではない。私立学校の非正規教員問題は、早晩、必ず公立学校の非正規教員問題にも飛び火するだろう。折しも、中央教育審議会では、教員の長時間労働の是正が議論されているが、非正規教員問題は、公立学校が抱える、もう一つの「働き方改革」であることを関係者は強く認識する必要がある。

■待遇に大きな格差が

公立学校の教員全体に占める非正規教員の割合は、より実態に近い実数ベースで、2009年度が15.0%、10年度が15.6%、11年度が16.0%と年々増えている。文科省は近年、実数ベースの数値を発表していないため、詳しくは不明だが、もっと増えていることは間違いない。

非正教員が増えた原因は、公立学校教員給与の一部を国が負担する義務教育費国庫負担制度に、地方分権の一環で「総額裁量制」が導入され、都道府県の判断で非正規教員を教職員定数に参入できるようになったことと、都道府県の財政の悪化だ。つまり、正規教員の代わりに非正規教員を充てて、教員の人件費を抑えているのだ。

しかし、非正規教員の待遇は、お世辞にもよいと言えない。通常は1年契約で、引き続き雇用する場合も契約に「空白期間」を設け、形の上では連続雇用とならないようにしているところが多い。このため非正規教員は共済年金に加入できず、国民年金に入っている。

また臨時任用(常勤講師)などの期限付き採用教員は、法的には正規教員と同待遇となるはずだが、実際には給与水準が低く抑えられていることが、マスコミなどで報道されている。

また非正規教員、特に期限付き採用の常勤講師は、正規教員と同様に学級担任や校務分掌を担っている場合が多い。時間給の非常勤講師も授業以外の場面でも学校の教育活動に参画している。もちろん無給だ。

非正規雇用者の無期雇用への転換という労働契約法の趣旨に照らせば、公立学校の非正教員の待遇は、ほぼ「違法状態」に等しい。現在、「働き方改革」の大きな柱となりつつある「同一労働同一賃金」の原則を考えた場合、公立学校関係者は言い訳することはできない。

■非正規教員に対する意識改革を

教員の長時間労働ばかりに目が行きがちだが、現在の公立学校の「働き方改革」では、非正規教員の問題も大きな課題となってくる。だが、それに対する公立学校関係者らの反応は非常に鈍い。

そこには非正規教員を、正規教員になるための「修業」と捉える学校現場の前近代的な意識も影響しているのではないか。

もはや非正規教員なしでは、学校現場は回らないとまでいわれる現在、非正規教員問題は、非正規教員に対する意識改革も含めて、学校におけるもう一つの「働き方改革」であるといえよう。

同時に、教員の資質能力の向上は、常に大きな政策テーマとなっており、国や都道府県などもその重要性を強調している。それに対して、財政事情などを理由とする非正規教員の増加は、教員の資質能力の向上という目標と矛盾するものであることも指摘しておきたい。