(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 部活ガイドライン

妹尾写真教育新聞特任解説委員 妹尾 昌俊(教育研究家、中教審委員)

スポ根への挑戦状

■部活ガイドラインがもうすぐ出る

先月16日、スポーツ庁の検討会議が、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン骨子案について協議した。3月までにガイドラインを取りまとめる予定で動いている。

現時点では骨子案の段階であり、確定的なことは言えないが、筆者も委員として加わっており、検討経過をよく知っているので、いくつか重要と思われることを解説したい。

■生涯スポーツ人口を学校は減らしていないか?

このガイドラインは何のためのものなのか? その理念は前文に書かれる予定である。

骨子案では、「将来においても、全国の生徒が各自のニーズに合ったスポーツ活動を行うことができ、生涯スポーツに親しむ基盤として運動部活動を持続可能なものとするためには、運動部活動の在り方の抜本的な改革に取り組む必要がある」となっている。

ここでは「生涯スポーツ」や「持続可能」がキーワードとなっている。もちろん競技力も向上するに越したことはないが、そこに部活動の主眼があるわけではない、ということの表れと捉えることもできよう。

逆に言えば、現状の過熱化した部活動では、過度な練習でけがをさせて選手生命を危うくさせたり、ハードなスポーツを敬遠して運動をしない生徒を増やしたりしている可能性もある。

この点の反省を、各教育委員会や学校、また部活指導に熱血な教師は、どれほど持てているだろうか。

■最大の特徴は活動の総量規制

報道されたとおり、今回のガイドライン骨子案で一番注目されているのは、活動日と活動時間について、上限を定めようとしていることである。

「週当たり2日以上の休養日を設ける(平日は少なくとも1日、土曜日および日曜日は少なくとも1日以上を休養日とする)」「1日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、学校の休業日(学期中の週末を含む)は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行う」としている。

この活動量の規制については、賛否ある。

国が初めて具体的な数値を出して規制に本気で乗り出したと評価する意見もあるようだ。

一方、さまざまな競技や学校の事情がある中で、一律に規制するのはいかがなものかという意見もある。

実際、ある委員は「個人競技と団体競技の差があって、練習時間でいうと、野球に関しては2時間で収めろというのは多分無理だと思います」と述べた。

また、今回の骨子案では対象は中学校となっており、高校は可能な限り準用せよとなっている。

この点については、私を含めて何人かの委員が「高校も適用としてほしい」と述べたが、どうなるかは分からない。

準用であっても、高校もこの活動規制はかかると思われるが、「高校だから中学にはない事情がある」などと言い訳をして、このガイドラインが無視される事態が起きるのでは、と私は危惧している。

■やればやっただけよい信仰、スポ根への挑戦

ガイドラインの適用範囲や活動規制がどのようなものになったとしても、ガイドラインが守られているかどうかを、いかにモニタリング・チェックするかという問題は残る。

あくまでもガイドラインであるから、強制力はない。教育委員会や私学の学校法人、それから各学校の校長などが、このガイドラインを生かすか殺すかを握っているようにも思える。

そのためにも、共有しておきたいことがある。冒頭で述べたように、生涯スポーツを楽しめる人が増えたほうが、よい社会といえるのではないか。

また、言うまでもなく、部活動への教師の負担は大変重い。こうしたことから、過熱化する部活へ一定の歯止めをかけるべく、みんなで約束をしようというものと、私は捉えている。

私は今回のガイドラインは、長時間練習すればするほどよいという、教育業界に根強い信仰へのアンチテーゼ、疑義だとも考える。

実際、先日の検討会議の終盤に、山口委員は「やればやっただけ効果があるということの脱却が、一つのメッセージ」「スポーツ界全体に対してのメッセージ」だと述べた。

長く続いた根性論、スポ根を見つめ直す機会にもしてほしい。