高校学習指導要領改訂案 学習指導観の転換をどう進めるか

教育新聞論説委員 工藤 文三

小・中学校の学習指導要領の改訂に続いて、高等学校の学習指導要領が改訂され、今後周知期間を経て、2022年度から年次進行で実施に移される。今回の改訂の第一の意義は、まず、高大接続改革と一体的に進められている点にある。接続の改革は、高等学校及び大学における教育改革とともに、選抜方法の改革が必要である。後者は大学入学共通テストの20年度実施に向けた準備が進められている。前者の高等学校教育の改革に直結するのが、今回の改訂と捉えることができる。

次に、小・中学校教育との接続と一貫性の視点である。小・中学校教育については、これまでの学習指導要領の改訂において、基礎的・基本的な知識・技能の活用や言語活動の充実、主体的な学習態度の育成に向けた教育指導の改善が積み重ねられてきた。これらの趣旨は、高等学校でも求められてきたが、必ずしも十分でなかったとの課題がある。

今回の改訂では、目指す資質・能力の柱を教育課程全体に浸透させたり、探究的な学びを徹底したりすることによって、高等学校の特質を踏まえた教育指導の改善を求めている。

最後に、平成に入って以降進められてきた高等学校教育の多様化・特色化の流れと、それに伴う課題の克服を目指し、次のステージの高等学校教育を方向付けていることである。

多様化・特色化に伴う課題とは、高等学校教育の多様性と共通性の関係をどう整理し、教育課程編成に具体化するかという点であった。今回の改訂では、履修の構造に変化はないが、教育課程の在り方を構造的に見直すことによって、先の課題の克服を目指しているといえる。

翻って高等学校の教育課程の仕組みは、教科・科目の構成と単位数、必履習教科・科目の範囲と単位数、卒業までに履習・修得させる単位数等によって成り立っている。今回の改訂の特色は、必履習教科の範囲や各教科における必履習単位数、卒業までに履習・修得させる単位数に変更はない。つまり、履習にかかわる構造に大きな変更はないといえる。

教科・科目の構成については、共通性と多様性の関係及び高等学校段階における主体的・対話的で深い学びなどを踏まえて、科目の構成に大幅な改訂がなされた。国語から情報までの十の教科の中で科目の構成に変更がない教科は、保健体育と芸術のみである。

今後、総則以下各教科・科目等の解説が作成公表されるが、科目構成を改めた理由や、各科目の目標と内容の趣旨を丁寧に示すことが必要と考える。また、現行の科目との関連についても示し、各学校における新課程の研究に役立つようにすることが求められる。

一方、教育課程の構造については、小・中学校と同様、目指す資質・能力の柱が各科目の目標、内容を貫く形で示されている。「見方・考え方」を働かせることも同様である。

今後は、各学校における教育課程の編成、及び各科目等の指導計画の作成に、これらの趣旨を具体化することが求められる。その際、高等学校の各科目には内容的に高度で専門的なものも含まれる。

このような高等学校の科目を踏まえた時、学習過程で働かせる「見方・考え方」とはどのようなものか、また、「主体的・対話的で深い学び」を指導計画にどのように位置付け、意義ある学習として展開できるかが問われる。

また、今回の改訂の趣旨を踏まえて、教科等横断的な資質・能力の育成と、教科・科目の学習指導との関係を整理し、教育課程の全体的な運営の在り方を模索することが必要である。

さらに、これまではともすれば知識・理解が重視されがちであった授業構成を、思考力・判断力・表現力などの育成を確実に進めるものへと改善する必要がある。そのためには、目標-内容-方法-評価を一貫した教育指導の改善の方途を確立していくことが重要と考える。指導方法の抜本的な見直しとともに、評価方法の改善が課題である。

(大阪体育大学教育学部長・教授、国立教育政策研究所名誉所員)