(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 高校学習指導要領の改訂案

どう変わっていくべきか

文科省は2月14日、高校の学習指導要領改訂案を公表した。ただ、アクティブ・ラーニングの導入などを柱に、大きく盛り上がった小・中学校の学習指導要領の改訂後ということもあって、正直、社会の反応はいまひとつのようだ。今後、高校教育はどう変わっていくべきなのか。

■やや盛り上がりに欠ける

高校の新学習指導要領は、実施までに時間がある(2022年度高校入学者から年次進行で実施)せいか、肝心の高校関係者も含めて学習指導要領改訂に向けた雰囲気には、やや盛り上がりに欠けるものがある。

批判を受ける覚悟で言えば、そもそも高校教育関係者は、小・中学校と比較すると、学習指導要領への関心が格段に低い。高校現場では、学習指導要領改訂の関連本は売れないというのは、出版業界の常識だ。

これにはいくつかの理由がある。一つ目は、小・中学校と違い高校が義務教育ではないことだ。学力も家庭環境も大きく違う子供たちが集まる小・中学校と異なり、入試選抜のある高校は、学力などが同一レベルの子供たちが集まる傾向が強いため、学習指導要領の改訂で教育が変わるという意識を待ちづらい。

二つ目は、高校教員には「教科の専門家」という意識が強い者が多く、学習指導要領の改訂よりも、担当教科・科目の変化に関心が向かいがちだ。

三つ目は、高校の個性化・多様化という流れの中で、個々の高校の教育内容などの実態が大きく異なるようになり、高校教育全体として論じることが、実質的に困難になっていることだ。

そして最後は、やはり大学入試の存在だろう。高校の学習指導要領は何度も改訂されてきたが、そのたびに「大学入試がある限り、高校は変わらない」という高校関係者の意識は、大きく変化しなかった。

実際、高校関係者の現在の最大の関心は、学習指導要領の改訂よりも、2020年度から始まる共通テストをはじめとする大学入試改革にあると言ってよいだろう。

■高大接続改革

だが、今回の高校学習指導要領改訂では、そんなことは言っていられない。というのも、新高校学習指導要領の趣旨に沿って高校教育を転換できるかどうかで、今後の高校教育の行方が決まるからだ。

ここで思い出してもらいたいのが、今回の大学入試改革は大学入試を変えることで、隣接する大学教育と高校教育も改革することを目的とした三位一体の「高大接続改革」が本当の狙いだということだ。

高等教育の無償化論議などを踏まえて、いまや全国の大学は改革に向けて大きく舵を切りつつある。小・中学校も新学習指導要領を受けて、思考力・判断力・表現力などの育成を重視するため、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)による授業改革に取り組み始めている。

高校教育の改革が、単なる大学入試改革対応にとどまれば、高校教育の3年間は、小・中学校と大学の狭間に埋もれた「失われた3年間」となってしまいかねない。

実はこれまでも、小・中学校で行われてきた「探究学習」などの取り組みが、知識注入型指導が主流の高校段階で途切れてしまうという批判が一部にあった。今後は、今まで以上に新学習指導要領によって小・中学校で培われた子供たちの資質能力を、高校段階でさらに伸ばしていくことが求められるようになる。

■高校教育の転換

人工知能(AI)が発達・普及したこれからの社会では、従来の教育観に基づく「読み・書き・計算」は、AIに取って代わられるだろう。これらの分野で人間は、絶対にAIに勝てない。

一斉講義を中心にした知識注入型指導に重点を置いた高校教育を続ければ、高校はAIに勝てない人間を社会に送り出す教育機関になってしまう可能性もある。

なぜ知識の習得と同時にその活用力が求められているのか、なぜ思考力・判断力・表現力などが重視されるのか。そのために新高校学習指導要領では、なぜ「総合」や「探究」などの名称がついた科目が新設されるのか、なぜ「総合的な学習の時間」が高校だけ「総合的な探究の時間」に変わるのか。
これらの答えを高校関係者は、大学入試改革への対応の中からではなく、新学習指導要領の中から汲み取らなければならないのではないだろうか。高校教育の転換を図ることが、高校関係者に求められている。

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