(新しい潮流にチャレンジ) 学校の働き方改革の早急な実現を

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

具体的な軽減策による確かな教育へ
○教員の勤務時間は限界

今、国をあげての働き方改革が進行中であるが、教員の場合は多くの調査をみても、その必要性はかねてからの課題であった。そのため2006年に文科省は大規模の調査を実施したが、その後さしたる改革は実施されないできた。

しかし、それから10年過ぎて16年に実施した文科省調査では、小学校教員は1日43分増の11時間15分、中学校は32分増の11時間32分となっていた。しかも、その増加内容は小学校が授業で27分増、学級経営で10分増、中学校が授業、学習指導、成績処理それぞれで15分程度の増加となっていた。教員の勤務時間は限界を超えているのである。

恐らくは、次期教育課程は複雑化・困難度を増すことから、そのため授業や授業準備などに費やす時間がさらに増加することは確かである。教員の本来の職務時間を確保することが喫緊の課題となっていた。

その意味で、中教審が昨年の12月に学校の働き方改革の『中間まとめ』を発表したことは極めて大きな意義がある(詳細は本紙1月1日付)。しかも極めて具体的な仕事内容を示していて、教員が職務上何を必要とし、何を軽減すべきかがよくわかるようになっている。

中教審の業務の分担整理は、「学校以外が担うべき業務(登下校の見守り、給食費の徴収など)」「学校の業務だが、必ずしも教員が担う必要のない業務(休み時間・校内清掃、部活指導など)」「教員の業務だが、負担軽減が可能な業務(授業準備、成績処理、学校行事等の準備・運営、特別支援に関わる家庭との対応など)」とされている。このことで、これまで「何をどこまでやればよいか」と、とかく無制限に考えられていた教員の職務内容について、かなり歯止めがかかることになるのではないか。

○教員の業務の実態における課題

そこで、実際に『中間まとめ』で示されている教員の業務がどのような実態かを、昨年の12月にA県のほぼ市町村の異なる小・中学校の校長等10人に聞いてみた。「行っている」という結果は図に示すようなものであった。●はほぼ全員、▲は6~8人、○は0~1人である。ただし、○は3項目あるが、13はランチルームの有無で、給食指導は学級担任が行っている。14と16は、スクールサポートスタッフがいないわけであるから、教員が行っていることになる。(表参照)

こうしてみると、中教審が指摘しているように、現状ではこれらの業務のほとんどを教員が実施していることになる。

だが、これらの業務の削減や軽減を学校が行った場合、教員が手を引くのであるから、代わりに実施する人材が必要である。それが充当されれば事はスムーズに実施される。教員もそこに大きな期待を持つであろう。だが、それは容易に実現できるであろうか。

『中間まとめ』は、例えば「学校以外が担うべき業務」は、自治体、教委、保護者、地域などを考えているが、「登下校の対応」「放課後や夜間の見回り」「学校徴収金の徴収・管理」「地域ボランティアとの連絡調整」それぞれにおいて異なった人材が必要である。そうした人材をどう充当するか、地域対応を含めて連携システムの早急な確立が必要である。

「学校の業務だが、必ずしも教員が担う必要のない業務」の場合も、他の人材との関わりが大きい。例えば、休み時間の対応は事務職員や地域住民との輪番制、校内清掃も地域ボランティアなどとの輪番制、をあげているが、スケジュール管理は難しそうである。ただ、学校環境の日常点検は専門家委託が望ましい。部活動については、部活動指導員や外部人材を積極的に活用したいとしているが、地域によってはかなり人集めに苦労するのではないか。

また、教員が最も望んでいるのは、理科観察実験補助員を含むスクールサポートスタッフであろう。教員の職務内容でサポートスタッフに依頼したい補助的業務は、先の図の項目に示したように多様である。「よろず屋」的である。スタッフが何人そろえば充足できるか、スタッフがよろず屋的な業務を次々と引き受けるのか、実際に行ってみないとわからないことが多いのではないか。

○学校・教師が変わる働き方改革を

学校の働き方改革は、中教審の「中間まとめ」によって実現の希望が見えてきた。その実現には地域や個々の学校の状況によって、その進展に差異が生まれるであろうが、画期的な改革だと言える。ぜひ実現したい。

一方、現状の改革のみでなく、教員の目指す教育環境の新たな整備が重要である。そのことでは「効果的で過度な負担がかからない授業準備」として次のことが示されている。

▽ICT機器やOA機器の導入▽ICTを活用した教材や指導案の共有化▽都道府県教委による教材や指導案の共有化▽小学校外国語の教材は、文科省がデジタル教材や指導書、ワークシートなどの資料を含め開発を行い、希望する全ての小学校に配布――などの取り組みを促進・支援するとしている。

国や教委の支援が必要であって、これらの他、学校への人材派遣については教委が積極的に学校を支援すべきである。

ただ、結果として教員の負担が軽減されて、帰宅時間が早くなっただけ、というのでは本質的な働き方改革と言えないであろう。勤務時間が縮減される事が大きな目的で、教員個々がワーク・ライフ・バランスを確保することへの期待ではあるが、縮減された勤務時間内で教員個々が、例えば自己研修の時間を確保できることが望まれる。

これまでは、勤務時間が過重なせいで、「自分の時間が持てない」だけでなく、家庭生活を軽視する傾向さえみられた。ワーク・ライフ・バランスが保障されることで、教師自身が自己の研さんに努め、教師力を高めると共に、組織の一員として学校力を高める協働意識を醸成してほしい。それは、個々の教師力向上と共に、学校が「学習する教員組織」として、学校力をより高める協働の体制を構築することへの期待である。

その協働の体制は、実のところ校内のコミュニケーションに負うことが大きいのである。学校組織を考えると、企業に比べて極めて小規模である。小集団組織と言える。小集団の「強み」は、容易にフェース・トゥー・フェースの関係が作れて、相互啓発や相互援助が可能になることである。

その「強み」を発揮する最も重要なことは教職員相互のコミュニケーションである。これまでは誰もが多忙で、教員打ち合わせも、職員会議も、研究協議会も、さらに学年会すら十分な時間を持てなかった。学校の働き方改革が進めば、教員に余裕ができ、コミュニケーションの時間や場を持つことが可能になる。コミュニケーションは、互いの考えや気持ちの理解を促進するだけでなく、組織としての一体感が高められるのである。

そこで移行期は特に新教育課程の基盤づくりとして、新学習指導要領が目指す教育の在り方を踏まえた自校の教育ビジョンや重点目標について協議・研修を行いたい。目指すのは「おらが学校の教育課程」の構想・実践である。

また、新たな学力の3つの柱や「主体的・対話的で深い学び」としての授業展開、さらに単元の構想としてのカリキュラム・マネジメントなどについての教師力を徐々に高め合う校内の雰囲気を作りたい。新教育課程の確かな実施には「学習する教員組織」が必須の課題である。

さらに最近特に言われていることは、認知能力(学力やIQなどの評価可能な対象)などの指導に偏り過ぎている傾向に対して、非認知能力(やり抜く力、肉体的・精神的な傾向、社会的・情動的な性質)などの育成にもっと力を注ぐべきであるという考えである。

子供が将来、「生き抜く力」を身につけるために教育はどうあればよいか、それが教育の基本の課題であるという認識が必要な時代なのである。学校の働き方改革は、そのような新たな教育の次元を開く力になると考える。


 

参考資料
参考資料:働き方改革の具体的な内容